KubeCon 2023から読み解く、KubernetesとAIの「現在と未来」:Kubernetesに関するAIの話題や可観測性、持続可能性など
TechTagetは、Linux Foundationのフラグシップカンファレンス「KubeCon + CloudNativeCon North America 2023」に関する記事を公開した。Kubernetesに関するAIの話題や可観測性、持続可能性について議論が交わされた。
TechTagetは2023年11月22日(米国時間)、同年11月6〜9日に米国のシカゴで開催された「KubeCon + CloudNativeCon North America 2023」に関する記事を公開した。執筆したのはTechTarget傘下の調査会社Enterprise Strategy Groupでシニアアナリストを務めるジョン・ブラウン氏。IT運用とITの持続可能性を研究している。
カンファレンスでは、Cloud Native Computing Foundation(CNCF)のプロジェクトの中でも多くの企業が採用している「Kubernetes」上のAI(人工知能)の現在と未来について、多くのプロジェクトの発表と、意見が交わされた。主なトピックはAIに関することだったが、それ以外にはクラウドネイティブの可観測性(オブザーバビリティ)と持続可能性(サステナビリティー)の高度化についても活発な議論が展開された。
オブザーバビリティ
話題となったのは「OpenTelemetry」だ。これはテレメトリーデータを標準化するために、テレメトリーデータを計測、生成、収集、エクスポートするために使用されるツール群のこと。TechTargetのEnterprise Strategy Groupの調査によると、ほとんどの組織がテレメトリーデータの作成と収集に複数のツールを使用している。データが標準化されることで、相互運用性が向上し、新しいソリューションの導入が容易になるからだ。
OpenTelemetryの主要な貢献者であるSplunkのモーガン・マクリーン氏は「OpenTelemetryプロジェクトはまだCNCFで卒業段階に達していないが、広く採用されている」と述べている。
Splunkに加えてNew Relic、Dynatrace、Datadog、Grafana、Honeycomb、Chronosphere、Mezmo、Criblなどのベンダーも「OpenTelemetryを自社製品にどのように組み込んでいるか」について熱心に議論していた。これは、たとえ競合他社であっても、業界全体の課題を解決するために協力することで優れたものを提供できる、ということを示している。
サステナビリティー
カンファレンスではクラウドネイティブアプリケーション向けの拡張バークレーパケットフィルター(eBPF)に基づいたオブザーバビリティに関する展示があった。この技術はトラフィックとリソースの使用率を非常に細かいレベルで検査できる。「Kepler」(KubernetesベースのEfficient Power Level Explorer)のようなeBPFベースのユーティリティーが収集したCPU使用率に関するデータを基に、プロセスで消費される電力量を推定可能だ。
「Talos Linux」のメンテナーであるSidero Labsは、組織がKubernetesの気候コストをどのように削減するかについて講演した。これは、watttime.org(クリーンエネルギーを推奨する非営利団体)の電力データを分析し、エネルギー使用量、炭素への影響、その他の要因に基づいてワークロードを実行するタイミングと場所を決める「排出量認識スケジューラ」を使うアプローチとなる。カンファレンスのデモではツールのプロトタイプしか含まれていなかったが、今後、炭素やエネルギーの使用量の重要性は高まる見込みだ。
サステナビリティーに関する他の例としてはGreenpixieの取り組みがある。同社はクラウドを使った際の排出量データを可視化するソフトウェアを提供している。こうしたエネルギーを考慮したコンピューティングへのアプローチはコードが環境に与える影響をエンジニアリングチームやITチームに知らせようとする例だ。また、GroundcoverはeBPFを使って可観測性とコスト管理を組み合わせた方法を提案している。
その他のトピック
CNCFは、エンドユーザー組織が独自のデータを計測して収集してリソースの使用状況を測定することで、運用とオブザーバビリティの観点からサステナビリティーに取り組んでいる。一方、Linux Foundationの姉妹組織であるFinOps.orgは、エンドユーザー組織がクラウドサービスプロバイダーの使用状況とコストデータを取り込み、組織内のコストとリソースの効率を向上させようとしている。FinOps.orgは別の角度から、サステナビリティーと二酸化炭素排出量(カーボンフットプリント)の問題にも取り組んでいるといえる。
今後のAIの成長と、それに伴うコンピュート使用量と強度の増加を考えると、サステナビリティーの最適化を自動化の計画に組み込むことは非常に理にかなっている。
この取り組みで思い浮かぶのは、Technical Advisory Group SustainabilityとGreen Software Foundationという22つの組織だ。前者はクラウドネイティブテクノロジーにおける環境のサステナビリティーイニシアチブを提唱、開発、サポート、評価を支援することを目標としている。後者はソフトウェアが排出する二酸化炭素排出量を削減することで、ソフトウェアが気候に及ぼす悪影響を減らすことに重点を置いている。
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