激変する世界でのI&Oリーダーシップとは:Gartner Insights Pickup(340)
Gartnerのエキスパートが、インフラとオペレーション(I&O)のリーダーシップ戦略と、ビジネスの成功に向けて人材を成長させ、プロセスを変革する方法を論じた。
2023年12月に米国ラスベガスで開催されたGartner IT Infrastructure, Operations & Cloud Strategies Conference 2023(日本での開催時の名称は「ガートナー ITインフラストラクチャ、オペレーション&クラウド戦略コンファレンス」)では、企業が今求めている俊敏性とコスト最適化の実現に必要なツール、技術、手法に関する考察が紹介された。
Gartnerのエキスパートが提供したインサイト
I&Oに現在必要なスキル、将来必要になるスキル
I&Oにおけるスキル需要が高い技術および運用分野はたくさんあり、その中にはAI(人工知能)、自動化、エッジインフラが含まれる。だが、現在の労働市場では、重要な技術スキルを持った人材が不足しているほか、離職率が高い。そのため、企業がこうしたさまざまなスキル需要を満たすのは難しくなっている。Gartnerのアナリストでバイスプレジデントのマーク・マーゲビシウス(Mark Margevicius)氏は、この課題に対処する行動計画を策定する際に考慮すべき点を詳しく解説した。
「今この時点で、従業員の3分の1以上が転職先を探している。一刻の猶予もない。われわれは人材に投資する必要がある」
成功するためのスキルをチームメンバーに身に付けさせるには、以下を行う。
- 自主性をサポートする
成長し、学ぶ一貫した機会を設けることで、チームメンバーが自分のキャリアに個人として責任を持つことを強調する - I&O戦略において必要なスキルに優先順位を付ける
利用可能なスキルと必要なスキルのギャップを特定する - 多才なチームを作る
組織でより高い価値を発揮し、キャリアアップの機会を増やせるように、チームメンバーに対し、より多くの分野にわたってソフトとハードのスキルセットを磨くよう促す - 継続的に適応する
スキル開発は、決められたことを決められた方法で行うことではなく、長期的なキャリアの成功には適応力が必要であることを認識する
2025年に向けたネットワークの進化
以前のネットワークはコンピュートとは全くの別物であり、いかにもシンプルだった。今では仮想ルーターや仮想スイッチ、サービスメッシュなどが両者の境界を曖昧にしている。Gartnerのディレクターアナリストのカレン・ブラウン(Karen Brown)氏は、ネットワーキングの進化における2つの重要分野であるDevOpsとAIおよび組織の自動化を進めるために取るべき行動について掘り下げて解説した。
「2026年までに企業の30%が、ネットワーク業務の半分以上を自動化する見通しだ。2023年初めには、こうした企業の割合は10%に満たなかった」
自社のネットワークオペレーションを進化させるには、以下を行う。
- 自動化に多額の投資をする
プラットフォーム、ツール、またはその組み合わせを検討し、その結果を共有することで、スキルや文化の変革に関する議論を促進する - AIネットワーキングをテストする
概念実証(PoC)で機能テストを小さく始め、反復した上で、本番稼働に移行する - 生成AIを支えるインフラを計画する
オンプレミスの生成AIワークロード専用のAIファブリックを優先する
企業のDEI(ダイバーシティ:多様性、エクイティ:公平性、インクルージョン:包摂性)への取り組みでマネジャーが果たす役割
マネジャーはDEI戦略の成否を左右するが、この重要な役割に優れた担い手はほとんどいない。Gartnerのアドバイザリでバイスプレジデントのリサ・ピアース(Lisa Pierce)氏は、組織のDEI戦略を実際の成果につなげるために、優れたマネジャーがどのように工夫しているかを紹介した。
「採用マネジャーとのやりとりで偏見を感じた応募者の2人に1人は、応募プロセスを中止する」
マネジャーとして意識を高く持ち、DEIの成果を推進するには、以下を行う。
- 責任を持って組織的な偏見に対処する
人材採用プロセスにおける既存の偏見を特定し、従業員リソースグループに参加する - 差別されている人材を擁護する
同僚と異なる扱いを受けることによる精神的なダメージや、常に気を張り詰めていることが従業員の幸福や生産性に与える影響について、管理職を教育する - 日々の行動に包摂性を取り入れる
透明性のある一貫した方法で意思決定をするとともに、チームが仕事をサポートするリソースを見つけ、利用できるように手助けする
I&Oの自動化を成功させるためにリーダーが取るべき行動
自動化を成功させることはI&Oリーダーにとって、サービス品質への期待に応え、オペレーションのペースを維持するために不可欠だ。Gartnerのアナリストでシニアディレクターのクリス・ソンダーソン(Chris Saunderson)氏は、リーダーが自動化計画を戦略的に策定することで、どのようにこれらの課題に対処し、コストを改善できるかを説明した。
「2027年までに、全社的な自動化の実現に注力するI&Oリーダーは、サービス品質とコスト改善の取り組みがもたらす価値を、倍増させる」
自動化ファーストのアプローチを導入するには、以下の原則を組織で徹底する。
- 自動化をプロダクトとして扱う
反復的開発と迅速なイノベーションを実践し、顧客とテスト、リリース、検証を行う(顧客がI&Oチーム内の部署である場合も含めて) - 段階的戦略を策定する
分野横断的なI&O自動化を試験的に導入し、得られる価値(節約できる費用など)を周知し、継続して成果を挙げる - 顧客ニーズの変化を捉え、それに適応する
これにより、顧客に価値を提供し、リソースを賢く使用できる - 価値にフォーカスする
自動化の価値と受益者を特定し、自動化がその価値を実際に生み出していることを確認する - 変化への適応と調整をする
ビジネス、技術、人の相互作用の変化に対応する
オープニング基調講演:革新的なテクノロジーと人材の強化がもたらすイノベーティブな未来
生成AIとプラットフォームエンジニアリングの実践が意思決定の迅速化と、適応性の高いインフラの実現を可能にする。こうした中、Gartnerのアナリストでディスティングイッシュト バイスプレジデントのトーマス・ビットマン(Thomas Bittman)氏とデニス・スミス(Dennis Smith)氏、シニア プリンシパル アナリストのオータム・スタニシュ(Autumn Stanish)氏は、I&Oの未来を変革するために必要な能力をチームに持たせる方法を紹介した。
ジェネレーティブトランスフォーメーション(生成AIなどの革新的な技術を活用し、イノベーションを起こしていくイニシアティブ)を導入するには、以下を行う。
- 生成AIを利用する
スキル開発を前面に押し出し、生成AIを利用してスタッフの生産性を高め、仕事のやり方を変える計画を立てる - インフラストラクチャプラットフォームエンジニアリングの原則を適用する
ユーザーを顧客として扱い、ソフトウェアエンジニアリングの手法を利用し、自動化とオーケストレーションのスキルに投資する - ジェネレーティブマインドセット(これまでの制約から解き放たれた創造性を生み出す思考)を育てる
有能な人材を採用し、創造的なスキルの成長を促進し、実験の文化を構築する
「ジェネレーティブトランスフォーメーションとは、『継続的に変革すること』『継続的にパフォーマンス、効率、サービス提供を改善すること』『新しいビジネス目標を達成するために、継続的に新しい技術に適応すること』を、全てビジネスのスピードに合わせて実現していくことだ」
(Gartnerのアナリストでディスティングイッシュト バイスプレジデントのトーマス・ビットマン〔Thomas Bittman〕氏)
2024年に向けたI&Oのリーダーシップの提言
自社の成長を実現するには、社内外の重要課題に直面していても、全社にわたって事業を拡大していかなければならない。Gartnerのアナリストでディスティングイッシュト バイスプレジデントのネイサン・ヒル(Nathan Hill)氏は、I&Oに影響を与える主要な問題とトレンドを取り上げ、2024年以降の成功に向けてリーダーが実行すべきアクションについて概説した。
「目標は需要と供給のバランスではない。最も利益になるミッションクリティカルな需要を、利用可能なリソースで満たすことだ」
課題に対応し、リソースに優先順位を付け、ビジネスの最優先事項と整合させるには以下を行う。
- レジリエンスを活用して技術的負債を管理する
信頼性、許容性、回復性を高め、新規サービスの負債を最小化し、既存サービスの負債を排除する - 最高の人材を引きつけ、定着させる
引きつける要因と離職の要因の重複に対処するとともに、クリティカルシンキングに重点を置いて従業員のスキルアップを促進する - I&Oにおける生成AIの最も効果的なユースケースを追求する
コンテンツ生成、ナレッジの抽出、会話型AIに焦点を当て、より良いビジネスサポートとI&Oスタッフの能力のさらなる向上を目指す
出典:Highlights From Gartner IT Infrastructure, Operations & Cloud Strategies Conference(Insights)
筆者 Alexis Wierenga
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