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スプレッドシートの利用も増加、AIはアナリティクスユーザーにどのような影響を与えるかGartner Insights Pickup(357)

アナリティクスとAIは相互に関連し、さまざまな分野に影響を与えている。これらがもたらす機会を活用しリスクを最小限に抑えるために、D&Aのリーダーはアナリティクスやデータサイエンスのエコシステム、ユーザーの行動などに対するAIの影響を考慮する必要がある。

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ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Insights」などのグローバルコンテンツから、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 アナリティクスとAI(人工知能)は常に相互に関連し、さまざまな分野に影響を与えている。これらがもたらす新たな機会を活用し、潜在的なリスクを最小限に抑えるために、データとアナリティクス(以下、D&A)のリーダーは、アナリティクス、データサイエンスのエコシステム、ユーザーの行動、役割、意思決定に対するAIの影響を考慮する必要がある。

 スプレッドシート(表計算ソフトウェア)はシンプルであり、広く普及していることから、データ分析の主要ツールであり続けている。このところ人気が急上昇しているWebやアプリベースのスタンドアロン生成AIチャットbotでは、ユーザーは基本的なタスクのために、スプレッドシートデータを簡単かつ直感的に分析できる。

 この生成AIチャットbotは、従来のデータ入力と高度な分析の間の空白を埋める。専門的なアナリティクス/ビジネスインテリジェンス(ABI)ソフトウェアやデータサイエンス/機械学習(DSML)ソフトウェア、トレーニングは不要であり、ライセンスの購入も難しくない。

 ユーザーは、従来のアナリティクスソフトウェアの制約を受けることなく、ビジネスプロセスの中でデータを分析できるようになった。だが、生成AIチャットbotに過度に依存するようになっている。その機能の拙速な導入により、ABIプラットフォームやアナリティクスサンドボックスの外で、あるいはセキュリティポリシーとは無関係にD&A作業が行われるケースが増えている。その結果、意図的かどうかにかかわらず、適切なガバナンスも回避されるに至っている。

 Gartnerは、2025年までにABIプラットフォームユーザーの40%が、スプレッドシートから作成された分析コンテンツを生成AIチャットbotに読み込ませて共有することで、ガバナンスプロセスを回避するようになると予測している。

 スプレッドシートは「アナリティクスツールのゴキブリ」と呼ばれることも多いが、市場で創造的破壊が起こってきたにもかかわらず、長年生き残っている。適切な条件が整えば、さらに普及が拡大する。生成AIチャットbotでスプレッドシートを直接分析できるようになったことで、スプレッドシートの利用は増える見通しだ。これに伴い、データサイロが急増すると予想されるため、それらを管理、統制するために、データアナリストとIT部門はより緊密に協力する必要がある。

 Gartnerは、2026年までに独立系ソフトウェアベンダー(ISV)の70%以上は、自社のエンタープライズアプリケーションに生成AI機能を組み込むようになると予測している。この割合は、現在の1%未満から大幅に増加することになる。

 ABIプラットフォームが不要で、AIに対応した自然言語クエリ(NLQ)が使える利便性により、D&Aリーダーが投資してきた従来のベンダーの製品は取って代わられるリスクがある。アナリティクスユーザーがNLQを用いて作業すれば、複雑でよく管理されたアナリティクスソフトウェアへの依存は減ると予想される。

D&AとBIのガバナンスを統括するリーダーへの推奨事項

 AIがアナリティクスで新たな役割を果たすようになったことから、D&Aリーダーは、ABIプラットフォームを超えたD&Aエコシステムについて考えなければならなくなっている。以下の推奨事項を踏まえ、進化する状況に適応していく必要がある。

  • AIに関するトレーニングとスキルアップを推進する: ビジネスアナリストと拡張アナリティクスユーザー向けに、生成AIのメリットを十分に活用するためのトレーニングモジュールを開発する必要がある。これにより、両者が生成AIベースのデータ分析ツールを安全かつ効果的に使用できるようになる。
  • AIベースのアナリティクスの戦略的計画を採用する: アナリティクスとBIのリーダーは、ABIプラットフォームの外部で行うNLQチャットbotの利用を、戦略および業務モデルに技術的な活性化手法として取り入れる必要がある。これは将来のデータアナリティクスワークフローの重要な要素となる
  • 統合の取り組みによってコンポーザビリティを促進する: ABIプラットフォームは、ユーザーが自然なワークフローに組み込まれたアナリティクスを好むようになっている市場で存在感を保つために、生成AIの基盤となる大規模言語モデル(LLM)との統合を追求しなければならない。ベンダーは、自社プラットフォームにLLMがどのように統合されているかを説明し、データ検索とプロンプトエンジニアリングをサポートする必要がある。一方、購入者は、サードパーティーアプリケーション(ChatGPTなど)のプラグインとして何が利用できるかを評価すべきだ
  • アナリティクスのコラボレーションを通じて集団的知性(コレクティブインテリジェンス)を促進する: 生成AIチャットbotから生成されるアナリティクスの洞察の共有を奨励し、コラボレーションと学習共有の文化を育成する取り組みをしなければならない。トレーニングによって適応型ガバナンスメカニズムを確立し、AIチャットbotのハルシネーション(もっともらしいが誤った回答を返すこと)の回避と解釈可能性の向上を図る必要がある

出典:How Artificial Intelligence Will Impact Analytics Users?(Gartner)

※この記事は、2024年3月に執筆されたものです。

筆者 Mike Fang

Sr. Director Analyst


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