VMwareから「Nutanix環境」に移行したら運用はどう変わる? よくある疑問にプロが答える:運用担当者のリアルな疑問を解消
VMwareからの移行先として多くの企業が検討しているのが「Nutanix環境」だ。しかし現場の運用管理者は、Nutanix環境への移行方法、VMware環境を再現できるか、障害対応の手順など不安や疑問は尽きない。こうした現場担当者からよく寄せられる疑問と回答について、Nutanixテクノロジーの先駆者たちに聞いた。
BroadcomによるVMware買収後の販売施策の変更で、VMwareユーザー企業の間に動揺が広がっている。永続ライセンス+サポートサブスクリプションからコア課金のサブスクリプションライセンスに変わり、ほとんどの企業にとって値上げになる。BroadcomのVMwareに関するビジネスの姿勢やサポートの継続性への不信感も高まっていることから、VMwareから他のプラットフォームへの移行の動きは確実に広がっている。
その移行先としてNutanix社が提供する「Nutanix Cloud Platform」とそこにビルトインされたハイパーバイザーである「Nutanix AHV Virtualization」(以下、AHV)がよく検討されるようになった。Nutanixの国内ディストリビューターであるSB C&Sが開催するトレーニングやハンズオンセミナーは、連日満員の状況が続いているという。
しかし長年VMwareを運用してきた人々にとっては、Nutanix AHVに移行する方法はどのようなものか、VMware環境を再現できるのか、障害対応手順はどうなるのかなど、頭を悩ませる点は多い。
本記事では、ハイパーバイザーの移行検討について現在多くの相談を受けているSB C&Sと日本ヒューレット・パッカード(以下、HPE)のエキスパートが、特にVMware運用担当者から寄せられる疑問に注目する形で、Nutanix Cloud Platformへの移行のメリット、デメリット、注意点を解説する。
Nutanix Cloud Platformへの移行検討で、運用管理者からは質問が殺到
ディストリビューターとしてNutanix社製品のテクノロジーに長年携わり、前述のセミナーでも講師を務めるSB C&Sの友松桂吾氏(ICT事業本部 技術本部 技術統括部 第1技術部 3課)は運用担当者の疑問についてこう話す。
「冗長性・可用性の観点から、安心して運用できるのか、障害発生時にすぐに復旧できるのかなどアーキテクチャの作り込みの部分を気にされる方が多いです。『VMware vSphere』で日々運用している方たちがセミナーに参加されているので、カタログベースで書いてある表面的なことよりも、障害時の挙動など実践的な質問が多く寄せられます。具体的にはストレージ部分のデータの複製方法や、物理ホスト(ノード)が壊れたときの仮想マシン復旧の仕組みやリソースの考え方、ネットワーク構成についてよく質問を受けます」(友松氏)
Nutanixエキスパートが、ユーザー企業やパートナー企業の運用担当者が抱く疑問に答える
こうしたユーザー企業やパートナー企業から寄せられる質問に対して、SB C&Sはどのような回答をしているのか。
冗長性・可用性については、アーキテクチャとしてどのような耐障害性を備えているかがポイントになる。
「Nutanix Cloud Platformでは、最小3ノードでクラスタを構成し、仮想マシンのデータはノードをまたいで必ず二重化されるため、ノードレベルでも耐障害性があります。この辺りは『VMware vSAN』と同様の信頼性を備えています。また、Nutanixのソフトウェアはハードウェアが壊れることを前提としてクラスタの回復力を設計しているため、あるノードがダウンしてから60秒後には失われたデータのリビルドを自動的に開始し、障害からすぐに冗長性を回復する仕組みです。『vSphere HA』と同様に、AHV上の仮想マシンはクラスタ内の別ホスト上で自動的に再起動します」(友松氏)
VMwareで使い慣れたツールや機能が使えるのか不安を抱く担当者も多い。例えば、ライブマイグレーションの「vMotion」や、リソース平準化の「vSphere DRS」、災害対策(DR)ソリューションの「VMware Live Site Recovery」などだ。
「これらはNutanixソフトウェアやAHVが提供する機能で代替できます。vMotionはもちろん、DRSやDRソリューションの機能も提供しています。管理ツール『Nutanix Prism』からの操作で、スナップショットを活用したサイト間レプリケーションやバックアップ、DR機能が利用可能です。複数クラスタを管理する『Prism Central』では、例えば仮想マシンの起動順序を設定して自動フェイルオーバーするといったこともできます」(友松氏)
ファームウェアやホストOSのバージョンアップを心配する声も多いが、Nutanixの「LCM(Life Cycle Manager)」で対応できると説明する。
「スケールアウトストレージを実現する『Nutanix AOS Storage』、ハイパーバイザーの『AHV』、ハードウェアのファームウェアなど、各コンポーネントを自動でアップグレード可能です。ローリングアップデートも可能で、システムを止めることなく最新の状態を維持できます」(友松氏)
冗長性、機能性、管理性、運用性に対する不安は解消できる?
Nutanix環境に移行して運用が始まると、クラスタの拡張や管理も気になるところだ。
「クラスタに新たなハードウェアを追加したら、Prismからのシンプルな操作でクラスタを拡張できます。Nutanix Cloud Platformはパブリッククラウドのような柔軟性を設計思想として持つため、リソースの拡張性は大きな強みです。例えばVDI(仮想デスクトップ)のユーザー数が増加した場合や、新サービスの開発環境が必要な時にも、あとから簡単にリソースを追加できます。また、この拡張性はリプレース時にも役立ちます。ハードウェア世代間の互換性を維持して、ローリングでノードの入れ替えができるため、リプレース時に新たなサイロを作って引っ越しをする必要がなくなります」(友松氏)
管理ツールの違いや、3Tier構成からHCI構成に変わることで、従来と異なる運用スタイルになることに不安を抱く担当者も多い。それについては「初めて触った人でも、慣れればすぐに使いこなすケースが多い」という。
「管理ツールのNutanix Prismは、Nutanix Cloud Platformのシンプルな管理性を意識してデザインされており、必要以上の設定項目を排除した分かりやすい作りになっています。VMware製品に相当するエンタープライズ機能を搭載しつつも、それらをシンプルな操作で実行できます」(友松氏)
Nutanix Cloud Platformは、VMwareで利用されていたような細かな設定や多岐にわたる管理製品群を簡素化したシンプルなUI(ユーザーインターフェース)になっている。だからこそ、採用の価値があるという。
HPEの日野創氏(デジタルセールス・コンピュート事業統括本部 コンピュート製品本部 アライアンス&ソリューション開発部 部長)はこう話す。
「Nutanix Cloud Platformは、モダンなインタフェースで直感的に使える点がメリットです。エンタープライズ用途で日々使う機能はそれほど多いわけではありません。例えばVMwareの『vSphere FT』という機能を使っている組織は少ないと思います。多くの機能を必要とし、使い慣れたUIで引き続き運用したいという場合はVMwareを使い続ければよいですし、新しい基盤で新しい取り組みを効率良く進めていきたいという方はNutanix Cloud Platformを使うのがよいと考えます」(日野氏)
それでも「VMwareのように使いたい」という運用担当者に対しては、こうアドバイスする。
「弊社のトレーニングやハンズオンに参加して、実際にNutanix環境を触ってみることをお勧めします。これまでも多くの方から『これなら今まで通り使える』『シンプルに操作できて便利』という声をいただいています。3TierからHCIに変わることも、データの冗長性や可用性確保の仕組みを理解いただくことで、納得していただくことが多いです」(友松氏)
Nutanix Cloud Platformはシンプルに使える上に、環境のモニタリングや可視化ツール、障害時のアラート機能などエンタープライズ用途で求められる必須機能が標準で提供されていることが強みとなっている。
HPEの信頼性機能、セキュリティ機能、豊富なラインアップ、HPE GreenLakeに注目
Nutanixソフトウェア専用サーバモデル「HPE ProLiant DXシリーズ」を提供するHPEでも、Nutanix関連ビジネスが急拡大している。HPEの日野氏はこう話す。
「Nutanix Cloud Platform基盤としてのHPE ProLiantについて、HPEのパートナーに問い合わせが多数寄せられています。ビジネスが急速に成長しているのは、HPE ProLiantが培ってきた信頼と実績があらためて評価されたからだと考えています」(日野氏)
HPE ProLiantサーバは2024年に31周年を迎える。その信頼と実績に加え、NutanixソフトウェアとHPE ProLiantを組み合わせる「ならでは」の機能を評価する声も多いという。
NutanixソフトウェアをHPE ProLiantサーバと組み合わせる機能面でのメリットの一つは信頼性(RAS)機能だ。
「x86サーバとしてはハードウェアの差別化要因は少なくなっています。その中でも評価が高いのが信頼性機能です。ファンなどの部品が冗長化されており、一方が壊れても安定稼働を続けます。特にDRAMチップが2つ故障してもエラー訂正可能でパフォーマンスを維持するメモリの信頼性機能は大きな特徴です。メモリの信頼性機能は、もともと以前HPが開発していたCPUのPA-RISCに実装されたもので、現在の『Intel Xeonプロセッサー』にも受け継がれています。HPE ProLiantでは、このメモリ信頼性機能と連携するファームウェアを実装しており、より安心してHPE ProLiantサーバを使えます」(日野氏)
Nutanixソフトウェアはノード障害があった際の安定稼働をソフトウェアで確保している。HPE ProLiantサーバを組み合わせることで物理的なハードウェア障害にも対応し、二段構えでより安定した稼働を実現できる。
強固なセキュリティ機能も、HPE ProLiantを選ぶメリットだ。
「HPE ProLiantの代名詞とも言えるセキュリティ機能は、最新世代のGen11でさらに強化されています。Silicon Root of Trustと呼ばれる、HPEサーバのハードウェアレベルに直接セキュリティを統合するファームウェアテクノロジーを搭載しています。外部からのファームウェアへの攻撃を『HPE iLO(Integrated Lights-Out)』で自動的に検知、リカバリーする機能ですが、Gen11からはサーバ本体だけでなく、オプション製品のRAIDコントローラーやNICのファームウェア改ざんを検知することも可能となりました。また、HPEの工場から出荷されたサーバが納品されるまでに、改ざんされていないか電子的に記録するプラットフォーム証明書や、使い終わったサーバのデータをボタン1つで消去する機能など、サーバ利用のライフサイクル全体を考えて設計されたセキュリティ機能を実装しています」(日野氏)
ラインアップの豊富さも特筆すべきポイントだ。
「一般的なITインフラ環境では、VDI、仮想化基盤、クラウド連携などさまざまなニーズやユースケースがあります。Nutanix Cloud Platformにはファイルサーバ機能も備わっているため、データ統合基盤として使うこともあります。HPE ProLiant DXでは1CPUサーバやAMD EPYCプロセッサ搭載サーバ、大容量ストレージ搭載モデルなど、豊富なモデルで幅広い用途に効率良く対応できます。初期導入後もNutanixソフトウェアの拡張性を生かして適切なサーバモデルを追加可能です」(日野氏)
サービスモデルについても、「HPE GreenLake」を活用することで、クラウド環境と同じようにサブスクリプションモデルで、効率的で柔軟なスモールスタート、スケールアウトが可能だ。管理面でも、Prismからのファームウェアアップデートや自動通報サービスによるサポート窓口一元化など、NutanixとHPEの組み合わせによるメリットを享受できる。
VMware環境からNutanix環境への移行は、今後さらに加速する見込みだ。NutanixテクノロジーのエキスパートであるHPEとSB C&Sの提供するソリューションは、Nutanix環境への移行に取り組む多くのユーザー企業、パートナー企業にとって大きな力になるはずだ。
また、SB C&Sはトレーニングやハンズオンを引き続き、随時開催している。VMwareの移行先としてNutanix Cloud Platformに少しでも興味がある方は参加してみてはいかがだろうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
提供:SB C&S株式会社、日本ヒューレット・パッカード合同会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2024年12月5日