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国内経営層、AIに「懸念よりも期待」が7割、急増する非人間アイデンティティー管理が課題OktaがAIに関する調査結果を発表

職場のAI利用はどこまで進んでいるのか。国内企業の経営層はAIをどう捉えているのか。

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 AIエージェントにより複数のツールを使って一連の業務プロセス自動化・自律化することも可能になるなど、関連技術が急速に発展する一方、業務プロセスに生成AIを埋め込むなどして具体的な成果を上げている例はまだ少ない。関心は非常に高いが、ガバナンス、セキュリティをはじめ、ビジネスで安全に使うための環境整備はグローバルでも多くの企業が道半ばだ。

 Okta Japanは2025年8月12日、職場でのAI(人工知能)利用に関する調査「AI at Work 2025」を発表した。世界の経営幹部に実施した本調査からは、生成AI活用の現在地がうかがえる。

 まず、AIがビジネス戦略において「非常に重要」と答えた経営幹部は43%。「絶対に不可欠」は23%に上り、六割以上の経営層が強いAI導入意向を持っていることが分かった。AI導入の鍵となる要素としては「高品質なデータを保証するためのプロセスとガードレール」(35%)が最も多く、「AIの明確なユースケースの定義」(30%)、「ガバナンスとセキュリティ」(26%)と続いた。

 懸念としては「データプライバシー」「セキュリティリスク」が目立った。Oktaの別調査でも、回答者の60%が「デジタルアイデンティティーのプライバシー、セキュリティに与える影響」について、「非常に懸念している」または「懸念している」と回答したという。

 AIとセキュリティの関係については、「AIはAIに対する最善の防御策である」との見方に賛同する企業が、2024年の18%から2025年の41%へと大幅に増加。AI導入時におけるアイデンティティーとアクセス管理(IAM)の重要性を「非常に重要」と回答した割合も、2024年の46%から2025年の52%に上昇した。

国内経営層は「懸念よりも期待」 だが非人間アイデンティティーの管理体制は「これから」

 昨今はAIエージェントやマシンアクセスなど「非人間のアイデンティティー」(以下、NHI)をどう管理するかも課題となっている。AIエージェントに関連する今後3年間の経営層のセキュリティ懸念は「AIガバナンスと監視」(58%)であり、次いで「コンプライアンスと規制要件」(50%)だった。

 NHIの中で最も重要なタイプは「APIとトークン」(33%)、「サービスアカウント」(31%)、「マシン間アイデンティティー」(29%)だった。NHIの管理に関しては、「十分に整備された戦略やロードマップを持つ」と回答したのはわずか10%にとどまった。

 調査を国内企業の回答者(260人中20人)に限ると、日本特有の傾向も見られたという。調査対象の9カ国の中で、日本の経営幹部は「セキュリティ」を最も高い戦略的優先度として位置付けていた。また、AIがビジネス戦略にとって「絶対に不可欠」であると考える割合が30%と、インドの33%に次いで高かった。

 AIの影響については「懸念よりも期待」している割合が70%と調査対象国の中で最も高く、グローバル平均の53%を大きく上回った。NHIについても、企業全体で「広範囲な利用」があると回答しており、調査対象9カ国の中で最も高かった。だが、NHIのセキュリティ管理について「明確な戦略と仕組みがある」と回答したのはわずか9%。52%が「まだ計画段階の初期にある」、30%が「現時点では人間のユーザーにのみ対応している」と回答した。

 Oktaは本調査結果を基に、「日本の消費者はAIエージェントの具体的な利用や個人データ管理に対して、より慎重な姿勢を示している」「(導入には)慎重な一方で、一度導入を決めると深く連携させる傾向がある」「NHIの普及が進む一方で、その管理体制の整備が大きく遅れている可能性がある」と指摘。「AI導入の基盤強化とガバナンス確立」「NHIのセキュリティ管理」に喫緊で取り組むことを訴えている。

 なお、AIエージェントについては「大規模導入にかかる実際のコストや、ビジネス価値の不明確さ、不十分なリスクコントロール」などによって、「2027年末までにエージェント型AIプロジェクトの40%以上が中止される」というGartnerの指摘もある(2025年6月25日発表/Gartnerでは「AIエージェント」を「エージェント型AIの一つ」と定義)。だが、活用上の課題は急速に具体化しており、企業は情報をキャッチアップしつつ、実ビジネスに埋め込むためのロードマップを継続的に検討することが望まれる。

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