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今求められる「ビジネス視点の運用管理」アプリケーションのビジネス価値を最大化するには

デジタルビジネス時代、アプリケーションのビジネス価値を最大化できる「運用の視点と仕組み」が求められている。

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 金融、保険、小売など、重要な顧客接点をアプリケーションが支えるようになって久しい。社内業務もおよそ全てのプロセスをアプリケーションが支えている今、その運用の在り方が収益や顧客エンゲージメント、ビジネス展開そのものに影響を与える状況となっている。これを受けて、アプリケーションが「安定的かつ安全に使えているか」だけではなく、レスポンスタイムなどから「ユーザーが快適に使えているか」を把握する“ユーザー視点の運用管理”が重視され、多くの企業がアプリケーションパフォーマンスを監視するAPM(アプリケーションパフォーマンス管理)を活用してきた。

 だが、近年はハイブリッド/マルチクラウド化や、AI(人工知能)活用を見据えたデータ基盤整備が進むなど、アプリケーションを支えるインフラが年々複雑化している。また、レスポンス遅延は即、機会損失や信頼失墜につながるため、障害が起きてから対応するのではなく、予兆を検知して障害を未然に防止するアプローチも求められている。これにはアプリケーションを含めてシステム全体を監視し、ログやトレースなど多様なデータを基に問題原因を特定、迅速に対処するアプローチが必要だ。その実現手段として近年、オブザーバビリティ(可観測性)製品が、主にB2C(Business to Consumer)のサービスを展開する企業に注目されてきた。

 ただ昨今は、「快適に使えているか」といったユーザー視点の運用管理だけではなく、そのアプリケーションが持つビジネス価値に対して「費用対効果が見合っているか」といった“ビジネス視点の運用管理”も求められている。その手段の一例が、オブザーバビリティ(可観測性)製品を提供するNew Relicが2025年6月に発表した「Cloud Cost Intelligence」だ。

ユーザー体験とコスト合理性を両立する仕組み

 同製品はマルチクラウドのコスト傾向やその要因、影響に関する詳細なビューを提供する。例えば、Amazon Web Services(AWS)とKubernetesのリソースコストをリアルタイムに可視化し、技術チームとビジネスチームの両方がクラウド支出を視覚的に把握、予測できるという。アプリケーションのローンチ前に計画したリソースのコスト見積もりも出せる他、異常な支出パターンを検出して関係者にアラートを出す機能も持つ。

 同分野の製品を提供しているのはNew Relicに限らない。IBMもその一社だ。同社はAPM製品「IBM Instana Observability」、ARM(アプリケーションリソース管理)製品「IBM Turbonomic」を提供している。これらによって、インフラからアプリケーションまでの可観測性を提供する他、アプリケーション性能を損なわずにクラウド/オンプレミスのインフラリソースを自動的に最適化できるという。

 また、Instana Observability、Turbonomicを含めた各種管理ツールからのデータを収集し、AIで分析・可視化してアプリケーションのセキュリティリスクなどを発見、自動修復することでアプリケーションの回復力を高める「IBM Concert」も用意し、これら3製品を「IBMオブザーバビリティーソリューション」として提供している。

 クラウドの浸透によってインフラリソースのコスト予測が難しくなっている中、単なるコスト削減ではなく、「目的に対するコスト最適化と価値最大化」を狙うFinOpsも数年前から注目されているが、その認知度、実践企業はいまだ限定的だ。しかし「IT運用」が「ビジネス遂行」とほぼイコールになっている今、“ビジネスの遂行状態と投入コスト”をひも付けて管理できなければ期待する投資対効果は望めない。企業間競争が激化している今、分断されてきたビジネスとITの関係を見直し、ユーザー体験とコスト合理性を両立する「ビジネス遂行を支える仕組み」の早急な見直しが望まれる。

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