生成AIはパブリッククラウド市場も拡大させる? 富士キメラ総研が市場拡大の要因を分析:2030年度は6兆円超えの見込み
富士キメラ総研は国内のパブリッククラウドサービス市場予測を公開した。マルチクラウドの浸透やAI技術の普及で、2030年度は6兆2515億円へ拡大する見込みだ。
富士キメラ総研は2025年9月5日、パブリッククラウドサービスの市場調査レポート「2025 クラウドコンピューティングの現状と将来展望 市場編」を公開した。国内のパブリッククラウドサービス市場の現状と2030年度までの見通しを示している。
「マルチクラウド」の浸透や生成AIの普及が影響
レポートによると、2024年度の同市場は3兆4444億円で、同社の予測では2030年度には6兆2515億円に拡大する見込みだ。
富士キメラ総研は国内のパブリッククラウドサービス市場が成長する要因として、以下の4つを挙げている。
- 基幹系システムを含む既存システムのリフト&シフト(オンプレミスのシステムやアプリケーションを丸ごとクラウドサービスに移行する方法)の増加によるモダナイズ需要
- 複数のクラウドベンダーのサービスを組み合わせた「マルチクラウド」の採用
- VMware製品のライセンス変更への対応としてのクラウドサービス移行検討
- 生成AI(人工知能)の普及に伴うクラウドサービスの利用拡大
「特に生成AIは大量データの学習やデータ保存の観点から、クラウドサービスを中核としたシステム整備を後押しする」と富士キメラ総研は分析している。
SaaS、DaaS、IaaS、PaaSはそれぞれどうなる?
レポートでは、代表的なクラウドサービスである「SaaS」(Software as a Service)、「DaaS」(Desktop as a Service)、「IaaS」(Infrastructure as a Service)、「PaaS」(Platform as a Service)の市場動向についても調査、分析している。
SaaS領域では、人手不足対策やデジタル改革の推進に伴い、クラウドサービス導入が広がる見込みだ。業種汎用(はんよう)型SaaSは、システムの標準機能に業務プロセスを合わせる「Fit to Standard」の機運の高まりを背景に、大企業での採用が加速。業種特化型SaaSについても、サービス強化のための自社業務に合わせたIT環境整備を進めたい企業のニーズが増え、活用が進んでいる。
DaaS領域は、テレワークとオフィス勤務を組み合わせた「ハイブリッドワーク」や、社内外を問わず全ての通信を疑い、都度認証する「ゼロトラストセキュリティ」の実現に向けた新規導入が続き、市場が拡大している。また、VMware製品のライセンス改定をきっかけに、これまで自社サーバで動かしていた仮想デスクトップからDaaSに移行する動きも同市場の成長を支えていると富士キメラ総研は分析している。
IaaSとPaaS領域では、オンプレミス環境からの移行に加え、生成AI関連案件の増加が市場拡大に寄与した。移行のきっかけとしてはITインフラやアプリケーションの更改時期、サポート終了、既存プロダクト(ソフトウェアやハードウェア)の単価上昇もしくは料金形態の変更などが挙がっている。
このニュースのポイント
Q: 国内クラウドサービスの市場規模はどのように推移する見込みか?
A: 2024年度は3兆4444億円、2030年度には6兆2515億円へと拡大する見通し。
Q: 成長要因として挙げられたのは何か?
A:
- 基幹系システムを含む既存システムのリフト&シフトによるモダナイズ需要
- マルチクラウド採用
- VMware製品ライセンス変更への対応による移行検討
- 生成AI普及によるクラウド利用拡大
Q: SaaS市場の動向は?
A: 人手不足対策やデジタル改革推進を背景に導入増加。大企業ではFit to Standard志向による汎用型SaaSの採用が加速、特化型SaaSも企業ニーズの増加で活用拡大。
Q: DaaS市場の動向は?
A: ハイブリッドワークやゼロトラスト実現への新規導入が拡大。加えてVMwareライセンス改定を契機にオンプレ仮想デスクトップからDaaS移行が進展。
Q: IaaS・PaaS市場の動向は?
A: オンプレからの移行に加え、生成AI関連案件の増加が寄与。インフラ更新やサポート終了、既存製品の価格改定も移行のきっかけとなっている。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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