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クラウドサービスの普及だけではない、クラウド型DLP市場急成長の背景は

クラウド型DLP市場が急成長している。ITR調査によれば2028年度に84億2000万円規模に拡大する見込みだ。その背景には何があるのか。

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 クラウドサービスの普及に伴い、日本でもクラウドに業務システムやデータ基盤を移行する動きが拡大している。企業・組織で個人情報や機密情報といった重要データをクラウドに格納したり、クラウドサービスを通じて共有したりする機会が増加し、利用中のクラウドサービスからの情報漏えいリスクが高まっている。特に企業・組織が保有する重要データは事業継続に直結する資産であり、その保護が経営上の大きな課題になっている。

 こうした状況の中で、クラウド型DLP(Data Loss Prevention)が注目されている。クラウド型DLPは、SaaSやIaaSといったクラウドサービスに格納されている重要データを監視、可視化し、情報の持ち出しやコピーの可能性を検知した際は、アラートの通知や操作をブロックして情報の流出を防止する技術、機能だ。

 情報漏えい防止やデータ保護を目的に需要が拡大し、膨大な重要データを保有し、セキュリティ対策に積極的な大企業を中心に導入が進んでいる。中堅・中小企業での導入も増加傾向にある。アイ・ティ・アール(以下、ITR)は2025年6月26日、国内クラウド型DLP市場の規模推移および予測を公表した。調査結果によれば、2023年度の市場規模は44億6000万円であり、前年度比31.6%増を記録した。2024年度は56億8000万円に達する見込みとされ、前年度から27.4%の成長が予測されている。

ゼロトラスト/SASEや生成AIの普及に伴うクラウド型DLP需要


クラウド型DLP市場規模推移および予測(2022〜2028年度予測)(提供:ITR)

 今回の調査ではクラウド型DLP市場の中期的な成長見通しも示されている。ITRは2023年度から2028年度にかけて年平均成長率13.6%を予測し、2028年度には市場規模が84億2000万円に達すると見込んでいる。

 ITRのアナリスト中村悠氏は、「ゼロトラストセキュリティの必要性が叫ばれて久しく、近年では、その有効な手段として、SASE(Secure Access Service Edge)が普及しつつある。SASEは、複数のコンポーネントから構成されており、クラウド型DLPもその一要素に位置付けられ、業種や従業員規模を問わず導入が拡大している」としている。

 クラウドセキュリティでは、利用するクラウドサービスごとに適切なセキュリティ設定と定期的な見直しが不可欠だが、加えて、クラウド型DLPを情報漏えい対策として採用することで、より高度なセキュリティレベルを実現できるという。「今後もクラウドサービスの利用拡大が見込まれることから、クラウド型DLP市場のさらなる成長が期待される」

 ゼロトラスト/SASEに加えて注目したいのが生成AI(人工知能)の普及だ。AI活用が進む企業でも学習データをいかに保護するかが課題になっている。企業が活用する生成AIモデルやAIサービスを悪用してデータを窃取する攻撃も観測されており、AIサービスベンダー側にもデータ保護機能への対応が迫られる中であらためてDLPが注目されている。例えば、OpenAIは「ChatGPT Enterprise」のユーザーにDLP機能を提供済みだ(参考)。生成AIの普及も相まって今後もDLPをはじめとするデータ保護機能への注目は続くとみられる。

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