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事業成果につながる「AIファースト戦略」の本質とはGartner Insights Pickup(423)

AIの可能性がビジネスの世界を大きく変えようとしている中「AIファースト」戦略が重要となる。Gartnerは、2028年までにAIファースト戦略を全社的に採用・維持する企業は、採用しない企業と比べて25%優れたビジネス成果を達成すると予測している。本稿では「AIファースト」について解説する。

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ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Insights」などのグローバルコンテンツから、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 AI(人工知能)の変革的かつ広範な可能性は、ビジネスの世界を変えようとしている。経営陣は、「わが社はAIを最大限に活用できているか」を検討せざるを得なくなっている。こうした中で重要性を増しているのが、”AIファースト”戦略の採用だ。

 AIファースト戦略を採用することは、重要な投資およびアプリケーション分野においてAIの能力を探求・評価するという明確なコミットメントをするということだ。Gartnerは2028年までに、AIファースト戦略を全社的に採用、維持する企業は、そうでない競合他社よりも25%優れたビジネス成果を達成すると予測している。

 企業が戦略や関連する投資、ポートフォリオ、実行管理の実践でAIファースト思考を体現するためには、まずAIファーストアプローチの本質を理解することが重要だ。

AIファーストとは何か

 AIファーストは、企業やその部門がAI技術を活用し、AIの利点を最大限に引き出すための指針となる戦略的アプローチだ。AIを単なるツールとして扱うのではなく、常に他の選択肢と比べてその潜在力や可能性を全て考慮し、最も合理的な場面でAIを活用するというものだ。

 AIファーストはAI導入を加速し、AIリテラシーを向上させ、継続的な学習を促進する。また、ともすると見過ごされがちな新たな可能性を発見するのに役立つ。最も重要なのは、AIファースト戦略が「常にAIを使わなければならない」という厳しい義務ではなく、あらゆる状況でAIの価値を探るというコミットメントであることだ。

 企業は全社的な変革から、製品開発、ITシステム、人事といった特定分野への集中展開まで、AIファーストをさまざまな形で実践できる。既存システムやデータのサイロ化を解消し、部門横断的な機会を最大限に生かすことで、最も大きな効果が得られる。

 AIファースト戦略を採用するには、経営陣のコミットメント、明確なコミュニケーション、チェンジマネジメント(変革管理)の強固な支援システムが必要になる。また、倫理、バイアス(偏向)管理、セキュリティに関する厳格な基準を維持しながら、成功を測定する(行動、マインドセット〈考え方〉、学習の質の変化を追跡する)新しい指標も求められる。

AIファーストアプローチはいつ採用すべきか

 AI投資の価値の最大化を目指す企業にとって、AIファースト戦略を採用する適切な時期を見極めることは極めて重要だ。多くの企業がAIに投資しているものの、その価値を最大限に引き出すことに常に苦労している。

 AIファーストアプローチが特に急務となるのは、AIに対する期待と、現行のユースケースでAIがもたらす価値との間にギャップが広がっている場合、あるいは既存のシステムや考え方が、有意義な変革の障壁となっている場合だ。

採用を検討する目安

 以下の場合には、AIファースト戦略への移行を検討すべきだ。

  • AIの潜在力に対する期待と、現在提案されているユースケースでAIがもたらす価値との間にギャップが拡大している
  • AIによって大規模な混乱や変革が起こる可能性が高い
  • 経営陣は変革を推進、実現する準備ができているが、組織全体では準備不足で、広範な変化を構想する能力や意欲が乏しい

 ただし、「AIファースト」は、「AIオールウェイズ」(常にAI)を意味しないことを肝に銘じる必要がある。必要性がないのに無理に導入を進めると、リソースの浪費やプロジェクトの失敗、社内での支持低下を招く恐れがある。リーダーシップは、自社のコンテキスト(文脈)における「AIファースト」の意味――その範囲と限界を含めて――を明確に定義し、現実的な期待を設定する必要がある。

 AIファーストへの取り組みをいつ、どのようにコミットするかについては、慎重な戦略的評価に基づいて判断しなければならない。自社の準備が整っていない段階で早まって導入すれば、労力が無駄になりかねない。同様に、導入を遅らせ過ぎると、競合他社に後れを取り、市場機会を逃す恐れがある。

 AIファーストの考え方は、クラウドファースト戦略と似ている点がある。例えば、技術を主要な意思決定要因として位置付け、重視することがそうだ。だが、さらに踏み込んで、固定観念を問い直し、インフラだけでなく、あらゆるビジネス領域にわたってイノベーションを促進する。

出典:Decoding the AI-First Approach(Gartner)

※この記事は、2025年9月に執筆されたものです。

筆者 Rajesh Kandaswamy

Distinguished VP Analyst


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