検索
連載

AIだけではできないことを可能に 再注目の数理最適化を効果的に活用する方法Gartner Insights Pickup(424)

生成AIが注目を集めているが、あらゆるビジネス課題を解決するわけではない。価格設定やリソース配分など、企業が直面する問題の多くは、生成AIや従来のML手法よりも、最適化技術によって最も効果的に対処できる。本稿では、AIの最適化技術について解説する。

PC用表示 関連情報
Share
Tweet
LINE
Hatena

ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Insights」などのグローバルコンテンツから、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 データとアナリティクス(D&A)のリーダーは「データ、アナリティクス、AIへの投資から、より大きな価値を生み出さなければならない」という圧力の高まりにさらされている。

 生成AIが多大な注目を集めているが、あらゆるビジネス課題を解決するわけではない。価格設定やリソース配分、物流など、企業が直面する最も重要な問題の多くは、生成AIや従来の機械学習(ML)手法よりも、最適化技術によって最も効果的に対処できる。

 競争圧力が高まり、企業が「より少ないリソースで、より多くの成果を達成する」ことを求められる中、測定可能な成果を生み出すソリューションへとチームを導く、D&Aリーダーの役割に注目が集まっている。

 最適化技術により、生成AIだけでは対処できない、制約のある複雑な問題を解決する実証済みの手法が取れる。このアプローチは新たな課題も伴うが、適切に実行すれば、競争上の差別化によって価値を生み出す機会が得られる。

 最適化技術は新しいものではないが、新たな重要性を帯びている点に留意すべきだ。生成AI自体が、最適化への新たな注目を喚起した。生成AIは、非構造化データを最適化エンジンへの入力として使用することを可能にし、最適化ソリューションの設計と開発を加速させ、最適化手法をより大きなソリューションにシームレスに組み込めるようにする。また、最適化エンジンに有益な入力を提供できる予測モデルの開発も支援する。

 最適化はさまざまな業界や業務に適用できる。そうして生み出す価値を最大化するには、最適化技術が最大のインパクトを発揮できる分野を見極めることが不可欠だ。

価値の高い最適化ユースケースを特定し、優先する

 D&Aリーダーにとっての第一歩は、ビジネスの観点から価値の高い最適化ユースケースを特定し、優先することだ。最適化とは、相互に依存する選択肢を制約を踏まえて成果基準で評価し、「何が最善か」を判断する処方的アプローチを進めることだ。これはビジネスインテリジェンス(BI)や、データサイエンス/機械学習などの従来の分析手法(「何が起きているか」「なぜか」「次に何が起こるか」といった問いに答える)からの自然な進化だ。

 最適化の機会は判別が難しい場合があるが、次の3つの主要な構成要素を探すことで明確になる。

  1. 目標を最大化または最小化の数式として定量化する「目的関数」
  2. 最適解を見つけるために制御または調整できる「決定変数」
  3. 考慮しなければならない「制約」(それらの変数の条件や制限)

 潜在的なユースケースを特定したら、さまざまなアプローチのコストと価値の比較が重要だ。例えば、既存のデータサイエンスツールで利用可能な技術を用いてリソース最適化ソリューションを構築する場合、必要なコンピューティングリソースは最小限で済むかもしれない。

 これに対し、生成AIで同じソリューションを開発する場合、初期開発コストがかかる他、追加のツールが必要となり、推論費用も継続的に発生する。精度が低下する可能性も付きまとう。D&Aリーダーは、これらのファクターを慎重に評価することで、個々のビジネス課題に応じて最も効果的なアプローチを確実に選択できる。

持続可能な応用最適化のビジネスプラクティスを実現

 応用最適化プラクティスで持続可能な価値を提供するには、まず、優先順位の高いビジネス成果や、適切に定義され、明確で測定可能な結果が想定された問題に焦点を当てて、取り組みを進める。社内や業界で信頼されている実証済みの技術やアプローチを活用し、早期に価値を実証する。包括的なアプローチのために複数の分析手法を組み合わせた複合ソリューションを検討し、明確な解釈と実行可能な推奨事項を得るために大規模言語モデル(LLM)を使用する。

 開発チーム内にデータ統合やデータサイエンスを組み込み、一貫性のある再利用可能なコンポーネントや共有サービスを協力して開発することで、最終結果を改善し(例えば、AIアプリケーションの構築をより成功させ、データアクセスの改善や生産性向上などを実現する)、価値のある成果につなげる。

 Gartnerの調査は、AIベースのアプリケーションの提供に成功していると回答している企業の68%が、データサイエンティストとソフトウェア開発者の混成で部門横断型チームやアジャイルチームを組んでいることを示している。

 最適化技術は、従来の分析では対処が困難な、複雑で多次元的な問題の解決に欠かせない。記述的、診断的、予測的分析を拡張することで、最適化は、企業が限られたリソースを、最良の結果をもたらす方法で配分することを可能にする。

 このアプローチはデータ分析の焦点を、単に洞察を生み出すことから、的を絞った行動を実行し、そのインパクトを測定することへと移す。これは分析の過程において「何が起きているか?」から「ではどうするか?」への進化となる。

出典:Use Optimization Techniques to Unlock True AI Potential(Gartner)

※この記事は、2025年9月に執筆されたものです。

筆者 Carlie Idoine

VP Analyst


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

[an error occurred while processing this directive]
ページトップに戻る