「Wi-Fi HaLow」が産業用途に浸透、「UWB」の成熟も 2026年以降の無線技術トレンド:ABI Researchが予測
ABI Researchは、サプライチェーンの回復と技術成熟を背景に、産業・企業向け無線市場が再成長局面にあると分析する。企業が注目すべき主要トレンドを解説する。
調査会社のABI Researchは2026年1月、2026年以降に注目すべき無線技術に関するブログ記事を公開した。同社アナリストは、2024年後半から2025年にかけて企業向け無線技術のニーズが拡大していると指摘する。本稿では、特に企業向けの利用において発展が期待される「4つの無線技術トレンド」に焦点を当てる。
1.「Wi-Fi HaLow」の出荷台数が急拡大
「Wi-Fi HaLow」(IEEE 802.11ah)は、長距離通信と低消費電力を両立する特性から、商業および産業用途で普及が進んでいる。Morse MicroやNewracomといった半導体ベンダーに加え、日本ではAHPC(802.11ah推進協議会)のような地域コンソーシアムが、同技術の普及を後押ししている。
ABI Researchによると、Wi-Fi HaLow対応デバイスの出荷台数は、無線技術の中でもとりわけ高い成長率となる45%の年平均成長率(CAGR、2025〜2030年)を記録する見通しだ。これにより、年間出荷台数は1900万台から1億2400万台に増加するという。
Wi-Fi HaLowの主な用途は、産業用IoT(モノのインターネット)、ビル管理、エネルギー管理、電子棚札(ESL)など、広域かつ低消費電力が求められる企業・商業分野に集中している。
2.AIによるWi-Fiネットワーク管理の完全自動化には慎重な見方
企業向けWi-FiネットワークにおけるAI(人工知能)活用について、ABI Researchのアナリストであるアンドリュー・スパイビー氏は、ユーザー体験の向上、エネルギー効率の改善、運用負荷の軽減といった効果を認めつつも、ネットワーク管理の完全な自動化には慎重な見方を示している。
AIがWi-Fiネットワークを変革することは間違いなく、期待される主な効果は以下の通りだ。
- 従業員数の削減
- サービス品質保証(SLA)の追跡手法の変更
- 小規模チームによる拡張
- OPEX(事業運営費)モデルへの移行促進
こうした肯定的な影響がある半面、現時点で重要な意思決定を生成AIやエージェント型AIに委ねることには慎重な見方が示されている。人間を判断プロセスから外すにはリスクが大きい。
加えて、マルチベンダー間の相互運用性、エンドツーエンドの可観測性(オブザーバビリティー)の欠如、AI人材の不足なども障壁となっている。
3.「Bluetooth」が医療分野を変革
無線ネットワークの新たなトレンドとして、医療分野における「Bluetooth」の役割が重要性を増している。多くのモバイルユーザーに認知されており、ベンダーのサポートも厚いことに加え、低消費電力で強力なセキュリティ機能を備えていることが理由だ。
Bluetooth対応デバイスは、心拍数、睡眠の質、ストレスレベル、血中酸素、血糖値、皮膚温度などを測定できる。さらに、患者の健康データをリアルタイムで医療専門家と共有することで、遠隔患者モニタリング(RPM)に革命をもたらしている。
病院での患者ケアの最適化にも貢献しており、リアルタイムの追跡によって資産管理やスタッフの安全性、衛生コンプライアンスを改善し、ケア提供の遅延やミスを削減するという。
4.「Ultra-Wideband」(UWB)の成熟が始まる
ABI Researchによれば、超広帯域の周波数帯を利用する「Ultra-Wideband」(UWB:超広帯域無線)デバイスの出荷台数は、2025年の5億2700万台から2030年には14億台へと、ほぼ3倍に増加する。「IEEE 802.15.4z」規格の普及により、自動車のデジタルキーやアクセス制御、リアルタイム位置情報システム(RTLS)といった企業向け用途が拡大している。
今後は、無線スマートロックやアクセス制御リーダーにより、住宅や商業ビルのアクセス管理への対応も広がるとみられる。さらに、複数の測位技術の相互運用を可能にする標準規格「omlox」が、RTLS分野でのUWBの成長を加速させる兆しがある。UWB対応デバイスの出荷台数の半分以上をスマートフォンが占める見込みだ。
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