「必要性は分かっているが……」 企業の4割が“BCP未策定” 無防備の現実:地震、洪水、サイバー攻撃――企業は事業中断リスクにどう向き合うべきか
直近で熊本地震や千葉県における集中豪雨・洪水など事業中断に直結する自然災害や、サイバー攻撃によるサプライチェーン断絶といった事態が相次いでいる。帝国データバンクの最新調査からは、企業の防災・対策意識が過去最高となる一方で、約4割が「BCP未策定」という無防備な現実が浮き彫りとなった。
2026年7月28日に発生した熊本地震や同年8月13〜14日に千葉県で発生した集中豪雨・洪水など、日本各地で企業の事業継続を揺るがすレベルの自然災害が相次いでいる。いつ自社の拠点やサプライチェーンでビジネス遂行困難となる事態が起きてもおかしくない昨今、企業には事業継続計画(BCP)の再点検が迫られている。
こうした中、帝国データバンクが発表した「事業継続計画に対する企業の意識調査」(2026年)からは、企業におけるBCP対策のリアルな実態が浮き彫りとなった。
BCP策定率は21.4%で過去最高も、4割が未策定のまま
調査によると、企業のBCP策定率は21.4%(前年比1.0ポイント増)となり、過去最高を更新した。「現在策定中」(7.2%)や「検討中」(21.9%)を合わせた「策定意向あり」は50.5%と半数を超え、BCP対策に前向きな姿勢を示す企業は多い。
しかしその一方で、「策定していない」と答えた企業は40.7%(同0.8ポイント減)と依然として4割を超えており、事業中断リスクに対して企業の準備が追いついていない現実が浮き彫りとなった。
大企業39.9%に対し中小企業は18.3% 「20ポイントの格差」
BCP策定率を企業規模別にみると、大企業の策定率が39.9%(前年比1.2ポイント増)に対し、中小企業は18.3%(同1.2ポイント増)にとどまり、20ポイント以上の格差がある。
帝国データバンクは「BCPの前提が単独企業からサプライチェーン全体での連携へと移行する中、自力で実効性のある計画を策定する負担の重さが、中小企業の大きな障壁になっている」と分析する。
被災地や太平洋沿岸で高まる危機意識 BCPで策定している内容は?
地域別に見ると、南海トラフ巨大地震の被害想定地域や能登半島地震の被災地で危機意識の高まりが目立つ。都道府県別の「策定意向あり」割合では、「富山」(62.5%)が首位となり、「高知」(61.7%)、「香川」(59.5%)、「静岡」(58.3%)が続いた。
企業からは「BCP策定により、今後の対策方針を明確化できる」(静岡県の建設業者)、「コロナ禍や震災を経て、備えておく重要性を実感した」(富山県の旅館・ホテル事業者)、「具体的な整備は道半ばの状況だが、自然災害や感染症拡大、原材料供給の途絶などを想定し、BCP策定を検討している」(愛媛県の飲食料品・飼料製造業者)といった声が挙がっている。
事業中断リスクへの取り組みとしては、「従業員の安否確認手段の整備」(65.3%)と「情報システムのバックアップ」(59.5%)が上位を占めた。加えて、「調達先・仕入先の分散」(42.1%、前年比5.2ポイント増)や「生産・物流拠点の分散」(15.6%、同5.8ポイント増)を進める動きも加速している。
「必要性は分かっているが……」 災害大国と分かっていてもBCP未策定の理由
BCPを「策定していない」企業に理由を尋ねたところ、「策定に必要なスキルノウハウがない」(42.2%)が最多となった。次いで「策定する人材を確保できない」(33.5%)、「策定する時間を確保できない」(28.1%)と続く。
現場からは「必要性は感じているが、目先の業務に忙殺されている」(岐阜県の建設業者)といった声も挙がっており、専門知識や専任人材といった経営資源の不足が足かせとなっている実情がうかがえる。
完璧を目指さない「段階的導入」が現実解
帝国データバンクは、未策定企業や中小企業への普及に向けて「最初から完璧な計画を目指すのではなく、優先度の高いリスクに絞った段階的な導入が有効だ」と提言する。まずは安否確認や重要データのバックアップといった着手しやすい対策から始め、専門機関のガイドラインなどを活用しながら順次拡大していく手法が推奨されるとした。
近年は自然災害やサイバー攻撃への対応遅れを巡り、企業経営層の過失・責任が厳しく問われるケースが増加している。相次ぐ自然災害、サイバー攻撃、そして供給網の分断――。BCPは形式的な防災対策ではなく、従業員の生命や既存資産を守り抜き、万が一の事態でも事業を止めず早期復旧を果たすための「実践的な経営戦略」であると認識した上で、見直し・アップデートしていくことが求められている。
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