VMwareが「ターンキー化」 AI基盤の構築を数週間から30〜45分に短縮
BroadcomがVMwareの年次イベントで、AI環境のターンキー化を打ち出した。2025年に発表した「AI対応VCF」から一歩進み、AI/AIエージェント構築・運用に必要な要素を統合して提供する。自前の基盤構築よりも迅速で容易であり、コストやセキュリティ面でも優れるとする。
Broadcomは、2026年8月末に開催の「VMware Explore 2026」で、企業がオンプレミス環境にプライベートAIクラウドを迅速に構築・運用するための新たな基盤「VMware AI Factory」を打ち出した。「VMware Cloud Foundation(VCF)」をベースに、ハードウェアのプロビジョニングからKubernetes、AIソフトウェア、モデルの展開、ライフサイクル管理までを自動化する。
ユーザー自身による基盤構築よりも、迅速で容易、かつコストやセキュリティ面で優れるとする。
企業がAI基盤を新たに構築する場合、サーバやGPU、ストレージ、ネットワーク、Kubernetes、モデルサービング基盤などを個別に導入・統合する必要があり、構築に数週間から数カ月を要することもある。AI Factoryでは、この作業を自動化し、ベアメタルサーバの調達から最初のAIモデルを提供するまでの時間を約30〜45分に短縮することを目指す。
AI対応インフラからターンキーAI基盤へ
AI Factoryの大きな特徴は、従来の「AI対応VCF」という位置付けから一歩進み、プライベートAI基盤をターンキー型の製品として提供する点にある。
AI Factoryは、VCF上にソフトウェア定義のAIインフラを構築し、ハードウェアのプロビジョニング、KubernetesやAIソフトウェアスタックの有効化、ハードウェアとソフトウェアのライフサイクル管理などを一貫して自動化する。
ハードウェアについては、Cisco、Dell、Lenovo、Supermicroなどのサーバを「VCF AI-ready node」として認証し、あらかじめ検証済みの構成として提供する。
さらに、複数ベンダーのハードウェアを統合管理するため、MetalSoftとの連携も行う。これにより、サーバメーカーごとに異なる管理ツールを使うのではなく、単一のコンソールからファームウェアやドライバを含めたハードウェアとソフトウェアのライフサイクルを統合的に管理できるようにする。
モデルを1回配置して複数部門で共有
AI Factoryでは、インフラだけでなくAIモデルの運用も統合している。
その中心となるのが「Model as a Service」と呼ぶモデル提供機能だ。企業内の複数の部門やテナントが、同じモデルインスタンスを安全に共有できるようにする。各部門が同じモデルを個別に展開する必要がなくなるため、GPUの利用効率を高め、AIの運用コストを抑えることが狙いだ。
また、商用モデル、オープンソース/オープンウェイトモデルを含む150以上の検証済みモデルをカタログとして提供する。例としてGoogleのGemma、NVIDIAのNemotron、NECのKotomi、Zhipu AIのGLM、AlibabaのQwenなどが挙げられている。
モデルの一元管理に加え、AI Gatewayによるインテリジェントなプロンプトルーティング、トークン/利用量の制限、アプリケーション認証なども提供する。
単にAIモデルを動かすだけでなく、どのモデルを誰がどれだけ利用したかを把握し、GPUやトークンの利用効率を管理できるようにしているという。
エージェントの暴走やプロンプトインジェクションにも対応
AI Factoryでは、生成AIだけでなくAIエージェントの利用も想定している。
AIエージェント向けには、隔離されたコンテナによる「Secure AI Sandbox」を用意し、ネットワークやリソースへのアクセスを厳格に制御する。これにより、プロンプトインジェクション、制約のないエージェントの動作、動的なコード実行など、エージェント特有のリスクを抑えることを目指す。
AI基盤そのものだけでなく、AIエージェントのアイデンティティ、ポリシー、監視まで含めたセキュリティ機能を強化している。
「Private AI Cloud」をフルスタック化
今回のAI Factoryは、Broadcomが掲げる「VMware Private AI Cloud」の中核に位置付けられる。
Private AI Cloudは、単なるGPU搭載サーバやAI対応の仮想化基盤ではなく、次の4層から構成されるフルスタック基盤だ。
インフラ層:VCFとAI FactoryによるGPU、Kubernetes、ライフサイクル管理
モデル層:Model as a Service、検証済みモデルカタログ、モデル共有、マルチテナント管理
セキュリティ層:AI Gateway、Secure AI Sandbox、We Defend、Aviなど
エージェント層:Tanzu Platformを基盤とするエージェント実行・オーケストレーション環境
さらに、AIエージェントが利用するデータについても「AI-Ready Data Foundations」として、データの取り込み、構造化、ガバナンス、公開までを管理し、どのエージェントがどのデータセットにアクセスできるかを細かく制御する構想を示している。
エージェントのアイデンティティやポリシー、利用状況を管理する「Agent Minder」も、このアーキテクチャの一部となる。
「自前構築」との違いは運用の簡素化
AI Factoryが狙うのは、企業がAI基盤を「自前で組み立てる」負担を減らすことだ。
自前構築の場合、GPUサーバ、ストレージ、ネットワーク、Kubernetes、モデルサーバ、AI Gateway、監視、セキュリティなどを個別に選定し、統合して運用する必要がある。アップデートやドライバ、ファームウェアの管理も個別に行わなければならない。
これに対してAI Factoryは、ハードウェア、AIソフトウェア、モデル、セキュリティを検証済みの構成としてまとめ、プロビジョニングからライフサイクル管理までを自動化する。
つまり、AI Factoryは企業に「AI基盤を自由に組み立てる」選択肢を与えるというより、自由度の一部を犠牲にしてでも、短期間で標準化されたプライベートAI環境を構築・運用できるようにすることに重点を置いた製品といえる。
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