データウェアハウス最前線(6)

メンテナンスフリーな高性能DWHを実現

吉村 哲樹
2010/12/16

専任のデータベース管理者は不要

 FPGAを利用したデータ処理など、ネティーザ独自の機能は、性能を高めるだけのものではない。運用管理面でも大きなメリットをもたらすという。一般にDWHシステムは、稼働開始後も性能を維持するためにデータベースのインデックスの再構築や、パーティショニング設定などのチューニング作業が欠かせない。しかし、ネティーザのアプライアンス製品ではこれまで述べてきたように、ハードウェアとソフトウェアの両方に独自の機能を盛り込んで性能を高めており、人手によるチューニング作業の多くが不要だという。

 実際、同社の製品を導入した企業の中には、DWHシステムの運用管理コストを大幅に削減した例が多いそうだ。日本ネティーザのマーケティング本部で部長を務める湯元敏久氏は、その一例について次のように語る。

 「これは米国の話だが、これまで大規模DWHシステムに専任のデータベース管理者を3人配していた企業が、ネティーザのDWHアプライアンスに入れ替えたところ“0.5人”、つまり専任ではなく他のシステムとの兼任の管理者1人だけで運用できるようになったという例がある。この事例に限らず、ネティーザ製品の導入先では『管理者が兼任』という例が多い。それだけ、運用に手間がかからないということだ」

 なお同社では、これまで挙げてきたようなネティーザ製品の性能、運用管理面でのアドバンテージについて、単に情報を提供するだけではなく、導入を検討している企業に対しては実機を検証できるサービスを展開している。検証用設備も用意しており、場合によっては検証用に実機を貸し出すこともあるという。

 「製品をせっかく導入いただいても、思っていたほどの性能を発揮できなければ、ユーザーもわれわれも不幸になるだけだ。単なるお試しではなく、ユーザーが実際に運用する本番環境になるべく近い形で実際に使っていただき、納得してもらった上で導入してもらいたい。この実機検証のサービスは、会社を設立した当初から続けている。もちろん今後も続けていきたい」(湯本氏)

IBMによる買収と今後の戦略

 報道などですでに耳にしている読者も多いと思うが、2010年9月、米IBMによるネティーザの買収が合意に達した。IBMによる買収は、今後のネティーザの製品戦略に何らかの影響を及ぼすのだろうか? 法華津氏は次のように述べる。

 「IBMは、DB2と汎用ハードウェアを利用した『IBM Smart Analytics System(ISAS)』というDWHアプライアンス製品をすでに持っている。ネティーザの製品は専用ハードウェアを使ったアプライアンス製品であり、ISASに比べてもよりDWH向けの設計になっている。ISASとネティーザのアプライアンスは、それぞれ性格が異なるので、IBMの製品ラインアップの中でもきちんとすみ分けができると思う。また、IBMと一緒になることで、ネティーザ製品に関与するエンジニアやコンサルタントの数が増えると期待できる。そうなれば、競合他社に対する競争力が向上するだろう」

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IBMの製品ラインアップとネティーザの製品ラインアップは補完しあう関係になれるはずと語る湯本氏

 まだ買収完了から日も浅く、IBMの一員として今後どのようにネティーザ製品のビジネスを展開していくかについては、これから検討するという。しかし日本においては当面、現在続けているビジネスを引き続き進めていく方針だという。

 「われわれのビジネスが伸びることは、当然IBMにとっても喜ばしいはず。製品戦略については、従来どおりのロードマップに従って機能強化を続けていく予定になっている」(湯本氏)

 そうした機能強化の一例が、TwinFinシリーズのソフトウェアの最新版「バージョン6.0」で新たに備わった「i-Class」という機能だ。これは、アプライアンスの外部で、ソフトウェアツールで処理していた各種統計分析を、アプライアンスの内部で処理してしまおうという機能だ。具体的には、クエリ処理と同様に分析処理もコードをコンパイルした形でMPPを構成するサーバに分散し、並列処理させる。TwinFinのソフトウェアとしてこのような仕組みを提供するとともに、分析処理のコードを記述するためのSDKもユーザーに提供する。

 「ネティーザのアプライアンス製品がもともと持っているアーキテクチャは、このような新しいソフトウェア技術を載せるには非常に適している。今後もi-Classの機能を充実させていき、統計分析機能に力を入れていく予定だ」(法華津氏)

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Index
メンテナンスフリーな高性能DWHを実現
Page 1
DWH市場に風穴を開けたネティーザ
MPPを有効に活用するためのソフトウェア技術
FPGAでデータを処理することで高速化
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専任のデータベース管理者は不要
IBMによる買収と今後の戦略
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【筆者プロフィール】
吉村 哲樹(よしむら てつき) 早稲田大学政治経済学部卒業後、メーカー系システムインテグレーターにてソフトウェア開発に従事。 その後、外資系ソフトウェアベンダでコンサルタント、IT系Webメディアで編集者を務めた後、現在はフリーライターとして活動中。



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