あの2社がとっても“ハード”なガチンコ勝負
2009/10/23
アプライアンスでユーザーにメリットを
そういえば近年ではあまり「オープンシステム」という言葉を使いませんね。「オープンソース」とは違いますよ。複数のハードウェアやソフトウェアを組み合わせて構築したシステムのことです。特定ベンダの製品に一本化するのとは対照的な概念です。
組み合わせを自由にできるということは、どれをどう組み合わせるか、その見極めが大事ということです。全体を見渡して最適な選択をするためには、ハードウェアやソフトウェアの特長を熟知していなくてはなりません。そこがエンジニアの知識や勘所を発揮するところでもあるかと思います。
そう考えると、最近よく話題になるアプライアンスは興味深い流れではないでしょうか。標準的な技術からできていればどんな組み合わせも可能なのに、あえて組み合わせを固定しています。そうすることで互いの能力をうまく引き出した最適なもの、強力なタッグが生まれています。ユーザーにとっては組み合わせに応じたチューニングがすでになされているのでメリットになりそうですね。内部にあるそれぞれの部品の値段や特長を知らなくても済むという点では、冷蔵庫や自動車を選ぶような感覚に近いのかもしれません。
IBMのベストチューニングなDWHシステム
さて今月はIBMから。IBMは9月30日、主にDWH向けのアプライアンス製品「IBM Smart Analytics System」の出荷を開始しました。ウリとなるのは「データウェアハウス構築期間を従来の15分の1にあたる“12日間”で」と、短期間で導入できるところです。
一般的にIBMによらず、データウェアハウスの構築にはさまざまなノウハウやスキルが必要となります。まずエンジニアをアサインするところから始まり(現実的にはここもネックとなるでしょう)、ハードウェアとソフトウェアの選定からチューニングまで多岐にわたります。通常では導入まで半年など、数カ月は必要とされます。
しかしこのIBM Smart Analytics Systemでは導入までを短期間ですますことができるようになっています。IBMの長年にわたる実績やノウハウを結集し、最適化した構成となっているからだそうです。またモジュール化されているため、システム要件が変化すれば柔軟に拡張できるようになっているとIBMは主張しています。
このシステムではデータサイズに応じた6つのクラスが用意されています。Tシャツのサイズを選ぶような感覚で、データ量で選べばいいそうです。
でもエンジニアなら「中身はどうなっているの?」と気になりますよね。基本的にはIBMのPシリーズにCognos BIが中核となり、データベースはDB2となっているようです。でもアプライアンスなので内部の詳細はあまり強調しないようです。
そしてハードウェアからソフトウェアまで、基本導入から性能チューニング、高可用性設計と総合テスト、初年度の保守サービスまで、コミコミで2億3000万円からです。この額はそれぞれの単価を合算したよりも安いのか? という質問に対して、日本アイ・ビー・エム ソフトウェア事業 Information Management事業部長 下垣典弘氏は「もちろんお得です」と胸を張っていました。
Exadataキラーとなるか、IBM DB2 pureScale
そしてIBMからもう1つ。IBMからはpureScaleという新たなキーワードが登場しました。「Scale」というくらいですから、規模がポイントとなりそうです。「pure」を持ち出したのは「pureXML」と合わせたのではないでしょうか。DB2が今後注力していくのは大規模化なのかもしれません。
DB2 pureScaleの特徴として掲げられているのは、制限なく拡張できること、継続的に有用であること、アプリケーションに変更を与えずにすむことであり、これによりビジネスのリスクやコストを削減しビジネスを成長させるのが狙いです。
構成としてはPowerHA pureScale技術を取り入れたIBM Power System上で稼働し、拡張性を実現しているようです。また特徴的なのが共有型ディスク(shared-disk)アーキテクチャを採用していることです。従来DB2は非共有型(shared-nothing)アプローチを取っており、OracleのRACのshared-everythingとは対照的でした。そのためpureScaleはIBM版のRACかという指摘もありますが、まだよく分かりません。これから年末にかけて詳細が徐々に明らかになりそうです。
このpureScaleがネットで話題になったのは10月7日あたりからです。Oracle Open Worldの直前です。当然この時期にぶつけてきたのはOracleのExadataに対するけん制と言えるでしょう。海外記事では露骨に「Exadata-killer」という表記もありました。
1/2 |
Index | |
あの2社がとっても“ハード”なガチンコ勝負 | |
Page 1 アプライアンスでユーザーにメリットを IBMのベストチューニングなDWHシステム Exadataキラーとなるか、IBM DB2 pureScale |
|
Page 2 オラクルも反撃、Exadata V2登場 今後のイベント |
- Oracleライセンス「SE2」検証 CPUスレッド数制限はどんな仕組みで制御されるのか (2017/7/26)
データベース管理システムの運用でトラブルが発生したらどうするか。DBサポートスペシャリストが現場目線の解決Tipsをお届けします。今回は、Oracle SE2の「CPUスレッド数制限」がどんな仕組みで行われるのかを検証します - ドメイン参加後、SQL Serverが起動しなくなった (2017/7/24)
本連載では、「SQL Server」で発生するトラブルを「どんな方法で」「どのように」解決していくか、正しい対処のためのノウハウを紹介します。今回は、「ドメイン参加後にSQL Serverが起動しなくなった場合の対処方法」を解説します - さらに高度なSQL実行計画の取得」のために理解しておくべきこと (2017/7/21)
日本オラクルのデータベーススペシャリストが「DBAがすぐ実践できる即効テクニック」を紹介する本連載。今回は「より高度なSQL実行計画を取得するために、理解しておいてほしいこと」を解説します - データベースセキュリティが「各種ガイドライン」に記載され始めている事実 (2017/7/20)
本連載では、「データベースセキュリティに必要な対策」を学び、DBMSでの「具体的な実装方法」や「Tips」などを紹介していきます。今回は、「各種ガイドラインが示すコンプライアンス要件に、データベースのセキュリティはどのように記載されているのか」を解説します
|
|