iconAIR+SQLiteで実現するGTDアプリ

  ――「Colabolo」から見るRIAのこれから

テクニカルライター
小林聡史
2009/1/6

RIA向けのフレームワークは群雄割拠

 こうした問題を受けて、AIR/Flex分野ではアドビのCairngormをはじめ、PureMVC、yui-frameworksといったRIA向けフレームワークが登場しつつありますが、まだデファクトスタンダードといえるまで広く浸透しているものがないのが現状です。

 事実、イマヒマでは、Colaboloの開発に際して独自の内部フレームワークを構築して対応したそうです。現段階では、Colaboloのような本格的なRIA開発の敷居はまだまだ低くないのが実情といえるでしょう。

図 Cairngormのアーキテクチャ

 以上、本稿ではイマヒマのコラボGTDツールColaboloを軸に、AIR+SQLiteによって生み出された新しいユーザーエクスペリエンスとそのメカニズムを紹介しました。

 Colaboloの登場は、「RIAならではのアプリケーションってどういうもの?」「ローカルDBってどう使えばいいの?」といった疑問に1つの回答を示すものといえるでしょう。

コラム:イマヒマのコラボGTDツール「Colabolo」

 イマヒマが2008年9月にベータ版の無償公開を開始した「Colabolo」は、メッセンジャー感覚でリアルタイムに課題(仕事)を共有できるコラボレーションGTD(Get Things Done)ツールです。ビジネスチームの課題管理、ヘルプデスク、ソフトウェア開発、案件管理、文書のレビューや承認などのさまざまな「チームワーク」に対応し、GTDのアプローチで「さくさくお仕事を進めるため」の基盤を提供します。Adobe AIRで実装されたメールクライアントライクなリッチUIを備えており、Inboxや「スマートフォルダ」を使い、GTDにおける「処理」や「整理」での振り分け作業をドラッグ&ドロップ操作で手早く行えるのが特徴です。

図1 ColaboloによるコラボレーションGTDの流れ

 更新内容はColaboloサーバを通じて瞬時にプロジェクトメンバーに伝わるため、メッセンジャーや電話と同じスピード感覚でメンバー間の議論が進められます。また、GTDにおける「収集」のプロセスを支援する機能として、メールと課題を相互に自動変換する「メールto課題」機能や、アップロード時間ゼロ、容量無制限でドラッグ&ドロップによるファイル共有が可能な「ファイル四次元ポケット」機能も備えています。なお、商用版では1ユーザー当たり月額3600円前後での提供を検討しているとのこと。

 イマヒマは、決済ゲートウェイ「PayMe」や企業用のナレッジワーカー向けソフトウェア「JIRA/Confluence」などのビジネスを展開するほか、過去には「iモード版AOLインスタントメッセンジャー」「Habboホテル」「ハリーポッター公式モバイルサイト」の立ち上げや運営の実績を持つ企業です。

メッセンジャー感覚なのに"接続性フリー"なエクスペリエンス

 例えば、課題一覧から課題を1つ選択し、画面左側に並ぶプロジェクトメンバー一覧から、その仕事を振りたいメンバーへ課題をドラッグ&ドロップします。すると1〜2秒後にはそのメンバーのInboxに「未読」マークが付いた課題が届きます。

 同様に、課題の状態(未対応、作業中、解決済みなど)や優先度、説明文などの変更も瞬時に全メンバーのColabolo画面上にも反映されます。Webアプリケーションベースのツールのように何度もブラウザをリロードしたり、メールクライアントとWebブラウザを行き来する必要はありません。また、各メンバーが課題のコメント欄にメッセージを書き込み合えば、IMのような井戸端会議的な気軽な議論も行えます。チーム全体のGTDがサクサク進んでいくスピード感が感じられることでしょう。

図2 コメントによるリアルタイムのコラボレーション

 こうしたIM的な振る舞いの一方で、その対極にあるデスクトップアプリケーション的ポータビリティと可用性も備えるのがColaboloの特徴といえるでしょう。

製品紹介サイトでは、オンラインドキュメントのほか、実際の挙動が分かるデモンストレーション動画なども公開されているので、動作などをその目で確認することができます。
http://www.colabolo.com/product/index.html

 IMは双方がオンライン状態でなければ役に立ちません。しかし、Colaboloの場合なら、前述のようにデータはローカル側に置かれていますから、唐突にLANケーブルが抜かれたとしても表面上はまったく変わりなく利用でき、UIのフリーズやレスポンス低下はありません。

 もちろんメンバーとのリアルタイム連携は途絶えるものの、それ以外の機能やデータはすべて継続して利用できるのです。例えばネット環境のないミーティング・ルーム、または地下鉄の車内でさえ、GTDの収集や処理、分類、評価といった作業を進められます。colaboloを、「接続性フリーなアプリケーション」と言い換えることもできるでしょう。

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 Index
AIR+SQLiteで実現するGTDアプリ
  Page1
Colaboloって?
「リアルタイムDB同期」がカギ
SQLiteプログラミングは意外と簡単!
SQLiteのパワーをいかに引き出すか
  Page2
リアルタイムDB同期のアーキテクチャ
バックグラウンドでDB同期処理を行う
いまのAIR+SQLiteがまだ出していない答え
クライアントアプリ組み込み型DB開発の負担を隠ぺいするには?
リアルタイムでのデータの相互同期をどう実現するか?
→ Page3
RIA向けのフレームワークは群雄割拠



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