書籍転載
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本コーナーは、日経BPソフトプレス発行の書籍『文法からはじめるプログラミング言語Microsoft Visual Basic入門』の中から、特にInsider.NET読者に有用だと考えられる章や個所をInsider.NET編集部が選び、同社の許可を得て転載したものです。基本的に元の文章をそのまま転載していますが、レイアウト上の理由などで文章の記述を変更している部分(例:「上の図」など)や、図の位置などを本サイトのデザインに合わせている部分が若干ありますので、ご了承ください。『文法からはじめるプログラミング言語Microsoft Visual Basic入門』の詳細は「目次情報ページ」もしくは日経BPソフトプレスのサイトをご覧ください。 |
ご注意:本記事は、書籍の内容を改変することなく、そのまま転載したものです。このため用字用語の統一ルールなどは@ITのそれとは一致しません。あらかじめご了承ください。 |
この章では、オブジェクト指向プログラミングを構成する3つの概念の最後、ポリモーフィズムを中心に、オーバーライドのしくみ、抽象クラス、インターフェイスについて説明します。
■8.1 ポリモーフィズム(多態性)
ポリモーフィズム(多態性)とは、同じメソッドを使って、暗黙的にさまざまなインスタンスの動作を切り替えるというものです。といっても、なかなか言葉だけではイメージがつかめないでしょうから、できるだけ具体的なプログラム例を紹介することにします。
まずは本題に入るまえに、基礎的な(そしてとても重要な)事柄をいくつか説明しましょう。
●8.1.1 型変換
クラスも組み込みデータ型のように、型を変換することができます。ただし継承関係のあるクラスどうしに限ります。
派生クラスは、基本クラスのメンバを継承しているので、派生クラスでは、基本クラスのメンバを保証していると考えられます。そのため、派生クラスのインスタンスは、基本クラスのインスタンスとしても利用できると見なされます。つまり、基本クラスへ型変換できるということです。この、派生クラスから基本クラスへの変換は、アップキャストと呼ばれ、暗黙的に行うことができます。
反対に、基本クラスを派生クラスに型変換することをダウンキャストと呼びます。ダウンキャストは、アップキャストのように常にできるとは限りません。そのため、明示的に行う必要があります。
基本クラスを拡張したものが派生クラスなので、当然、基本クラスをそのまま派生クラスに変換することはできません。
しかし、派生クラスをいったん基本クラスに変換して、それをまた派生クラスに戻すとしたら、どうでしょうか。
先ほどのクラス定義を使った、プログラム例を以下に示します。
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[サンプル]castclass.vb |
図8-1 型変換 |
まずMainメソッドの1行目、Song派生クラスを、Music基本クラスにアップキャストするのは問題ありません。拡張した派生クラスを、元の基本クラスとしてアクセスできます。次は、アップキャストして代入した参照変数mを、DirectCastキーワードを用いて、元のSong派生クラスにダウンキャストしています。DirectCastは、次のような構文で、式をクラスに変換します。なお、2つの引数は継承の関係にあることが必要です。
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[構文]DirectCastによるキャスト |
変数mは、元々Song派生クラスだったので、「Dim s As Song = DirectCast(m, Song)」と、Songクラスに変換しても問題はありません。
では、この基本クラスの参照変数mを、Music2派生クラスにダウンキャストするとどうなるでしょうか。元のクラスは、Song派生クラスなのですが、見かけ上、Music基本クラスへの参照変数mと、Music2派生クラスが継承の関係にあることしかわかりません。そのためコンパイルは成功します。ところがこれを実行すると、変数mの実体がMusic2派生クラスとは異なるので、エラーとなってしまいます。
このように、いったん基本クラスに変換してしまうと、元のクラスが何であったかがわからない場合があります。それでエラーとなっては困るので、事前に、ダウンキャスト可能かどうかを診断する機能が用意されています。それが、TypeOf...Is式です。
TypeOf...Is式は、その変数が指定したクラスにダウンキャストできる場合はTrueを返し、そうでないならFalseを返します。構文は、以下のとおりです。
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[構文]TypeOf...Is式 |
先ほどのサンプルのMainメソッドを書き換えて、TypeOf...Is式の動作を確かめてみましょう。
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[サンプル]castclass2.vb |
変数mは、Songクラスにダウンキャストできますが、Music2にはできないことがわかります。
TypeOf...Is式を使う以外に、単純にダウンキャストすることが目的なら、もっと手軽にエラーを回避する方法があります。それには、Visual Basic 2005からサポートされたTryCast演算子を用います。
TryCast演算子は、変換できるかどうかの判断を行うのではなく、ダウンキャストを行う演算子です。ダウンキャストできれば、その型を返し、できないならNothingを返すという動作になります。
実行時にエラーとならないので、明示的なダウンキャストを安全に実行できるのです。
構文は、次のようになります。
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[構文]TryCast演算子 |
実際のプログラムでは、以下のようになります。
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[サンプル]castclass3.vb |
●8.1.2 オブジェクト型とボックス化
Visual Basicでは、何も継承していない独立したクラスを定義しても、System名前空間にあるObjectというクラスを継承したと見なされます。
言い換えればこれは、Visual Basicではどんなクラスでも、基本クラスの元を調べていくと、System.Objectクラスにたどり着くということです。System.Objectクラスが、すべてのクラスの基本クラスになっているのです。
System.Objectクラスは、単にObjectとしても記述でき、Object型として基本データ型と同様に使用することができます。
また、Objectクラスには、すべてのクラスに共通するメンバが定義されています。通常、あまり意識する必要のないものですが、いくつかのメソッドは仮想メソッドとして宣言されています。仮想メソッドなのは、派生クラスでオーバーライドされることを見越しているからです*1。
*1) Object クラスで定義されているメソッドの中で、ToString メソッドは、最もよく使われるメソッドです。.NET Framework で定義されているクラスでは、各クラスに応じたToString メソッドがオーバーライドされています。 |
Objectがすべてのクラスの基本クラスということは、どんなクラスでもObjectにアップキャストすることができる、ということでもあります。
さらに、参照型であるクラスだけでなく、値型であっても、Objectに変換することができます。このように、値型をObjectに変換することをボックス化(ボクシング)と呼びます。逆に、ボックス化されたObjectを値型に戻すことを、ボックス化解除(アンボクシング)と呼びます。
ボックス化の概要は、次の図のようになります。数値型変数aをボックス化すると、一時的にメモリ領域が確保され、そこにaの値5がコピーされます。Object型変数には、その領域のアドレスが代入されるというわけです。
図8-2 ボックス化 |
では、実際のプログラム例を見てみましょう。
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[サンプル]box.vb |
integer型変数aをボックス化して、その後、DirectCastを使ってボックス化解除しています。変数bを表示してみると、元のaの値と同じ5になっています。
DirectCastを用いた、Objectから値型へのボックス化解除は、クラスと同様、元の値型が異なっていれば、実行時にエラーが発生します。その場合、前述のTypeOf...Is式で事前に判断することができます。
なお、TryCastキーワードは、参照型にしか使えないので、この場合は使用不可です。
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1.ポリモーフィズムの前提知識 | ||
2.ポリモーフィズムを実現するしくみ | ||
「文法からはじめるプログラミング言語Microsoft Visual Basic入門」 |
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