.NET TIPS [ASP.NET AJAX]AJAX対応ページで[戻る]ボタンを有効にするには?(サーバサイド編)[3.5、C#、VB]山田 祥寛2009/06/18 |
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Ajax機能を利用したページを構築しているときに、決定的に困ることが1つある。それは、Ajax機能によって変更されたページの状態を維持できない点だ。
まずは、その具体的な例を見てみよう。以下の例は、おなじみUpdatePanelコントロールを使ったごく基本的な「Hello, Worldアプリケーション」である。テキストボックスに適当な名前を入力して[登録]ボタンをクリックすると、ページの下部に「こんにちは、●○さん!」というメッセージが表示される。普通のページと異なる点は、この際に更新されるのが、ラベルの部分だけであって、ページ全体がリフレッシュされるわけでは「ない」という点だ。
[名前]を入力して[登録]ボタンをクリック |
Ajax式のおなじみのHello, Worldアプリケーション |
ポストバックの前後で現在時刻の表示が変化していないことから、ページの一部だけがリフレッシュされていることが確認できる。 |
このようなサンプルは、以下のような手順で作成できる。なお、ページ上部の時刻表示は、UpdatePanelコントロール以外の部分がリフレッシュされて「いない」ことを確認するためのものである。
History.aspxのフォーム・レイアウト | ||||||||||||||||||
以下のコントロールを配置。TextBox、Button、LabelコントロールはUpdatePanelコントロールの配下に配置する。 | ||||||||||||||||||
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コントロール | プロパティ | 設定値 |
ScriptManager(manager) | − | − |
Label(lblTime) | Text | △(ブランク) |
UpdatePanel(upanel) | − | − |
TextBox(txtName) | − | − |
Button(btnSubmit) | Text | 登録 |
Label(lblResult) | Text | △(ブランク) |
History.aspxのプロパティ設定 |
あとは、ページ・ロード時に時刻を、ボタン・クリック時にメッセージを、それぞれ表示するためのイベント・ハンドラを追加するだけだ。
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ページ・ロード時、[登録]ボタンのクリック時に実行されるイベント・ハンドラ(History.aspx)(上:C#、下:VB) |
この状態で、ページを実行してみよう。冒頭の画面のように、「山田」「掛谷」のような名前を入力すると、それぞれ「こんにちは、山田さん!」「こんにちは、掛谷さん!」のようなメッセージが表示されることが確認できる。
しかし、ここでブラウザの[戻る][進む]ボタンを確認してみよう。普通のアプリケーションであれば、ボタンをクリックしたところで前のページに戻るために[戻る]ボタンがアクティブになっているはずだ。しかし、実際には[戻る]ボタンは有効になっていない。Ajax機能で実行された操作については、ブラウザの履歴には残らないからだ。つまり、いくつかの操作を行った後、ブラウザを1つ前の元の状態に戻したいと思った場合にも、Ajaxを使ったページではそれができないのだ。
ボタンをクリックした後も、ブラウザの[戻る]ボタンは有効にならない |
●ScriptManagerコントロールの履歴機能
しかし、ASP.NET 3.5のScriptManagerコントロールは、この点、賢く改良されている。Ajax操作の特定のポイントをブラウザ履歴として記録するための仕組みを、標準で提供しているのだ。この履歴機能を利用することで、Ajaxアプリケーションでも最低限のコーディングでブラウザ履歴を有効にすることができる。
履歴機能を有効にするための具体的な方法は、次のとおり。
1. 履歴機能を有効にする
2. 履歴に残すポイント(履歴ポイント)を登録する
3. 履歴情報に基づいて、ページを復元する
それでは、ここからは具体的な手順を見ていく。
1. 履歴機能を有効にする
ScriptManagerコントロールの履歴機能を有効にするには、プロパティ・ウィンドウからScriptManager.EnableHistoryプロパティをTrueに設定するだけでよい。EnableHistoryプロパティのデフォルト値はFalseで、デフォルトの状態では履歴機能は有効化されていないので注意されたい。
2. 履歴に残すポイント(履歴ポイント)を登録する
次に、[登録]ボタンをクリックしたタイミングで、ページの復元に必要な情報を履歴ポイントとして残しておく必要がある。これには、先ほど作成したClickイベント・ハンドラに、以下のようなコードを追加すればよい(追加部分は太字)。
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[登録]ボタンをクリックしたときに実行されるイベント・ハンドラ(History.aspx)(上:C#、下:VB) |
AddHistoryPointメソッドの引数には、登録すべき情報のキー名、値、ページ・タイトルを指定する(最後のページ・タイトルは省略可)。ここでは、name、msgというキー名で、それぞれ「山田」「こんにちは、山田さん!」のような値を追加し、ページ・タイトルとして「こんにちは、山田さん!」を登録しているわけだ。
まだサンプルは未完成であるが、ここでいったんサンプルを動作させてみよう。先ほどと同じく名前を入力して、[登録]ボタンをクリックしてみよう。
すると、どうだろう。今度はブラウザの[戻る]ボタンが有効になっていること、そして、アドレスの末尾に「#&&/wEXAgUDbXNnBSHjgZ……」のような情報が追加されていることが確認できるはずだ。
履歴ポイントを追加した場合の挙動 |
[戻る]ボタンが有効となり、かつ、アドレス欄の末尾に文字列が追加されている。 |
このように、履歴ポイントを追加したことでブラウザ履歴が追加されるわけだ。ちなみに、アドレス末尾の暗号のような文字列は、先ほどAddHistoryPointメソッドで追加されたキー名と値を、ViewStateと同じ方法でハッシュ化したものである。このように、ScriptManagerコントロールでは、ページの状態を後から復元できるように、アドレスの一部として保持している*1。
*1 このような事情から、履歴ポイントとして機密情報を登録するのは避けるべきである。 |
ちなみに、キー名/値をハッシュ化せずに、より見やすい形で保存したいというケースもあるかもしれない。その場合には、EnableSecureHistoryStateプロパティをFalseに設定すればよい(デフォルトはTrue)。その場合、履歴ポイントの情報はハッシュ処理されずに、以下のように、そのままの形でアドレスに追加されることになる(マルチバイト文字が含まれている場合、エンコード処理は行われる)。
http://localhost:4468/TipsGrid/Toolkit/ScriptManager/history.aspx#&&name=Yamada&msg=〜
3. 履歴情報に基づいて、ページを復元する
もっとも、2までの手順では、まだ履歴ポイントを追加しただけであるので、[戻る]ボタンを押しても、ページは前の状態には戻らない。ここでもう1つ、ScriptManagerコントロールのNavigateイベントに対応するイベント・ハンドラを追加しておく必要があるのだ。Navigateイベントとは、ブラウザ上で[戻る][進む]などのボタンが押されたときに発生するイベントである。
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[戻る][進む]ボタンをクリックしたときに実行されるイベント・ハンドラ(History.aspx)(上:C#、下:VB) |
履歴ポイントに登録した情報は、Navigateイベント・ハンドラの第2引数として渡されるHistoryEventArgsオブジェクト(System.Web.UI名前空間)から、そのStateプロパティを参照することで取得できる。
ここでは、履歴ポイントのnameキーが空でない場合に、あらかじめ退避しておいたname/msgキーの値をラベル、テキストボックスにセットし直しているわけだ。これによって、[戻る][進む]ボタンをクリックしたタイミングで、元の状態を復元できる。
この例を見ても分かるように、ScriptManagerコントロールの履歴機能は、無条件に[戻る][進む]機能を有効にするというものではなく、情報の登録と復元そのものはアプリケーション開発者が自分でコーディングしなければならない、という点に注意してほしい。
以上を理解できたら、もう一度、サンプルを実行してみよう。名前を入力し、[登録]ボタンをクリックすると、ブラウザ履歴が追加されること、[戻る]ボタンをクリックすると、ページが元の状態に戻ることを確認してほしい。
[戻る]ボタンをクリック |
サンプルの最終的な結果 |
[戻る][進む]ボタンによって、ページの状態が操作前(後)の状態に変化する。 |
なお、ブラウザのアドレスをコピーして、別に立ち上げたブラウザに貼り付けてみよう。これによっても、そのときのページの状態が復元されることが確認できるはずだ。
利用可能バージョン:.NET Framework 3.5 カテゴリ:Webフォーム 処理対象:ASP.NET AJAX 使用ライブラリ:ScriptManagerコントロール 使用ライブラリ:UpdatePanelコントロール |
「.NET TIPS」 |
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