Insider's Eye

.NET版Java言語「Visual J# .NET」オーバービュー(1)


デジタルアドバンテージ 遠藤孝信
2001/10/16

 10月10日、米Microsoftは、Visual Studio .NETで利用可能なJava言語「Visual J# .NET」を発表した(米国で発表されたニュース・リリースの参考訳、ダウンロードはMSDN Downloadsから可能)。.NET Frameworkによるアプリケーション開発のメリットの1つは、必要に応じてさまざまなプログラミング言語を選択できることだ。MicrosoftがサポートするC#やC++、Visual Basicなどのほかにも、PascalやCOBOL、FORTRANなど、サードパーティを含めると、すでに20以上の.NET Framework対応言語が発表されている(.NET Frameworkでサポートが予定される言語処理系の詳細については別稿の「.NET Framework入門/5.Common Language Runtime(3)」を参照)。

 以前Microsoftは、Visual J++という独自のJava開発環境を販売していた。しかしこのMicrosoftのJavaでは、JavaコードからWin32インターフェイスを直接参照可能にしたJ/Directと呼ばれる機能などが追加されており、Sun Microsystemsがこれを不当だと提訴、Microsoftは裁判に破れ、自社製品に含まれたJavaコードをすべて取り除いたという過去の経緯がある。Microsoftは明言していないものの、こうした経緯を踏まえ、Javaに代わる言語処理系として登場したのがC#だったはずだ。

 ことの真相はともかく、これでJava言語も、正式に.NET Frameworkの対応言語の1つとなった。これにより、Java開発者も、Visual Studioと.NET Frameworkを用いたWebアプリケーション/XML Webサービスの開発が可能となる。

 2001年1月25日にMicrosoftは、Java開発者の.NETへの移行を促す「JUMP to .NET(Java User Migration Path to Microsoft .NET)」と呼ばれる戦略を発表していたが、(米国での「JUMP to .NET」のニュース・リリース)Visual J# .NETはこの戦略の具体的な製品の第一弾となる。JUMP to .NETでは、Javaアプリケーションを.NET環境へ移行するためのツールとして、次の3つのツールを発表していた。

  1. Javaのソース・コードをC#のソース・コードに変換するコンバータ(言語の文法に加え、ライブラリの呼び出しをも変換する)
  2. Javaのソース・コードを.NETのバイナリ(MSIL)にコンパイルするコンパイラ
  3. JavaのバイナリであるバイトコードをMSILに変換するコンバータ

 このうち今回発表されたVisual J# .NET Beta 1(以下J#)では、2.と3.がサポートされている。

 またJ#は、統合開発環境であるVisual Studio .NETに完全に統合されており、C#やVisual Basic .NETと同様なビジュアルなプログラム開発が可能になっている。

 これらに加えJ#では、Microsoftが開発した前出のVisual J++ 6.0のプロジェクトを自動的にVisual Studio .NETのフォーマットにアップグレードする機能も持っている。

 本稿では、インターネットで公開されたJ#を実際にインストールし、Visual Studio .NETによるJ#でのアプリケーション作成や、ツールによるJavaプログラムのコンパイル/変換を試してみる。

 なお、今回テストしたのは、今回公開されたJ# ベータ1である。Microsoftの発表によれば、最終版のリリース予定は2002年の前半とされている。

Visual J# .NETのインストール

 今回発表されたJ# ベータ 1は、英語版のVisual Studio .NET ベータ2(以下VS .NET)でのみインストール可能となっている。つまり、日本語版のVS .NETベータ 2ではインストールできない。日本語版のVS .NETがインストールされた環境でインストールしようとすると、「英語版以外の環境でインストールする場合には、VS .NETでの使用言語をEnglishにしてからインストールせよ」との警告が表示されるが、日本語版VS .NETでは、使用言語を日本語以外に設定することはできないようである。また、.NET Framework SDK(日本語版)のみをインストールした環境でも、J#はインストールできなかった。

 そこで今回は、Windows XP 英語版(ビルド番号「2600」)に英語版のVS .NETをインストールし、その環境でJ#を試している。

Visual J# .NET Beta 1のインストール画面
残念ながら今回公開されたJ#ベータ1は、英語版のVisual Studio .NETベータ2でのみインストール可能となっている。

 今回テストしたのは完全な英語環境なので当然ではあるが、英語版のVS .NETでは、J#のインストールは問題なく進む。インストール後にVS .NETを起動すると、スプラッシュ画面にはVisual Basic .NETやC#に並んで、J#のアイコンが表示される。

Visual Studio .NET起動時に表示されるスプラッシュ画面
Visual Basic .NETやC#に並んで、Visual J# .NETのアイコンが表示されるようになった。
 
関連記事(Insider.NET内)
特集
.NET Framework入門/5.Common Language Runtime(3)
 
関連リンク
米国で発表されたニュース・リリースの参考訳
MSDN Downloads
米国での「JUMP to .NET」のニュース・リリース
 
 

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