Insider's Eye
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デジタルアドバンテージ 2003/11/26 |
マイクロソフトは、全世界規模のプログラミング・コンテスト「Imagine Cup 2004」の開催を発表した。このコンテストは学生を対象とするもので、同社の.NETテクノロジなどをベースとするプログラム開発を競う。全世界的な背景としては、UNIXやLinuxを身近に感じがちな学生に対し、マイクロソフト・テクノロジにより親しんでもらうことがあるが、日本のマイクロソフトは、インドや中国のプログラマーに負けない日本人プログラマーの育成に向けたモチベーションの1つにしたいと考えている。
第1回となるImagine Cup 2003の参加者たち |
主となる「ソフトウェア・デザイン」部門に加え、計4部門を創設
Imagine Cupは、本年(2003年)に第1回が開催された学生向けのプログラミング・コンテストで、この第2回の世界大会が2004年6月にブラジルで開催される予定だ。第1回 Imagine Cup 2003については日本国内では積極的な募集を行わなかったが、この第2回からは、日本国内で予選を実施し、その優勝チームに世界大会への参加資格を与えるとともに、マイクロソフトはチームの旅費などを支援する。
Imagine Cup 2004には以下の4つの部門がある。
部門 | 内容 |
ソフトウェア・デザイン | 与えられたテーマ、条件を満たすアプリケーションを開発する。Imagine Cup 2004のテーマは「モバイル&学習機能」 |
レンダリング | Visual Studio .NETとDirectX9.0を使用した静止画/アニメーションを制作する。詳細は2004年1月1日に発表予定 |
ショートフィルム | Windows Media Playerで再生可能な動画を制作する。詳細は2004年1月1日に発表予定 |
アルゴリズム | 与えられた問題をいかに短時間で効率よく解くかを競う。詳細は2004年1月1日に発表予定 |
このうち中心となるのは「ソフトウェア・デザイン」部門で、国内予選が開催されるのもこの部門のみである。
ほかの部門については、インターネットに用意されるサーバなどに参加者が直接登録し、世界のプログラマー(デザイナー)と優劣を競うことになる。アルゴリズム部門についても同様で、サーバは24時間運用され、時差に影響されずに世界からだれでも自由に参加できるようにされる。マイクロソフトによれば、各部門とも日本語のコンテスト解説ページを用意し、日本語で申し込みを受け付けられるようにする予定とのことだ。ただし「ショートフィルム」部門の作品については、英語字幕の挿入が必須だという。これらの部門に関する詳細はまだ明らかにされていない。いずれも詳しくは2004年1月1日にマイクロソフトから公表される予定である。
国内予選の作品受け付けは2004年1月〜2月末、テーマは「モバイル&学習機能」
国内予選は1次、2次の2段階がある。まずは2004年1月1日〜2月29日まで作品の応募を受け付け、書類選考による1次予選を実施する。1次予選の上位チームが3月に開催される最終予選に参加し、ここで優勝者と3位までの入賞者が決定される。このうち優勝者には賞金50万円と世界大会への参加権が与えられ、以下2位には25万円、3位には10万円の賞金がそれぞれ贈られる。
参加資格は国内の学校に通う中学生以上の学生で、チームは1〜4名まで。つまり個人での参加も可能である。最近では社会人でありながら大学で学ぶ、いわゆる社会人学生も少なくないと思われるが、文部科学省によって認可された学校の学生証を持つ人ならだれでも参加できる。
前述したとおり、Imagine Cup 2004の「ソフトウェア・デザイン」部門のテーマは「モバイル&学習機能」で、具体的には以下の条件をすべて満たす必要がある。
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学習機能を持つコンポーネントを1つ以上含むこと
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.NET Frameworkを使用したWebサービスを作成し、独立して稼働するWebサーバ上で公開すること(複数のWebサービスの作成も可)
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上記Webサービスを利用するモバイル・クライアント・アプリケーションを含むこと
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データ設計とストレージの要素を含むこと
つまり一言でいえば、サーバ・サイドのWebサービスと連携するモバイル・クライアントで、学習機能を持つシステムということだ。
モバイル・デバイスとは持ち運んで使用する機器のことで、具体的にはPocket PCやSmart Phone(プログラム実行能力を持つ携帯電話)、PDA、Tablet PCに加え、一般的なノートPCも含まれる。あるいは、デスクトップPC上のモバイル・デバイス・エミュレータを使用することも可能である。開発にVisual Studio .NETを使っているのであれば、アプリケーションのモバイル・デバイス対応は比較的容易に行える。
また、学習機能とは、ユーザーがアプリケーションを使っていくほどに、処理をより効率よく、あるいはより正確に行えるようになっていく機能である。例えば、頻繁に使用されない項目は表示しないという機能を持つOfficeアプリケーションのメニューはその1つといえるだろう。
世界にはばたくソフトウェア・エンジニアを育成せよ
歴史的な経緯から、大学などの教育機関においては、UNIXやその流れを汲むプラットフォーム(Linuxなど)が広く利用されている。これに対し、主に商業利用を優先してきたマイクロソフト・プラットフォームの利用はあまり一般的とはいえない。アプリケーション連携を推進する.NETテクノロジの普及を目指し、ここ数年来マイクロソフトは、未来のプログラマーの卵たちである学生に対して、マイクロソフト・テクノロジに早期から触れてもらうべく努力してきた。その1つがMSDNアカデミック・アライアンスと呼ばれる新しいメンバーシップ・プログラムである。この制度を利用すると、極めて低価格(年間11万8000円)で学科や研究室の教員や学生全員がマイクロソフト製品を自由に使えるようになる(MSDNアカデミック・アライアンスの詳細)。Imagine Cupも、こうしたマイクロソフトのアカデミック向け世界戦略の一環と考えてよいだろう。
しかし日本のマイクロソフトには、こうした世界戦略に乗るだけでなく、日本独自の狙いもある。それはインドや中国のソフトウェア技術者の台頭に一石を投じることだ。これらの国々に優秀な技術者が多いのは知られるところだが、特にIT技術者は収入も多く人気が高い。またその一方で、安い労働力を利用できることから、日本国内の開発案件がこうした国々に流出し、国内ソフトウェア・エンジニアの空洞化が進んでいるといわれる。このまま放置すれば、日本国内では優れたソフトウェア技術者が育たないのでは、という思いがマイクロソフトにはある。世界にはばたくソフトウェア技術者を日本国内から育成したい。そのためのモチベーションとしてコンテストを活用したい。今回から国内予選を開催し、日本のマイクロソフトがImagine Cupに本腰を入れる背景には、こうした思惑があるようだ。
マイクロソフトの思惑はともかく、学生にとっては自分の実力を試すよい機会だろう。賞金とブラジル旅行獲得を目指してチャレンジしてみてはどうだろうか。
Imagine Cupコンテスト関連情報 | ||
Imagine Cup 2004日本国内予選の詳細 | ||
Imagine Cup公式サイト(米国) | ||
技術情報 | ||
GotDotNet Japan Student(日本) | ||
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