Insider's Eye

.NET Framework/Visual Studio年表

―.NETのフレームワークおよび開発環境/言語のバージョンをまとめる―

デジタルアドバンテージ 遠藤 孝信
2007/09/07


 2002年4月に.NET Frameworkの最初のバージョン「1.0」が公開されてからすでに5年が経過し、来年出荷開始予定のVisual Studio 2008に含まれる.NET Frameworkのバージョンは「3.5」となる。

 開発環境や開発言語が便利になり、アプリケーションの開発基盤であるフレームワークがどんどん充実していくのは開発者にとっては喜ばしいことである。しかし、常に最新版のフレームワークが利用できるとも限らない開発の現場などでは、頻繁なバージョンアップや複数バージョンの存在は(実際にはそうでないにしても)分かりにくいもの、煩わしいものと認識されかねない。

 そこで本稿では、.NET Frameworkを中心に、Visual Studio(以下、「VS」と略す)や開発言語(C#およびVB)と併せて、これらのバージョンを年ごとの一覧にまとめてみた。なお、VS 2008/.NET Framework 3.5については本稿執筆時点ではまだベータ版(ベータ2)の段階だが、ここで記しているような主要な機能はほぼ確定していると考えて問題ないだろう。

  ■製品のバージョン
   ・製品の特徴

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■Visual Studio .NET 2002/.NET Framework 1.0 (4月)

  • VS.NET 2002は.NETに対応した初の統合開発環境
  • 発売当初の製品名は「Visual Studio .NET」

■C# 1.0/Visual Basic .NET(7.0)

  • C#はマイクロソフトの新しいオブジェクト指向言語
  • Visual Basicもオブジェクト指向言語に

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■Visual Studio .NET 2003/.NET Framework 1.1 (5月)
■C# 1.1/Visual Basic .NET(7.1)

  • すべてマイナー・バージョンアップ

Windows Server 2003

  • .NET Framework 1.1が標準搭載

 最初のバージョンから約1年後に公開されたVS.NET 2003/.NET Framework 1.1は、多くのバグ・フィックスを中心とするマイナー・バージョンアップ版である。これはWindows Server 2003に標準搭載されていたこともあり、次のVS 2005/.NET Framework 2.0が登場するまでの約2年半の間に、特にWebアプリケーション構築の分野において多くの企業で広く採用されることになる。

 2005年(といっても年末だが)に登場したVS 2005/.NET Framework 2.0では、フレームワーク初のメジャー・バージョンアップが行われた。.NET Frameworkの主要コンポーネントであるASP.NET、ADO.NET、Windowsフォーム、そしてC#にも、すべて「〜 2.0」というバージョン番号が付けられ、それぞれ大きく機能拡張されている。

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■Visual Studio 2005/.NET Framework 2.0 (12月)

  • ClickOnceアプリケーションの作成
  • ジェネリック・クラスの導入
  • ASP.NET 2.0、ADO.NET 2.0、Windowsフォーム 2.0
  • リファクタリング機能/コード・スニペット
  • 無償版のExpress Edition(C#、VB、C++)

■C# 2.0/Visual Basic 2005(8.0)

  • ジェネリック対応

Visual Studio 2005 Team System
SQL Server 2005

 言語面では開発者待望のジェネリックが導入され、コーディングにおける生産性はここで格段に飛躍している。

 続く.NET Framework 3.0では、バージョン番号は2.0から3.0へとさらにメジャー・バージョンアップしているものの、その内容は.NET Framework 2.0と新しい4つのコンポーネントで構成されている点に注意が必要だ。変則的で少々分かりにくいが、(好意的に見れば)これは.NET Framework 2.0がすでに十分安定していたととらえることもできる。

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■.NET Framework 3.0 (11月)

  • コア部分は.NET Framework 2.0そのまま
  • WPF(Windows Presentation Foundation)、WCF(Windows Communication Foundation)、WF(Windows Workflow Foundation)、CardSpaceの追加

Windows Vista

  • .NET Framework 3.0が標準搭載

 .NET Framework 3.0の最大の特徴はやはりWPFだろう。WPFはこれまで非常に長い間、大きな変化のなかったWindowsアプリケーションのGUIを革新できる力を持ったコンポーネントである。

 ただしこの段階では、.NET Framework 3.0で追加されたWPFを含む新しいコンポーネントに対応したVSは提供されていない。それが可能になるのはVS 2008からである。

 2007年には、単体の追加モジュールである「ASP.NET AJAX」の製品版が公開された。これによりASP.NETのWebアプリケーションで非常に容易にAjax技術が利用可能となった。

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ASP.NET AJAX 1.0(追加モジュール)

  • AJAX対応のWebアプリケーションの開発が容易に

Expression Blend

 WPFを利用したWindowsアプリケーションのGUI設計には、VSよりも一足先にデザイナー向けツールであるExpression Blendが対応している。ちなみに、Expression BlendではWPFの機能を利用したアニメーションの作成が可能であるが、このアニメーション作成機能はVS 2008にもない機能である。

 そして、.NET Framework 3.0の新機能に対応したVSが、2008年に発売予定のVS 2008である。VS 2008では、WPFアプリケーションのGUI設計や、WFで使用されるワークフローのGUIによる設計などが可能になっている。

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■Visual Studio 2008/.NET Framework 3.5 (前半予定)

  • 開発コード名「Orcas」
  • WPFのGUI設計が可能
  • JavaScriptのデバッグ機能およびIntelliSense対応
  • ASP.NET AJAX標準搭載
  • 開発対象となる.NET Frameworkを2.0、3.0、3.5から選択可能

■C# 3.0/Visual Basic 2008(9.0)

  • LINQ対応(コード中にクエリ文が記述可能)

Visual Studio Team System 2008(前半予定)
SQL Server 2008(前半予定)
Windows Server 2008(前半予定)

 VS 2008とともに出荷される.NET Frameworkは「3.5」であるが、この新たな“+0.5”の部分は主に、.NET Frameworkに取り込まれたASP.NET AJAXと、注目の新機能「LINQ」関連のライブラリが相当する。

 LINQとは簡単にいうと、データベースの操作をC#やVBのコードで直接記述できる機能である(同じ構文でXMLデータやデータセットも操作可能)。この機能を実現するためにC#やVBには多くの新しい文法や機能が追加され、それをサポートするライブラリが.NET Framework 3.5には追加されている。

 .NET Framework 3.5のLINQでは基本的に参照系の操作しか行えず、現場での本格利用については次のバージョンを待つことになるかもしれないが、いずれLINQは.NETアプリケーションにおけるデータアクセス手法を大きく変えてしまうと思われる。

 以上、非常に駆け足であったが.NET Frameworkのこれまでのバージョン遍歴をまとめてみた。.NET Framework 2.0以降は単純なバージョンアップではないが、VS 2008では開発対象となる.NET Frameworkのバージョンを2.0、3.0、3.5から選択可能であることからも分かるように、.NET Frameworkに関しては必ずしも最新バージョンでシステムを構築する必要はないということだ。

 もしWPFやLINQといった最新のテクノロジが必要なければ、現行の.NET Framework 2.0で開発を続けても、当面それが古いシステムとなることはないだろう。そして開発者はVS 2008さえ入手すれば、現行のシステムに対応しつつ、最新のテクノロジを試すことができる。 End of Article

更新履歴
【2007/09/10日】本文中の「2008年」の欄に以下のような誤りがありました。お詫びして訂正させていただきます。Visual Studio Team System 2008は、Visual Studio 2008/.NET Framework 3.5と同時期に提供開始される予定です。

Visual Studio Team System 2008(提供時期未定)
Visual Studio Team System 2008(前半予定


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