Insider's Eye.NET Framework/Visual Studio年表―.NETのフレームワークおよび開発環境/言語のバージョンをまとめる― デジタルアドバンテージ 遠藤 孝信 |
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2002年4月に.NET Frameworkの最初のバージョン「1.0」が公開されてからすでに5年が経過し、来年出荷開始予定のVisual Studio 2008に含まれる.NET Frameworkのバージョンは「3.5」となる。
開発環境や開発言語が便利になり、アプリケーションの開発基盤であるフレームワークがどんどん充実していくのは開発者にとっては喜ばしいことである。しかし、常に最新版のフレームワークが利用できるとも限らない開発の現場などでは、頻繁なバージョンアップや複数バージョンの存在は(実際にはそうでないにしても)分かりにくいもの、煩わしいものと認識されかねない。
そこで本稿では、.NET Frameworkを中心に、Visual Studio(以下、「VS」と略す)や開発言語(C#およびVB)と併せて、これらのバージョンを年ごとの一覧にまとめてみた。なお、VS 2008/.NET Framework 3.5については本稿執筆時点ではまだベータ版(ベータ2)の段階だが、ここで記しているような主要な機能はほぼ確定していると考えて問題ないだろう。
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最初のバージョンから約1年後に公開されたVS.NET 2003/.NET Framework 1.1は、多くのバグ・フィックスを中心とするマイナー・バージョンアップ版である。これはWindows Server 2003に標準搭載されていたこともあり、次のVS 2005/.NET Framework 2.0が登場するまでの約2年半の間に、特にWebアプリケーション構築の分野において多くの企業で広く採用されることになる。
2005年(といっても年末だが)に登場したVS 2005/.NET Framework 2.0では、フレームワーク初のメジャー・バージョンアップが行われた。.NET Frameworkの主要コンポーネントであるASP.NET、ADO.NET、Windowsフォーム、そしてC#にも、すべて「〜 2.0」というバージョン番号が付けられ、それぞれ大きく機能拡張されている。
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言語面では開発者待望のジェネリックが導入され、コーディングにおける生産性はここで格段に飛躍している。
続く.NET Framework 3.0では、バージョン番号は2.0から3.0へとさらにメジャー・バージョンアップしているものの、その内容は.NET Framework 2.0と新しい4つのコンポーネントで構成されている点に注意が必要だ。変則的で少々分かりにくいが、(好意的に見れば)これは.NET Framework 2.0がすでに十分安定していたととらえることもできる。
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.NET Framework 3.0の最大の特徴はやはりWPFだろう。WPFはこれまで非常に長い間、大きな変化のなかったWindowsアプリケーションのGUIを革新できる力を持ったコンポーネントである。
ただしこの段階では、.NET Framework 3.0で追加されたWPFを含む新しいコンポーネントに対応したVSは提供されていない。それが可能になるのはVS 2008からである。
2007年には、単体の追加モジュールである「ASP.NET AJAX」の製品版が公開された。これによりASP.NETのWebアプリケーションで非常に容易にAjax技術が利用可能となった。
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WPFを利用したWindowsアプリケーションのGUI設計には、VSよりも一足先にデザイナー向けツールであるExpression Blendが対応している。ちなみに、Expression BlendではWPFの機能を利用したアニメーションの作成が可能であるが、このアニメーション作成機能はVS 2008にもない機能である。
そして、.NET Framework 3.0の新機能に対応したVSが、2008年に発売予定のVS 2008である。VS 2008では、WPFアプリケーションのGUI設計や、WFで使用されるワークフローのGUIによる設計などが可能になっている。
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VS 2008とともに出荷される.NET Frameworkは「3.5」であるが、この新たな“+0.5”の部分は主に、.NET Frameworkに取り込まれたASP.NET AJAXと、注目の新機能「LINQ」関連のライブラリが相当する。
LINQとは簡単にいうと、データベースの操作をC#やVBのコードで直接記述できる機能である(同じ構文でXMLデータやデータセットも操作可能)。この機能を実現するためにC#やVBには多くの新しい文法や機能が追加され、それをサポートするライブラリが.NET Framework 3.5には追加されている。
.NET Framework 3.5のLINQでは基本的に参照系の操作しか行えず、現場での本格利用については次のバージョンを待つことになるかもしれないが、いずれLINQは.NETアプリケーションにおけるデータアクセス手法を大きく変えてしまうと思われる。
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以上、非常に駆け足であったが.NET Frameworkのこれまでのバージョン遍歴をまとめてみた。.NET Framework 2.0以降は単純なバージョンアップではないが、VS 2008では開発対象となる.NET Frameworkのバージョンを2.0、3.0、3.5から選択可能であることからも分かるように、.NET Frameworkに関しては必ずしも最新バージョンでシステムを構築する必要はないということだ。
もしWPFやLINQといった最新のテクノロジが必要なければ、現行の.NET Framework 2.0で開発を続けても、当面それが古いシステムとなることはないだろう。そして開発者はVS 2008さえ入手すれば、現行のシステムに対応しつつ、最新のテクノロジを試すことができる。
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