連載:Team Foundation Server 2010入門 第1回 Team Foundation Server 2010を導入しよう WINGSプロジェクト りばてぃ(監修:山田 祥寛)2010/05/25 |
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去る4月21日、ついに新しいVisual Studio 2010(以下、VS 2010)シリーズがリリースされた。パッケージ販売こそまだ先ではあるが、MSDNサブスクライバー向けの提供や評価版のダウンロードなどは始まっており、すでに利用されている読者諸氏もいることだろう。
VS 2010や同時にリリースされた.NET Framework 4に、どのような機能が用意されているかは、すでに解説記事として「特集:次期Visual Studio 2010と.NET Framework 4.0の新機能」や「ScottGu氏のブログより」などがあるので、そちらをご覧いただきたい。
本稿では、VS 2010と同時にリリースされたTeam Foundation Server 2010(以下、TFS 2010)とは何か、そして実際の開発現場でどのように利用していくことができるのかを、以下の要領で何回かにわたって解説していくことにする。
- TFS 2010の概要とインストール(本稿)
- ソース・コード管理の実践
- 自動ビルドで品質確保
- 作業項目トラッキングですべてを関連付け
- ポータルとレポートでいろいろなデータの確認
- 付録 〜VSSからの移行〜
■Team Foundation Server 2010概要
まずは、マイクロソフトのMSDNライブラリを見ていただきたい。リンク先をご覧いただくと、「Visual Studio Application Lifecycle Management」というタイトルの下にさまざまな項目が並んでいることが分かる。ここに表示されている内容は、特にVisual Studio 2010 Professionalよりも上位のエディションとTFSを使うことで、いかにしてALM(Application Lifecycle Management:アプリケーション開発ライフサイクルの管理)を実現できるかということが紹介されている。このように、TFSはALMの支援が主要なコンセプトとなっている。
ALMの実践を特に意識していなくても、アプリケーション開発の際には、アプリケーションの設計/開発/テスト/配置を行うと同時に、これら作業の計画の立案と進ちょく管理を何らかの形で行っているはずだ(つまり、おのずとALMを実践しているのが現実だ)。
このうち、主に計画の立案とその進ちょくを追跡するための機能がTFSに用意されている。また、進ちょくの追跡は、アプリケーションの開発と密にリンクする必要があるため、これを実現するための機能も同時に用意されている。
[コラム]MSDNライブラリの表示方法を従来どおりにするには? |
MSDNライブラリを開くと、表示方法が(以前のものから)随分と変更されてしまってはいなかっただろうか(2010年から新しい表示スタイルに変更された)。新しい表示方法が見づらいと感じる場合には、ページ右上にある[基本設定]のリンク先で[クラシック]を選択すれば、従来のように左側にツリーメニューが表示される形式へと戻せる。 |
●TFS 2010の全体像
先のALM支援のコンセプトに基づいて、TFS 2010には大小さまざまな機能が用意されている。大別すると、表1のとおりだ。
機能名 | 概要 |
バージョン管理 | アプリケーションのソース・コードだけにとどまらず、ドキュメントなど、各種ファイルのバージョン管理を行うための機能。基本的にはVSS(Visual SourceSafe)の後継 |
自動ビルド | バージョン管理に登録されているソース・コードを利用して、バックエンドで定期的なビルドとビルドの検証を行うための機能 |
プロジェクト管理 | プロジェクトで発生する作業、バグ、テスト・ケース、要求事項などを管理し、それぞれの項目の状態変化を追跡するための機能 |
レポート | バージョン管理や自動ビルド、プロジェクト管理などで蓄積されたデータを分析し、閲覧するための機能 |
テスト管理 | テスト・ケースとテスト結果の管理に加え、仮想化技術を利用したテスト環境の管理を行うための機能 |
表1 TFS 2010の主要な機能 |
テスト・ケースとテスト結果の管理を行うには、TFS 2010のほかにVisual Studio 2010 Ultimate(またはTest Professional)に含まれる「Test Manager」というツールが必要となる。
また、テスト環境の管理には、Windows Server 2008以降に用意されたHyper-Vのほか、System Center Virtual Machine Managerが必要だ。これらについては少々ややこしいので、この連載では割愛し、TFS 2010だけで実現可能な4機能を、連載の中で順に紹介していく。
●TFS 2010の提供形態
TFSを入手するには、従来はパッケージ製品などの個別購入の必要があった。このため、MSDNサブスクリプション契約を保持していても追加費用が必要となっていたが、TFS 2010からは、MSDNサブスクリプション(=Visual Studio 2010 with MSDN Professional/Premium/Ultimate)にTFS 2010とクライアント・アクセス・ライセンス(1つ)が標準で付属するので、MSDNサブスクリプションからTFSを無償で入手して利用できるようになった。
ただし、通常のソフトウェアと違い、1つのデバイスにのみ配置可能など、いくつかの制限がある。詳細については、「Microsoftダウンロード:Visual Studio 2010 ライセンス ホワイトペーパー」をご覧いただきたい。
■Team Foundation Server 2010のインストールと構成
インストールを始める前に、TFS 2010の大きな改善点であるインストール方法の改善について触れておきたい。
改善内容は大きく2つあり、1つはインストールそのものが簡単になったことだ。TFS 2008までであれば、実際に使い始められるようになるまでにはかなりの時間(場合によっては何日も)を要することもあったが、TFS 2010は前提条件の緩和やウィザードの充実により、インストール・ガイドを見なくとも使い始めるところまで進めることが可能なほど簡単になっている。
もう1つは、サーバOSだけでなく、クライアントOS(具体的にはWindows Vista SP2以降およびWindows 7でいずれもHome Premium以上のエディションに限る)にもインストールできるようになったことだ。これにより、小規模開発などの際に、わざわざWindows Serverを用意する必要がなくなり、導入のしやすさは格段に向上している。
とはいえ、前述のTFS 2010の機能をすべて利用するには、やはりWindows Serverへのインストールが必須となるため、今回はWindows Server 2008 SP2にTFSに必要なすべての機能をセットアップする方法で進めていくことにする。なお、本来であればTFS 2010とそれを利用する全クライアントがActive Directoryの管理下にある必要がある。しかし、実際にはActive Directory環境がなくてもTFS 2010を問題なく利用できるため、今回は除外している。
●システム要件の確認
まずはシステム要件とミドルウェア要件の確認からだ。インストール可能なOSとして以下をサポートしている。
- Windows Vista SP2
- Windows 7
- Windows Server 2003 SP2(x86のみ)
- Windows Server 2003 R2(x86のみ)
- Windows Server 2003 R2 SP2(x86のみ)
- Windows Server 2008
- Windows Server 2008 R2
機能面での制約はあるものの、クライアントOSとしてWindows Vista SP2以降をサポートしている点と、TFSそのものを64bit OSにもインストールできる点が最大の特徴だ。そのほかに最低限必要なミドルウェアは以下のとおりだ。
- Internet Information Services 6.0/7.0/7.5
※7.0以降の場合は[IIS 6 と互換性のある管理]機能が必要 - SQL Server 2008 Express/Standard/Enterprise
なお、これらの詳細な情報に関しては「Visual Studio 2010 用 Team Foundation インストール ガイド」をご覧いただきたい。インストール・ガイドに、IISおよびSQL Serverのインストール方法が記載されているので、その手順に従ってTFS 2010のインストール前に、これらのインストール作業を終わらせてしまおう。
次はいよいよTFS 2010のインストールだ。
INDEX | ||
[連載]Team Foundation Server 2010入門 | ||
第1回 Team Foundation Server 2010を導入しよう | ||
1.Team Foundation Server 2010概要 | ||
2.Team Foundation Server 2010のインストールと構成 | ||
「連載:Team Foundation Server 2010入門」 |
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