第7回 読者アンケート結果
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Visual Studio .NET(以下VS.NET)の最新バージョン“VS.NET 2003”が、間もなくリリースされる(MSDN会員向けの提供は開始済み)。まったく新しい開発環境として登場してから1年余り、VS.NETの進化をユーザーはどう受け止めているのだろうか? Insider.NETフォーラムが実施した第7回読者調査から、その状況をレポートしよう。
統合開発環境の使用状況
VS.NET 2003の話題に入る前に、まずはInsider.NETフォーラム読者の現在の開発環境を確認しておこう。読者に業務でよく使用している統合開発環境を聞いたところ、トップとなったのは「Microsoft Visual Studio 6.0以前」(63%)であり、「Microsoft Visual Studio .NET」の使用率は41%で第2位となった(図1)。VS.NETがリリースされてから1年を経過したが、.NET以前の環境による開発需要も、依然として高いようだ。
図1 業務でよく使用する統合開発環境(N=526 複数回答) |
またVisual Studio以外の開発環境では、「Eclipse」の使用率が若干ほかをリードしている点が興味深い。EclipseといえばJava開発ツールと考えられがちだが、その特徴であるプラグイン構造により、C#にも対応している。現状ではVS.NETのような使い勝手やサポートは望めないが、オープンソースのマルチ言語/マルチプラットフォーム環境として、今後.NET開発者にも気になる存在となりそうだ。
.NETアプリケーションの開発状況
では現在VS.NETを使用している読者は、どのようなアプリケーションを開発しているのだろうか? 図2のとおり、「クライアント/サーバ用アプリケーション:Webアプリ」および「クライアント/サーバ用アプリケーション:Windowsアプリ」のポイントが高くなっており、.NET技術が主に企業内システム/イントラ用の開発に使われていることが分かる。
図2 開発している.NETアプリケーション(VS.NET使用者 n=216 複数回答) |
このようにいままでASPやVisual Basicが適用されてきた領域の.NET化が進む一方、「XML Webサービス」の開発実施率は、VS.NETユーザーの2割にとどまっている。業務システムの構築手法を根本から革新するには、まだしばらく時間が必要なようだ。
Visual Studio .NET 2003導入予定
ここからは、本題であるVS.NET 2003の受容性について見ていこう。まず読者にVS.NET 2003の導入予定をたずねたところ、調査時点で導入予定を立てていたのは全体の38%(「VS.NETからの無償アップグレード利用予定」+「キャンペーン中にVS.NETを購入して、無償アップグレード予定」+「VS.NET 2003が発売されてから、新規導入する予定」の合計)だった(図3)。
図3 Visual Studio .NET 2003の導入予定(N=526) |
導入意向の内訳を見ると、既存VS.NETユーザーの無償アップグレード意向に比べて、新規の導入予定はあまり高くないようだ。全体の38%が「いまのところ導入予定/検討はしていない」と答えた点も気になる。VS.NET 2003の導入には、何か障害があるのだろうか? 続いてそれを検証してみよう。
参考リンク マイクロソフト VS.NET 2003無償アップグレードキャンペーン |
VS.NET 2003導入のハードルは?
前項でVS.NET 2003の導入予定/検討はしていないと答えた読者に、その理由を聞いた結果が、図4だ。
図4 VS.NET 2003導入予定がない理由(VS.NET 2003非導入予定者 n=200、3つまでの複数回答) |
該当者の過半数が「VS.NET 2003に関してまだよく理解していないから」と答えている。機能面やコスト問題の前に、まだVS.NET 2003の製品理解が低いため、導入検討の俎上に上っていないのが実情のようだ。読者からは、
- 『Visual Studio「6.0」から「.NET」への強化機能』および『「.NET」から「.NET 2003」への強化機能』をおのおのひと言で知りたい。
- 従来のバージョンとの相違点をメリット・デメリットを含めて、とにかく情報がほしい。その情報を元に総合的にメリットと判断したら、もちろんバージョンを上げたいと思っている。
といったコメントも多く寄せられている。VS.NET 2003の導入を進めるためには、需要喚起のためのさらなる情報提供が必要であるようだ。
VS.NET 2003 新機能の魅力度は?
ではエンジニアはVS.NET 2003について、どんな情報を欲しているのだろうか? VS.NET 2003の主な機能を提示した上で、読者が興味のある項目を尋ねたところ、多くの注目を集めたのは「Windows Server 2003との統合」および「.NET Framework 1.1への対応」の2点だった(図5)。VS.NET 2003は.NET Framework 1.1(Windows Server 2003にも搭載)のための開発環境であるため、これはまあ当然の結果といえる。
図5 Visual Studio .NET 2003興味ある新機能(複数回答 N=526) (EIFはEnterprise Instrumentation Frameworkの略) |
では.NET Framework 1.1の具体的な新機能に関する興味は、どこにあるのだろうか? マイクロソフトが提示する『Visual Studio .NET 2003 にアップグレードする 10 の理由』では、“さまざまなモバイル デバイスのためのアプリケーション構築”が一番に挙げられているが、同内容に興味を示した読者は、全体の24%にとどまった(図5:「モバイル端末用の開発をサポートする.NET Compact Frameworkの統合」)。図2で見たように、現在.NETでモバイル端末用のアプリケーションを構築している読者自体が数少ないため、現時点ではこの機能が導入/アップグレードの強力な誘因とはなりにくいようだ。
一方、モバイル端末対応以上に読者の注目を集めたのが、「ODBC/Oracleとのデータベース接続性向上」および「スケーラビリティ/パフォーマンスの向上」の2点だった。これらは一見地味な機能改善だが、Oracle接続に関しては、以前からInsider.NET会議室で「Oracle9iに適したProviderは?」といったスレッドが立つなど、実務上興味を持つ読者が多いようだ。パフォーマンス向上についても、開発者が毎日触れるツールとして重要な要素であることは想像できる。VS.NET 2003の導入を検討するためには、こうしたエンジニアの実務ニーズにこたえる機能についての、詳細な情報提供が望まれるだろう。
参考リンク マイクロソフト Visual Studio .NET 2003 製品情報 マイクロソフト VS.NET 2003にアップグレードする10の理由 |
調査概要 | |
調査方法
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Insider.NETフォーラムからリンクした Webアンケート |
調査期間
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2003年3月24日〜4月21日 |
有効回答数
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526件 |
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「Insider.NET 読者調査結果」 |
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