特集 .NET言語による次世代Officeソリューションの開発―― Visual Studio Tools for Office 概要 ―― 1. VSTOソリューションとはデジタルアドバンテージ 一色政彦 |
ExcelやWordを業務アプリケーションのフロントエンドにして利用するには、Excel/WordのOffice製品を外部のプログラムから操作する必要がある。Office製品の新しいバージョンであるOffice 2003では、このための機能が2つ用意されている。1つは、「Office COMアドイン」。もう1つが、Office 2003で新たに追加された「Visual Studio Tools for Officeソリューション(以降、VSTOソリューション)」だ。
Office COMアドインは、Officeの機能を拡張するための「COMモジュール」である。一方、VSTOソリューションは、Officeの機能を拡張するための「.NETアセンブリ」である。両者の目的は同じといってよいが、VSTOソリューションは、単にCOMアドインと同じ機能を.NETアセンブリで実現しているというわけではない。VSTOソリューションは、これまでのOffice COMアドインとは異なり、自動ダウンロード/自動アップデートやセキュリティ機能などの.NET Frameworkテクノロジが利用できるのだ。このVSTOソリューションにおける.NET Frameworkテクノロジの内容については、Windows Server Insider「Office 2003で変わる業務アプリケーション」で解説しているので、詳しくはそちらを参照していただきたい。
なお、読者の中には、Officeでは「VBA(Visual Basic for Applications)マクロ」という機能もあると考えた方もいるかもしれない。ただし、マクロとは「一連の作業手順を登録して再利用する」のが目的で、Office Systemソリューションの構築にはあまり適していない。よって、ここではOffice拡張機能には含めなかった。
Office COMアドインの開発では、以下のような開発言語が使用できる(※VBAはマクロだけでなく、COMアドインも作成できる。詳しくは、MSDN「Microsoft Office XP Developer ウォークスルー : VBA を使って COM アドインを作成する」を参照されたい)。
- Visual Basic 6.0/Visual C++
- Visual Basic .NET/C#
- VBA(Visual Basic for Applications。Visual Basicから派生したOfficeビルトイン開発環境)
これらの開発言語の中で注意すべきなのは、Office COMアドインでもVisual Studio .NET(Visual Basic .NET、C#)が使えるところだ。つまり、Office COMアドインでは.NETアセンブリが使えるのである。この.NETアセンブリは、OfficeマネージCOMアドインと呼ばれている。しかし、前述したように、VSTOソリューションとOffice COMアドインとでは.、.NET Frameworkテクノロジが利用できるかできないかの違いがあることに留意すべきである。つまり、Visual Studio.NETで作成したCOMアドインは、.NETアセンブリであっても.NET Frameworkテクノロジを利用することができないのだ。
一方、VSTOソリューションの開発では、「Visual Studio Tools for the Microsoft Office System(以降、VSTO)」が必須となる。VSTOは、「Microsoft Office System ソリューション(VSTOソリューション)」構築専用の開発ツールで、Visual Studio .NET 2003(以降、VS.NET)用のアドオンソフト、具体的にはVisual Basic .NET 2003(以降、VB.NET)とVisual C# .NET 2003(以降、C#)用のプロジェクト・テンプレートである。VSTOをインストールすることにより、VB.NET/C#の両言語とも、「Excelワークブック」、「Wordドキュメント」、「Wordテンプレート」の3つのプロジェクト・テンプレートが利用できるようになる
Visual Studio .NET 2003に追加されたVSTOプロジェクト・テンプレート | ||||||
「新しいプロジェクト」ダイアログ。VS.NET2003のIDE(統合開発環境)のメニュー・バーから[ファイル]−[新規作成]−[プロジェクト]を実行すると起動できる。 | ||||||
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本稿では、VSTOによる開発を紹介する。VSTOソリューションの仕組みを説明したあと、VSTOが生成するコードの内容について解説していく。なお、プログラムのコードはすべてVisual Basic .NETで示す。ただし、Visual C# .NETのコードもファイルとして添付する。
■VSTOについて
パッケージには、Visual Studio Tools for Officeのほかに、 Visual Basic .NET、SQL Server 2000 Developer Edition、Access 2003 Developer Extensionsが含まれている。よって、VSTOを購入すればVSTOソリューションをすぐに開発できる。ただし、Office 2003は別途購入する必要があるので、注意が必要だ。また、C#の開発環境はVSTOに含まれていないため、Officeソリューション開発にC#を使いたい場合は、Visual Studio .NET 2003またはVisual C# .NET 2003を購入する必要がある。注意していただきたい。 |
■Microsoft Office Systemについて |
INDEX | ||
[特集].NET言語による次世代Officeソリューションの開発 | ||
1.VSTOソリューションとは | ||
2.VSTOソリューションのメリットと実行の仕組み | ||
3.VSTOソリューションの開発 | ||
4.VSTOのコードとプログラミング | ||
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