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ボーランドの.NET戦略―― 上流設計支援でMSをリード。Java、.NET環境の融合を目指す ―― |
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その昔ボーランドは、Windows向けのソフトウェア開発環境や独自の表計算アプリケーション、データベース製品を次々と開発してマイクロソフトとシェア争いを繰り広げていた時期がある。しかしプラットフォームであるWindows OSの全権を握るマイクロソフトの圧倒的なパワーの前に、やがてWindows向けソフトウェアの分野でマイクロソフトの後塵を拝し、Windowsビジネス・アプリケーション分野からの撤退を余儀なくされた。
その後ボーランドは、最も得意とするソフトウェア開発分野に資源を集中し、Java言語向け開発環境や、Linuxプラットフォーム向け開発環境などで独自の路線を切り開くことに成功した。最近ではソフトウェア・モデリング・ツール開発のTogether社を買収し、マイクロソフトに先行してモデリング機能を開発環境に統合した。
そのボーランドが、自社製品の.NET対応を進め、次世代Windowsプラットフォーム向けのソフトウェア開発環境として、新たな地位の獲得を目指している。
ボーランドの.NET戦略とはどのようなものか。.NET対応の開発環境をすでに提供するマイクロソフトを前に、どのような勝算を持っているのか。ボーランド(株)マーケティング部 部長の藤井等氏、同SE部 システムエンジニアの奥村恵子氏にお話を伺った。
ボーランドの.NET対応製品ラインアップ
―― 最初に、ボーランドの.NET対応製品群の概要を教えてください。
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―― そして11月末には、RAD環境として定評のあるDelphiの.NET対応版(Delphi 8日本語版)の開発計画も発表されました。
藤井:はい。こちらは2004年2月に提供予定です。このDelphi 8では、Windowsプラットフォーム向けのコンポーネント・ライブラリとして従来から提供していたコンポーネント・ライブラリ(VCL:Visual Component Library)と高い互換性を備えた.NETプラットフォーム向けのコンポーネント・ライブラリ(VCL for .NET)を提供することで、Delphiで開発された既存のソフトウェア資産を.NET Framework上に容易に移行し、機能拡張できるようにします。 |
ソフトウェア開発の現状とボーランドの.NET戦略
―― .NET対応の開発環境はすでにマイクロソフトから提供されています。.NETプラットフォームの開発元としてこれは当然でしょうが、.NET向け開発環境としては後発になるボーランドさんの.NET戦略とはどのようなものでしょうか。
藤井:.NETという新しいマイクロソフトのプラットフォームに対して、基本的にボーランドがどう考えているか、何をしようとしているかをお話しする必要があると思います。まず最初にお話ししなければならないのは、マイクロソフトとボーランドは互いに争って、開発者にどちらか一方を選択させるといった構図にはないということです。.NETプラットフォーム向けのソフトウェア開発において、より生産性を高めるような開発支援ソフトウェアを提供することがボーランドの大きな目的です。.NETプラットフォームの普及を目指すマイクロソフトとはむしろ協調関係にあると考えています。 |
―― マイクロソフト1社ではカバーできない領域をボーランドとしてカバーしていくということでしょうか。
藤井:そうですね。これには大きく2つのポイントがあります。1つは、マイクロソフト・テクノロジ以外の開発言語やプラットフォームにおける既存資産の.NETへの移行を支援するということです。具体的には、ボーランドの顧客にはDelphiアプリケーションを持っている開発者がいます。あるいはJavaに代表されるように、.NETとは異なるプラットフォームやアーキテクチャをベースとするノウハウやソフトウェア資産を持つ開発者がいます。こうした開発者が.NET環境に移行したいと考えたときに、それを支援できるような開発ツールを提供する必要があります。これはマイクロソフト1社ではできません。ここにボーランドが存在する価値があります。 |
―― マルチ・プラットフォーム時代の.NET開発支援といえるでしょうか。第2のポイントは何でしょうか。
藤井:これはWindows系の開発に限ったことではないのですが、最近のソフトウェア開発の複雑化と納期の短期化にどう対処するかという点です。ソフトウェアを取り巻く変化は激しくなる一方で、ソフトウェア開発にかけられる予算や時間はどんどん短くなっています。.NETアーキテクチャでは、よりコンポーネント指向やサービス指向が高まっており、個々のサービスやコンポーネントをきちんと実装する必要に迫られます。しかし時間はない。こういうジレンマをどう解決していくかが第2のポイントです。これには、従来のRAD(Rapid Application Development)による開発だけでは不十分です。これからはサーバ・サイドにおける部品や、ビジネス・ロジック部品をいかにしっかり作っていくか、そしてそれらをサービスやコンポーネントという形で独立させ、いかに再利用性を高めるかという点が重要になっています。従来の開発ツールだけでは、この領域をカバーできません。 |
―― アプリケーションのモデリングなど、上流設計が重要になるということですか。
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Javaと.NET
―― ボーランドにはJava開発環境としてJBuilderがありますが、こちらも将来的に.NETに対応するのでしょうか。
藤井:Java開発環境を単純に.NET対応にするという予定はありません。この点はマイクロソフトと立場が大きく異なるところだと思います。私たちは、既存のJavaアプリケーションをそのまま.NETで動かすということにあまり意味を感じていません。Javaプラットフォーム向けに開発されたアプリケーションは、J2EE(Java 2 Enterprise Edition)ベースのアプリケーション・サーバやJava VM(Java仮想マシン)上で動くことを前提としています。既存のJavaプラットフォーム上で高性能かつ堅牢なシステムが稼動しているなら、それはそのままにして、いかに.NETアプリケーションと共存・連携させていくかということが重要です。Javaのソースコードを.NETにコンバートできたとしても、それにどれだけ意味があるのか疑問ですし、ユーザー・ニーズとしても、そのような要求はないと考えます。JavaはJavaの世界でしっかり生産性を高めていき、.NETは.NETで生産性を高めていく。そしてJavaと.NETの橋渡しを提供する。これが私たちのスタンスです。 |
―― すべてがJavaまたは.NET一色になるということではなく、それらの共存が不可避ということですね。
藤井:そうです。米Gartner社の調査でも、Javaと.NETの共存を検討している企業が圧倒的だという結果が得られています。周知のとおり、クライアントOSとしてはWindowsが広く利用されていますから、そこで将来的に.NET対応アプリケーションを稼動させるのは自然です。しかしその一方で、企業の基幹部分には、すでにJavaベースのシステムが導入されています。これらのJavaアプリケーションを捨てて.NETに移行するというケースはほとんどないでしょう。今後はほとんどの企業で、Javaと.NETプラットフォームが共存していくことになります。 |
―― クライアント・サイドは.NET、サーバ・サイドはJavaということですか。
藤井:直近の需要という意味ではそこから始まるでしょう。クライアント・サイドの開発では、Javaよりも.NETのほうが圧倒的に生産性が高い。しかしサーバ・サイドの信頼性や実績では圧倒的にJavaが勝っています。それぞれ適材適所があり、共存していくということです。 |
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INDEX | ||
[Trend Interview] ボーランドの.NET戦略 | ||
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1.ソフトウェア開発の現状とボーランドの.NET戦略 | |
2.C# Builder、Delphi、Together Edition for VS.NET | ||
3.Borland ECO(Enterprise Core Objects) for .NET、Janeva | ||
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「Trend Interview」 |
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