解説インサイド .NET Framework第7回 アセンブリとバージョン管理(後編) インフォテリア株式会社 |
アプリケーションの修復
ここまでに解説した何らかの方法でバージョン・リダイレクトが行われた結果、アプリケーションに不具合が発生した場合、ユーザーがアプリケーションの構成ファイルを書いてバージョン・リダイレクト先を修正すれば、アプリケーションが参照するアセンブリのバージョンを直すことができる。また、発行者ポリシーの適用結果としてアプリケーションの動きがおかしくなった場合は、発行者ポリシーを適用しないように構成ファイルに書けばよい。しかし、これらの作業を一般のユーザーに任せるのは少し酷である。
そこで、.NET Frameworkにはアプリケーションの修復機能がウィザードとして提供されている。このウィザードは、Microsoft .NET Framework Configurationと同じく管理ツールの中にある[Microsoft .NET Framework Wizards]である。
.NETウィザードの起動画面 |
管理ツールの中にある[Microsoft .NET Framework Wizards]を起動する。 |
このツールはMMCベースではないので、Windows 9x系のマシンでも動作する。ウィザードを起動すると、3つのアイコンが表示される。この中の[アプリケーションの修正]をクリックすると、やはりこれまでに実行したアプリケーションが一覧表示される。
アプリケーションの選択画面 |
.NETウィザードで[アプリケーションの修正]を選択すると、これまでに実行したアプリケーションが一覧表示される |
ここで修復したいアプリケーションを選択して[OK]ボタンをクリックすると、直前のバージョンに戻すように促す次のような画面が表示される。
修復確認の画面 |
アプリケーションを直前のバージョンに戻す場合には[OK]をクリックする。[詳細]をクリックすると別のバージョンに修復することもできる。 |
それでよければここで[OK]ボタンをクリックすればいいし、もっと前に戻したい場合は、[詳細]ボタンをクリックすれば細かいバージョンの履歴が日付範囲の形で表示される。
復元ポイントの選択画面 |
アプリケーションの細かいバージョン履歴が日付範囲の形で表示される。 |
この画面で、アプリケーションを使っていて最も幸せだった日を思い出し、それを設定すればその時点のバージョンの依存アセンブリを使うように構成ファイルが自動的に変更されるのだ。
上の画面のような履歴リストを表示するために、.NET Frameworkではアプリケーションが終了したときの情報を次のフォルダにアプリケーションごとのログとして記録している。
C:\Documents and Settings
\ユーザー名
\Local Settings
\Application Data
\ApplicationHistory
バージョン・リダイレクトによって参照先のアセンブリが変更されると、このフォルダの中のiniファイルにエントリが追加され、いつでも元に戻せるようになっている。このように、欠陥のあるバージョンアップからできる限りユーザーを保護する機能が、.NET Framework自体に備わっているのだ。
ちなみに、この修復作業もWindows NT系のマシンの場合はMicrosoft .NET Framework Configuration管理ツールで行うこともできる。[アプリケーション]ノードを展開して、修復したいアプリケーションを右クリックし、メニューから[アプリケーションの修正]を選択すればよい。
今回のまとめ
.NET Frameworkには、組み込みのバージョン管理機能がある。これによって従来のDLL地獄を打破し、新旧のアセンブリが問題なく共存できる環境を作っている。.NET Frameworkのバージョン管理機能の基本はサイドバイサイド実行である。これによって、参照しているアセンブリのバージョンが変わっても、アプリケーションは自分がデバッグされ、テストされたときと同じアセンブリを使い続けることができる。開発者が完全に互換性のある新バージョンを提供したときは、それを使って新しい機能を利用することも可能だ。その場合は、アプリケーションの構成ファイルを書いたり、開発者が発行者ポリシーを提供したりできる。さらに、このようなバージョン・リダイレクト機能はいつでも元に戻すことができる。ユーザーは新しいバージョンが気に入らなければ、前のバージョンを引き続き使うことができるのだ。
さて、次回はアセンブリのロード時に行われるセキュリティ関連の機能を紹介しよう。まず手始めに、.NET Framework向けに作られたEXEアプリケーションがダブルクリックされたときに、どのように起動されるのか、その手順から解説する。
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ところで、.NET Frameworkの動作理念と内部構造を詳解した書籍『プログラミング Microsoft .NET Framework』が2002年7月15日より発売される予定である(筆者が監訳を行っている)。
プログラミング Microsoft .NET Framework | |
Jeffery Richter著 吉松 史彰 監訳 B5変型判/632ページ 発行日:2002年7月15日 定価:5800円 ISBN 4-89100-303-0 日経BPソフトプレス 発行 |
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Book Reviewを読む |
本書は、.NET Framework上で動作するプログラムをどのように記述し、配布し、実行し、監視すれば、最適なアプリケーションが開発できるのかを説明したものだ。著者は.NET Frameworkの内部構造を設計書やソース・コードのレベルで熟知しているJeffery Richter氏である。本連載の読者には、必ず役立つ一冊である。書評をこちら(Book Review)で行っているので、ご参照いただきたい。
INDEX | ||
解説 インサイド .NET Framework | ||
第7回 アセンブリとバージョン管理(後編) | ||
1.バージョン・ポリシーの適用順 | ||
2..NET Framework Configuration管理ツール | ||
3.アプリケーションの修復 | ||
「解説:インサイド .NET Framework 」 |
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