IT業界記者によるリレーコラム
IT Business フロントライン (36)
非店舗型銀行は利用価値が高い?
セキュリティ、個人情報保護に課題も
磯和春美
毎日新聞社
2001/5/25
6月から始まるソニー銀行の営業開始は、注目度もひときわ高い。ネット専業銀行はもともと欧米ではポピュラーだし、日本でも昨年10月に営業を 開始した三井住友銀行系のジャパンネット銀行がある。
しかし、ソニー銀行に集まる注目は、それら先行組とは一味違う。三井住友銀行、JPモルガン銀行が出資しているとはいえ、筆頭株主はあくまで ソニー。金融業界「外様」が銀行業務に進出、しかも個人向けのローンや投資信託販売も行うフルバンク形式ということで、内外の関心はきわめて高い。
■異業種からの参入で金融業界は変わる
「外様」銀行として一足先に営業を開始したのが、アイワイバンク銀行(以下、アイワイバンク)だ。アイワイバンクは流通業であるイトーヨーカ堂とセブン-イレブンが母体。経営形態は個人向けの決済が中心で、企業向けの一般的な貸し出しや住宅ローンなどは行わないという。将来は、ネットへの展開も想定されているようだが、現在はATMサービスが中心の銀行だ。
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社長に就任した安斎隆氏は日銀理事、長期信用銀行頭取を経て流通業界初の銀行経営のためにスカウトされた金融業界のエキスパート。会見では「個人向け決済を中心にした銀行経営を目指す」と話し、2年以内に黒字転換する方針を示した。アイワイバンクは出資元に欠けている金融業界のノウハウを安斎社長に頼ることで、流通と金融の融合を目指すわけだ。
実際、金融業とかかわりのない企業が銀行業務に参入するにあたっては、資金調達や経営の安定性などの面で不安が大きいとして、免許申請の際にはイトーヨーカ堂と金融監督庁(当時)との間では「双方とも初めてだったこともあり、かなりいろいろなやりとりはあった」(伊藤敏文・イトーヨーカドーグループ代表)のだという。安斎社長の存在は、その意味でも大きい。安斎社長も「(アイワイバンクの参入で、日本の)金融市場も一般の市場と同じく、新陳代謝を認めるようになった。これまで(の金融機関)は安定性に重点をおきすぎ、効率性に欠けていたが、ATMサービスに特化した新しい銀行として、民間の金融機関全体の安定、発展に寄与したい」と自信も見せる。
■なぜ、非店舗型銀行なのか
ところでソニー銀行やアイワイバンクのような、オンライン業務やATM業務のみを行い、独自の店舗を持たない非店舗型銀行はこれからもどんどん増えそうだ。イーバンク銀行も、開業準備に入っているほか、数社がネット銀行への進出を検討しているという。金融関係でもない企業がなぜ次々にネット銀行に参入しようとしているのだろうか。
1つには、従来の銀行業務と違い、店舗を持たず、オンライン業務を主にすることで人件費や運営コストが大幅に削減できることがある。その分を利用者に還元することで競合他社との差別化が図りやすい。もっと企業側の都合に目を向ければ、この経済状況の中、少しでも顧客との接点を持つことは重要だし、顧客の金融データを入手できれば(いまはやりの)CRMの向上に大いに役立つ。なにより、顧客向けのサービス提供から決済までの流れすべてを囲い込むことができるのだから、個人向け金融サービスはとても高位なサービス戦略だともいえる。
■口座開設にはデメリットも意識して
利用者側からすれば、便利で得ならどんどん活用したいところだ。従来の金融機関もこうした異業種参入組が成功すれば刺激を受けて一層のサービス向上に努めてくれるかもしれない。ただし、オンライン専業のネットバンクで心配なのはセキュリティ、個人情報の保護、親会社の経営状態に左右されて銀行業務が不安定になること、などだ。これまでの銀行とはまた違うチェックが必要になる。また、オンライン上の顧客データ保護に関して、法整備もこれからという時期に、どこまでセキュリティを高めるかはそれぞれの企業に任されているのが現状。現時点では、ネット銀行に口座を開くにも、個人の責任がなかなか重くなってくる。
ちなみに、私個人は、興味もあるので数行のネットバンキング、ブラウザバンキング、ネット専業銀行への口座開設を実行しているが、正直な感想としては「家賃の振込み予約が便利なくらいか……」といったところ。手数料が安い、金利が有利、といったところのメリットを実感するには取引回数が少ないし、オンラインの株取引との提携や、ローン取り扱いなども行いたいところだが、現在の資金力ではそこまでのチャレンジに至っていない。近いうちにオンライン株取引の成果を誇るようなレポートをぜひものにしたいとは思っているが、現実はそれほど甘くなさそうだ。
※本稿は、当初内容に事実誤認があり、一部を修正し25日夜に再アップロードしたものです。
| Profile |
| 磯和 春美(いそわ はるみ) 1963年生まれ、東京都出身。お茶の水女子大大学院修了、理学修士。毎日新聞社に入社、浦和支局、経済部を経て1998年10月から総合メディア事業局サイバー編集部で電気通信、インターネット、IT関連の取材に携わる。毎日イ ンタラクティブのデジタル・トゥデイに執筆するほか、経済誌、専門誌などにIT関連の寄稿を続けている。 メールアドレスはisowa@mainichi.co.jp |
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