書評
現場のエンジニアに贈る、スキルチェンジ、
スキルアップのための6冊
早瀬真阿
2002/2/27
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サーバサイドJavaは、利用するユーザーの視点からは、従来と変わりのないHTMLをベースとして提供されるWebのサービスであるが、その背景には非常に高度な最新技術が凝縮されている。サーバサイドJavaは、多岐にわたる各要素技術から構成された総合的なテクノロジであり、習得すべき分野は広範なものになる。残念ながら、言語やデータベースのみ、といった特定の分野に限られた知識では不十分であり、Javaの知識はもちろん、Webサーバの仕組みやプロトコル、JSPやサーブレット、さらにはシステムの設計手法に至るまで、多くの知識が要求され、これらを一朝一夕で習得することは容易でない。
さて、現在では書店に多くの関連書籍が並んでいるため、それらを参考にすることで必要な知識を身に付けることが可能である。その際、効率的な学習をするためにはいかにして適切な書籍を選択するかが重要となる。ここで紹介する書籍は、最近刊行された書籍の中から、サーバサイドJavaの技術を学習してゆくうえで役に立つであろうと思われるものを選んだ。主に、対象となる読者層と、書籍に記されている内容、およびその用途に注目し、以下に書評をまとめた。書籍を選択する際の参考にしていただければ幸いである。
Java認定資格の試験対策に |
SUN教科書 Java2 ビル・ブローデン著 トップスタジオ/訳 日本サード・パーティ株式会社/監修 翔泳社 2001年5月 ISBN4-7981-0019-6 4200円 |
本書は、サン・マイクロシステムズのJava認定資格の1つ「Sun Certified Programmer for the Java Platform(Java2)」の試験対策用の書籍である。「業務で必要となる知識」と「試験に合格するための知識」は必ずしも一致しないため、Java2の経験が豊富なプログラマーでも、本書を利用して学習することの意義は大きい。
各章の冒頭で「理解しておきたい用語と概念」「習得しておきたい技術」のポイントが明記されているので、読者は章単位での学習目標を立てやすくなっている。対策用の練習問題は非常に充実しており、効率良く学習できるように構成されている。また、巻末に収録されている模擬試験問題とその解答は、本番前の最終チェックや実力分析に有効であろう。そのほか、用語集、試験に関する情報も充実していて便利だ。
Javaの広範囲な技術をいち早く現場に生かしたい人へ |
Javaプログラム クイックリファレンス 第2版 David Flanagan著 豊福剛訳 オライリー・ジャパン 2001年9月 ISBN4-87311-054-8 4800円 |
本書は、Java2 Platform v1.3に対応したリファレンスブックである。基本的なAPIはもちろん、Java2Dやデータベース、サーブレットとJSP、XMLなど、広い範囲にわたって、160以上のサンプルが掲載されている。この膨大なサンプルは、初心者からプロフェッショナルまで、幅広いニーズにこたえてくれそうだ。
アプリケーションの開発において、それまでに使ったことのない新しい分野の技術が必要になったとき、APIや関連ドキュメントを読んで試行錯誤するよりは、まず本書のサンプルを見てみることで、より具体的なイメージを抱くことができるだろう。Javaの広範な技術をいち早く現場に生かしたいと考えるJavaプログラマーにとって、非常に有益な実用書といえる。
現場で直面するトラブルや疑問点の解決に |
JavaプログラミングFAQ テンアートニ著 日本実業出版社 2001年11月 ISBN4-534-03319-2 1800円 |
Java Solutionフォーラムで連載された「Java Solution FAQ」の記事をまとめ、大幅に加筆したものが本書である。
サーバサイドのJavaテクノロジに関して、初心者のための基礎知識から現場で直面するさまざまなトラブルや疑問点、および実践的なスキルを身に付けるために必須の知識や概念を、Q&A形式で解説している。
サーブレットやJSP、J2EEをはじめ、JDBCやXMLとの連携、設計方法、デバッグ方法に至るまで、Webシステム開発の現場で必要となる項目が幅広くサポートされている。以下に、本書で扱うカテゴリを紹介しよう。
「Webアプリケーション開発入門」「サーブレットの基礎知識と活用」「セッション管理の基礎知識と活用」「JSPの基礎知識と活用」「JDBCの基礎知識と活用」「デバッグの基礎知識」「J2EEの基礎知識と活用」「Webアプリケーションの設計」「XMLとの連携と活用」「エンタープライズへの適用」と、J2EEを基盤としたWebアプリケーションの開発に必要なトピックがほぼ網羅されている。
これからWebシステムの開発スキルを磨きたいと考えている初級者や、現場でのトラブル対処のノウハウの必要性を感じている開発者にとって、実践的な知識を効率良く身に付けられる書籍だ。
Webアプリケーション開発の第一歩を踏み出すために |
かんたん サーバサイドJava 米持幸寿著 翔泳社 2001年12月 ISBN4-7981-0045-5 2400円 |
本書もJava Solutionフォーラムの人気記事「Java Servlet徹底解説」をベースに、大幅加筆した、サーブレット、JSP、EJBの3つを柱としたサーバサイドJavaの入門書である。
初めてWebアプリケーションの開発を体験する初心者を対象としており、添付のCD-ROMに含まれる、WebSphere Application Server 4.0、 Visual Age for Java、DB2 UDBの評価版を使い、実践しながらWebアプリケーションの開発に必要なHTTPやHTMLに関する基本的な知識と、Webアプリケーション開発の実際を習得できる構成になっている。また、サーブレットとJSPの連携、サーブレットとEJBの連携について、再度基本を復習したい読者にも、要点がよく理解できる内容だといえよう。
収録の各種ソフトウェアについては、セットアップ方法からその使用方法まで丁寧な説明があるため、いままで環境構築の難しさに不安を感じていた初級者や、これからWebSphere
Application Serverの導入を検討している開発者などにもお薦めの書籍だ。
BEA WebLogic Server を使用する上級開発者へ |
J2EE & BEA WebLogic Server開発者ガイド マイケル・ガードレー他著 日本BEAシステムズ/監修・監訳 ピアソン・エデュケーション 2001年11月 ISBN4-89471-536-8 6200円 |
本書は、アプリケーションサーバ「BEA WebLogic Server」に向けたアプリケーションを開発している、中級からプロフェッショナルレベルまでの開発者を対象とした解説書である。Web上で動作するオークションシステムを例に挙げ、1つの完全なWebアプリケーションを開発する事例を紹介している。
手に取ると、まずは664ページにも及ぶ分厚さに圧倒されるが、設計フェーズにおけるキャパシティプランニング、スケーラビリティ、信頼性、パフォーマンスの向上、本番環境へのデプロイメントのノウハウなど、エンタープライズレベルのアプリケーションを構築するうえで必要となる要所がしっかりと押さえられており、最前線の開発者が机上にリファレンス的に置いておくだけでも役に立つ、レベルの高い解説書となっている。
また、付録のCD-ROMには評価版のBEA WebLogic Server 6.0J/6.1J(Windows版)、本書で紹介するWebオークションサイトのサンプルコード一式が含まれる。
いち早くJSPの扱いを習得するために |
JSPプログラミング ステップラーニング 入門編 三谷純著 技術評論社 2002年2月 ISBN4-7741-1389-1 1980円 |
Java Solutionフォーラムで連載された、「Tomcatを使う『JSPプログラミング』」をベースに、基本的な文法からデータベースとの連携に至るまで、JSPに関する事柄を広く解説した書籍である。各章の末尾には練習問題が設けられ、学習の進み具合を確認できる構成となっている。また、オープンソースのTomcatを使い、読者はLinuxかWindowsのどちらかのOSを選んで、実践の環境を構築できる。
本書は、各章の節の構成に特徴がある。まず、「導入」でその節で学ぶことの概要を解説し、その後さっそくプログラムソースコードが紹介される。読者はCD-ROMに収録されている該当のソースコードを実行して結果を体験、続いてコードの解説を読むというスタイルだ。手軽に試しながら学習できるという点で、三日坊主になりがちな読者には最適な入門書といえるだろう。
「入門編」という位置付けではあるが、正規表現を用いた文字列の扱いや、データベースを用いたアプリケーションの開発など、より実践的な内容も扱われているため、いち早くJSPの扱いを習得したいと考える初級者にお薦めしたい。
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