Development Style
第2回 読者調査結果
〜 UML利用の実態と課題とは? 〜
小柴豊
アットマーク・アイティ
マーケティングサービス担当
2002/10/5
オブジェクト指向分析/設計の重要性が唱えられる中、その具体的な表現手段であるUML(Unified Modeling Language)への関心が高まっている。では実際の開発業務の中で、UMLはどのように使われているのだろうか? Development Styleコーナーが実施した第2回読者調査の結果から、その利用状況や課題について報告しよう。
読者の半数近くが、開発案件にUMLを利用 |
まずは読者がかかわるシステム開発案件での、UML利用状況から見てみよう。「ほぼすべての案件でUMLを利用している」人はまだ少ないものの、「案件によってUMLやほかの手法を使い分けている」「最近UMLを使い始めたところ」を合わせると、UML利用者は全体の46%となった(図1)。「最近使い始めた」利用者の比率が高いことからも、昨今のUMLブームの盛り上がりが感じられる。
図1 システム開発案件でのUML利用状況(全体 N=334) |
ここからは、現在UMLを利用している読者の利用実態に迫っていこう。
UMLはまだ共通言語ではない !? |
UMLも1つの言語である限り、その利用にはコミュニケーション対象の存在が欠かせない。そこでUML利用者に、UMLを用いる相手/範囲を聞いた結果が、図2だ。見てのとおり「技術者同士」(開発チーム内/ほかの技術者間)や「自分自身」(実装前にプログラム構造などを整理)を対象とした利用率は8割前後に達している半面、「顧客」とUMLでコミュニケーションしている人は、現在の利用者の3割にとどまった。読者のコメントからは、
- 開発者同士では共通言語として通じるようになってきたが、顧客には通じないため、図などを用いて表現している(受託開発ソフト業:SE)
- 顧客は設計手法や言語を気にする余裕はなく、とにかく費用に目がいきがちであり、いま、UMLを持ち込んでも、金を取るために新しいことをやろうとしてるんだろみたいに思われるので、見せ方も考慮している(VAR/SI:システム開発)
という声も聞かれるなど、UMLを使った顧客との意思疎通に苦労している様子がうかがえる。
図2 UML利用範囲(UML利用者 N=153) |
開発段階別 ダイアグラムの活用状況は? |
ところでUMLを利用するときにまず学ぶ必要があるのは、各種ダイアグラム(図)の使い方だろう。UMLは表記法であり、開発プロセスとの関連付けがされていないため、実際にどの段階でどのダイアグラムを使うべきか迷うこともあるのではないだろうか? そこで現在のUML利用者に、開発段階別のダイアグラム利用状況を聞いてみた(図3)。
まず“業務/要求分析段階”では、ユーザーから見たシステムの使い方を図示する「ユースケース図」の利用率が、飛びぬけて高くなっている。これが“システム分析段階”に進むと、ユースケース図と並んで「クラス図」「シーケンス図」のポイントが高まり“システム設計段階”および“実装段階”ではクラス図が主役となっているようだ。
図3 UMLダイアグラム活用状況(UML利用者 N=153) |
UML作成ツール:Visio主流からRoseへ? |
続いてUML作成ツールの利用状況を見てみよう。まず現在の状況は、「Visio」の利用率がUML利用者のおよそ6割を占め、「紙/ホワイトボードとペン」が続く結果となった(図4)。一方UML利用予定者を加えて“今後利用したいツール”を聞いたところ、「Rational Rose」の利用意向がほかを引き離してトップに挙げられた。今後UML利用が本格化するにつれ、モデルとコードを相互変換できるRoseのようなツールへのニーズも高まっていきそうだ。
図4 UML作成ツール利用状況/利用意向 |
システムはUMLだけで分析/設計できるのか? |
ところで、UMLを利用するようになった読者は、分析/設計をUMLだけで実施しているのだろうか? 現実的には、図1で見たように“ほかの手法との使い分け”というパターンも多く見られそうだ。ということで、UML利用者にUML以外で使用(併用)している分析/設計手法を聞いてみたところ、RDBの設計に広く使われてきた「ER図」の使用率が5割に達していることが分かった(図5)。また構造化手法の上流設計で用いる「DFD」についても、UML利用者の4人に1人は使用しており、UMLと従来の手法との共存時代がしばらくは続きそうだ。
図5 UML以外に使用・併用している分析/設計手法(UML利用者 N=153) |
必要なのは、「顧客に理解されるUML」 |
最後に、読者がUMLを利用/学習するに当たって、現在どんな情報を欲しているのか紹介しておこう。図6は、回答者全体の答えを興味度の高い順に表したものだ。その結果、「顧客に理解される業務/要求分析の方法」および「UMLによるビジネス・モデリング」という2点が、ほかの技術的な項目を抑えて上位に選ばれた。前述したように、UMLはいまだ顧客の十分な理解を得られていない状況にある。共通言語としてのUML本来の効果を発揮するためには、最も重要なコミュニケーション対象であるユーザー側の理解促進が不可欠であるようだ。
図6 UMLについて知りたいこと/興味ある内容(全体 N=334) |
■調査概要
- 調査方法:Development Styleコーナーからリンクした Webアンケート
- 調査期間:2002年6月24日〜7月26日
- 回答数:334件
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