―Javaプログラミングの前提知識―

前田俊行
2001/7/13
Javaプログラミング
ワンポイントレクチャーについて

   オブジェクト指向とクラスについて理解する

今回の内容
オブジェクト指向の考え方
クラスとは何か

 Java言語はオブジェクト指向言語とよくいわれます。これはJava言語がオブジェクト指向の考え方を表現しやすいように作られたからです。ここでは、そのオブジェクト指向の考え方について説明します。

 オブジェクト指向の考え方

 コンピュータは「計算機」、つまり「計算」を人間の代わりに実行する機械です。そのため、初期のプログラミング言語は「計算」を中心にした考え方をもとに作られました。例えば、「変数Aの値と変数Bの値を足して変数Cに代入する」という計算を表現するために、

C = A + B

などと計算式を書きます。このような計算式を羅列することで、コンピュータに複雑な数値計算をさせることができます。初期のコンピュータの主な仕事は、このような数値計算を実行することでした。

 ところが、現在のコンピュータは数値計算を行うのみにとどまらず、より汎用的で複雑な仕事を実行するための道具としての意味合いが強くなりました。例えば、今日の多くのPCでは「ワープロで文書を作成してそれを印刷する」とか「インターネットからファイルをダウンロードしてWebブラウザで表示する」というような仕事が主になっています。コンピュータにこのような汎用的で複雑な仕事をさせるには、それらの仕事をすべて「計算式」として表現しなければなりません。コンピュータは「計算機」だからです。

 しかし、仕事が複雑になればなるほど、計算式として表現するのは難しくなります。なぜなら、われわれ人間は計算を中心にした考え方をあまりしないからです。例えば、「インターネットからファイルをダウンロードしてWebブラウザで表示する」という仕事を、すべて計算式で書き表すことを考えてみてください。一体何をどう書けばよいのかまったく見当がつかないはずです。

 そこで、人間にとって理解しやすい表現方法はないか、と考え出されたのが、「オブジェクト指向」の考え方です。

 オブジェクト指向の考え方とは、「オブジェクト」すなわち「もの」を中心にした考え方です。「もの」とは、まさに人間が考えるような「もの」のことです。オブジェクト指向の考え方では、世の中のすべての出来事は、「もの」と「もの」との相互作用である、と考えます。

 抽象的な表現では説明しづらいので、ここでは「運転手が車を運転する」という実世界の事象を、オブジェクト指向の考え方で表現してみます。この場合、「運転手」と「車」という2つの「もの」が存在します。「運転手」は「車」に対して「アクセルを踏む」「ブレーキを踏む」という2つの方法で相互作用します。「運転手」が「車」と相互作用することにより、「車」はスピードを上げたり、スピードを落としたりします。

 この「運転手が車を運転する」例は、あまりにも当たり前のことを述べているように思えますが、この「当たり前に思える」というところが、オブジェクト指向の考え方の最も重要な点です。オブジェクト指向の考え方は、人間の考え方を「もの」を中心にして単純化したものなので、人間にとって理解しやすいのです。そのため、もしオブジェクト指向の考え方でコンピュータに仕事を命令することができたら、われわれは、より複雑な仕事を容易に命令できます。

 Java言語は、このオブジェクト指向的な考え方を比較的ストレートに表現できるため、非常に生産性の高いプログラミング言語となっています。

 次の節では、オブジェクト指向の考え方でコンピュータに仕事をさせるうえで重要な概念である、クラスについて説明します。

 クラスとは何か

 オブジェクト指向の考え方では、すべてはオブジェクト(もの)で表されますが、意味のある仕事を表現するには、オブジェクトを特徴づけする必要があります。例えば、車を表すオブジェクトと馬を表すオブジェクトがあるとします。このとき、2つのオブジェクトが正しく特徴づけされていなければ、「車の手綱を引く」とか「馬のアクセルペダルを踏む」といったような、意味のない、誤った仕事を表現してしまうかもしれません。

 オブジェクト指向の考え方におけるオブジェクトは、「外部とどのように相互作用するか」「内部にどのような状態を持つか」「内部でどのように振る舞うか」の3つによって特徴づけられます。これらのオブジェクトの特徴をまとめたものを「クラス」と呼びます。

 例えば、車を表すオブジェクトの特徴について考えてみます。まず、車にはアクセルペダルとブレーキペダルがあります。アクセルペダルを踏むと車は動き出し、ブレーキペダルを踏むと車は止まります。また、車にはガソリンが積んであります。アクセルペダルが踏まれると車はガソリンを消費して車輪を回し、ブレーキペダルが踏まれると車は車輪の回転を止めます。

 これらは最も単純化された車の特徴ですが、実は、すでに1つのクラスを表現しています。まず、「外部とどのように相互作用するか」については、車を表すオブジェクトが「アクセルペダルを踏む」と「ブレーキペダルを踏む」ことによって動作することで表現されています。また「内部にどのような状態を持つか」については、車を表すオブジェクトが「ガソリンを積んでいる」ということで表現されています。「内部でどのように振る舞うか」については、車を表すオブジェクトが「アクセルペダルが踏まれるとガソリンを消費して車輪を回す」「ブレーキペダルが踏まれると車輪の回転を止める」という動作をすると表現されています。

 オブジェクト指向的プログラミング言語におけるプログラミングとは、まさに、この「クラス」を定義することです。

 

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