徹底解剖!! Eclipse3.3 Europaの“新世界”
NTTデータ 基盤システム事業本部 岡本隆史
2007/7/4
本記事は2007年に執筆されたものです。環境構築についての最新情報は「バージョン別セットアップマニュアル一覧」の「Eclipse」をご参照ください。Eclipse全般の最新情報は@IT キーワードINDEXの「Eclipse」をご参照ください。 |
6月はEclipseが生まれ変わる月
今回の主な内容 ・ 用途別にパッケージを変更してセットアップ ・ コラム Europaの日本語化 ・ Eclipse本体(Eclipse Classic)の新機能 ・ 標準プラグインの強化点 ・ 新しく追加されたプラグイン ・ Europaの“新世界”を体験しよう |
2007年6月29日にEclipseの新バージョンEclipse 3.3(Europa)がリリースされました。Eclipse 3.2(Callisto)がリリースされたのが2006年6月29日ですから、ちょうど1年間隔でのリリースとなります。ちなみに、Eclipse 3.1が2005年6月27日、Eclipse 3.0が2004年6月25日ですから、6月の下旬に1年置きにコンスタントにEclipseの新版がリリースされています。Javaプログラマにとって、6月の花嫁ならぬ6月のEclipseですね。今回は、Eclipse 3.3リリース記念のCoolなEclipseプラグイン特別編として、Eclipse 3.3 Europaの紹介をします。
■ Europa、Callistoは木星の衛星の名前
Eclipse 3.2からは、Eclipse本体とEclipse Foundationで開発されたプラグインが一度にリリースされ、Eclipseとプラグイン群を含め“Callisto”と呼ばれていました。Eclipse 3.3では、Europaとしてリリースされています。
Callistoでは、10のプロジェクトからプラグインが同時にリリースされましたが、Europaでは、21のプロジェクトからリリースされています。Eclipse Foundationのプレスリリースによると、19カ国310名の開発者によって開発された1700万行を超えるコードが提供されているということです。ちなみに、CallistoとEuropaは木星の衛星の名前から取られています。
■ 新たな進化の局面
Eclipse 3.3では、既存のプラグインの強化に加え、JSF(JavaServer Faces)やJPA(Java Persistence API)などのJava EE 5対応、STP(SOA Tools Platform)でのSOAのサポート、C/C++のサーバ上でのアプリケーションのコンパイル、デプロイ、実行のサポート、まだIncubation段階(正式なプロジェクトとしてはまだ立ち上がっておらず、準備段階)ではありますが、動的言語をサポートするDLTK(Dynamic Language Toolkit)が提供されるなど、Eclipseは新たな進化の局面を迎えようとしています。
本稿では、Eclipse 3.3(以下、Europa)の新機能と同時に、リリースされるプラグイン群の注目の新機能、そして、新たに提供されるようになったプラグインについてご紹介します。
用途別にパッケージを変更してセットアップ
EclipseのダウンロードサイトでEuropaをダウンロードしようとして、いきなり戸惑うのは、ダウンロードサイトが大きく変わったことです(図1)。
図1 大きく変わったEclipseのダウンロードサイト |
Europaからは、用途別に下記のEclipseのパッケージが用意されるようになりました。
- Eclipse Classic
- Eclipse IDE for Java Developers
- Eclipse IDE for Java EE Developers
- Eclipse IDE for C/C++ Developers
- Eclipse IDE for RCP/Plug-in Developers
従来は、Eclipse+SDKに必要なプラグインを追加インストールという形式でしたが、パッケージ別に分かれることにより、パッケージをインストールさえすれば、それなりに利用できるようになりました。また、Java、Java EE、C/C++開発者向けのパッケージには、Eclipse RCPやプラグインを開発するためのPDE(Plug-in Development Environment)が含まれなくなったため、ファイルサイズが小さくなっています。
編集部注:Eclipse RCPそのものについて詳しく知りたい読者は、「Eclipse 3.0のリッチクライアントとは?」を、PDEについては「Eclipseプラグインを作る(1)」をそれぞれご参照ください。
以下、それぞれのパッケージを見ていきましょう。
■ いままでのEclipseの本体 ― Eclipse Classic
Eclipseの基盤とEclipseの基本となるプラグイン群を開発するEclipseトップレベルプロジェクトからのほとんどのリリース物が含まれています。いままで提供されていたEclipse本体(Eclipse SDK)に相当するものです。
Eclipse本体とJavaの開発をサポートするJDT、Eclipseプラグインの開発をサポートするPDEなどが含まれます。
■ Javaアプリ開発 ― Eclipse IDE for Java Developers
Javaアプリケーションを開発するためのディストリビューションです。基本的なJava開発のための機能は含まれますが、PDEは含まれず、その分、サイズは小さくなっています。
また、後述するMylynも含まれています。Java EEを利用したWebの開発ツールは含まれないので、Webアプリケーションを開発する場合は、次のEclipse IDE for Java EE Developerを利用します。
■ Java EE開発 ― Eclpise IDE for Java EE Developers
JavaとJava EEアプリケーション開発のためのプラグインが含まれています。Eclipse IDE for Java DeveloperにWebアプリケーション開発のためのWTP(Web Tools Platform)と、DBを利用するためのDTP(Data Tools Platform)が含まれた状態で提供されています。DTPの詳細については、後述します。
編集部注:WTPについて詳しく知りたい読者は、「Webアプリ作成の標準プラグイン「WTP」」をご参照ください。
なお、Eclipse IDE for Java EE Developerは執筆時現在、ダウンロードのトップサイトから直接ダウンロードはできず、Eclipse IDE for Java Developersのダウンロードのリンクから選択できるようになっています。
■ C/C++アプリ開発 ― Eclipse IDE for C/C++ Developers
C/C++言語で開発を行うためのCDT(C/C++ Development Tools)を含んでいます。シンタックスハイライト、コード補完、ランチャ、デバッガ、サーチエンジンとmakefileジェネレータを提供しています。
Europaからの新機能として、文法のハイライトの改善、GDBハードウェアデバッギングとブレークポイントアクションなどのデバッグの改善、MinGW、IBM xICツールチェインの統合がサポートされます。
■ Eclipseプラグイン/RCP開発 ― Eclipse IDE for RPC/Plugin-in Developer
Eclipseプラグイン、Eclipse RCPによるリッチクライアントアプリケーションの開発をサポートするパッケージです。プラグイン/RCP開発に必要なJavaの開発機能とXMLエディタ、Mylynが提供されています。
また、プラグインやEclipse RCPアプリケーションを開発する際には、Eclipse本体のソースコードを参照しながら実装例を探したり、デバッグ時にEclipse本体の動作を確認する必要があるので、Eclipseプラットフォーム自身のソースコードも含まれています。
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INDEX 「徹底解剖!! Eclipse3.3 Europaの“新世界”」 | ||
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6月はEclipseが生まれ変わる月 Europa、Callistoは木星の衛星の名前 新たな進化の局面 用途別にパッケージを変更してセットアップ いままでのEclipseの本体 ― Eclipse Classic Javaアプリ開発 ― Eclipse IDE for Java Developers Java EE開発 ― Eclpise IDE for Java EE Developers C/C++アプリ開発 ― Eclipse IDE for C/C++ Developers Eclipseプラグイン/RCP開発 ― Eclipse IDE for RPC/Plugin-in Developer |
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コラム Europaの日本語化 Eclipse本体(Eclipse Classic)の新機能 ハイパーリンク機能をデバッグ時に コマンドへのクイックアクセス エラーチェックの強化 ソースコード保存時にアクションを指定 エディタ上のカーソルの位置を保存 プラグインの署名を検証 |
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標準プラグインの強化点 WTPの新機能でらくらくJava EE開発 DBの開発をサポートするDTP 帳票の作成支援機能BIRTも強化 |
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新しく追加されたプラグイン 新たな開発スタイルを示唆するMylyn SOAによる開発をサポートするSTP リモートアクセスと組み込み開発を支援するプラグイン スクリプト言語に対応したDLTK コミュニケーションツールの開発をサポートするECF 待望のUMLエディタ UML Tools Europaの“新世界”を体験しよう |
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