Java Solution
第3回 読者アンケート結果
〜アプリケーションサーバ選択の決め手は?〜
小柴豊 アットマーク・アイティ マーケティングサービス担当
2001/8/28
Webシステム構築でJavaが多用されるにつれ、注目が高まる製品分野がeビジネスのエンジン=アプリケーションサーバ(以下APサーバ)である。J2EE/Webサービスなどの先端技術をいち早く取り入れながら、多くのベンダが熾烈なシェア争いを演じている。一方で、EJB部品を汎用製品としてマーケットで流通させ、ソフトウェア開発のスタイルを大きく変えようとする動きが出てきた。
では実際のJavaエンジニアは、上記のような状況の中でどのような視点でAPサーバを選ぼうとしているのだろうか? そして、EJB部品の流通の可能性をどのように見ているのだろうか? Java Solutionフォーラムが実施した第3回読者アンケートから、その状況を紹介しよう。
APサーバ使用状況 |
まずは読者のAPサーバ使用状況から見てみよう。主なAPサーバ製品の中から「1.現在使用している製品」「2.今後導入予定がある製品」「3.導入予定はないが、試用してみたい製品」をおのおの挙げてもらったのが図1である。現在の使用率ではオープンソースの「Tomcat」が約4割に達しており、Servlet/JSPエンジンとして標準的に活用されていることが分かる。一方J2EE対応の商用APサーバについて各項目のトップ3を列挙すると、以下のようになる。
調査項目 | 1位 | 2位 | 3位 |
現在使用 | WebSphere | WebLogic | JRun |
導入予定 | WebLogic | Oracle 9iAS | WebSphere |
試用意向 | Oracle 9iAS | WebLogic/WebSphere |
現使用率では「WebSphere」「WebLogic」の2製品がほかを一歩リードしており、今後の導入予定/試用意向では「Oracle 9iAS」への興味度が上がっている模様だ。
図1 アプリケーションサーバ使用率/導入予定率/試用意向率(複数回答 N=242) |
APサーバ選択の第1条件は「パフォーマンス」 |
ではこれらのAPサーバを導入する際、読者はどのような点を重視しているのだろうか? 28個の選択肢を設けて、該当するものを選んでもらった結果が図2である。最も多くの支持を得たのは「サーブレットやEJB実行時のパフォーマンス」(全体の74%が選択)であった。選択肢には主要製品最新バージョンの売り文句である「Webサービス対応」(同24%)なども入れてみたのだが、ユーザーサイドとしてはAPサーバの基本である“Webアプリケーションの効率的な実行”により重きを置いているようだ。大手ベンダ間でAPサーバのパフォーマンス・テストに関するリリースが飛び交ったことは記憶に新しいが、今後も機能競争とともに性能競争が激化しそうだ。
図2 APサーバ選択時の重視点:トップ10 (複数回答 N=242) |
EJBコンポーネント製品利用意向 |
さて後半では、APサーバとも関係の深いEJBコンポーネントについてのアンケート結果を見ていこう。2000年に「EJBコンポーネントに関するコンソーシアム」が設立されて以降、「コンポーネントスクエア」「富士通コンポーネントセンター」「コンポーネントバンク」など、EJBコンポーネントの流通を目的とした動きが活発化している。このムーヴメントは、業界の長年の夢である“ソフトウェアの部品化/再利用”を実現することができるのだろうか?
まず、EJB部品について読者の導入/利用意向を尋ねてみたところ、「試しに利用してみたい」との回答が6割を超えたものの、「ぜひ利用したい」人はおよそ1割にとどまった(図3)。しかし、7割以上の人がEJBコンポーネントに関心をもっていることになり、“様子見”ではあるものの、期待も大きいことがわかる。
図3 流通されるEJBコンポーネントの利用意向(N=242) |
利用したいコンポーネントの種類:特定業務よりも汎用製品が人気 |
前項で「EJBコンポーネントをぜひ/試しに利用したい」と答えた読者を対象に、最も利用してみたいコンポーネントの種類を聞いてみたところ、「DBアクセスなど、開発生産性を高める汎用コンポーネント」が過半数の支持を集めた(図4)。「電子商取引/Webサイト管理など目的別にパッケージ化されたコンポーネント」が26%でそれに続いているが、「伝票処理や顧客管理などの個別業務用コンポーネント」「“自動車製造業の在庫管理”など特定業種/業務向けに開発されたコンポーネント」など特定業務用に作り込まれた製品を選択する読者は少なかった。
図4 利用したいコンポーネントの種類(n=178) |
流通コンポーネント利用を推進するためには |
一方、「流通されるEJBコンポーネントを利用したいと思わない」読者にその理由を聞いたところ、「システム構築時に個別のカスタマイズが必要となるので、ソフトの部品化・流通・再利用という理想が実態に合わない」が5割、「コンポーネントをシステムに組み込む際、結局コンサルタントやSIが必要となるので、部品化によるメリットが活きない」が4割となった(図5)。
図5 コンポーネントを利用したいと思わない理由(n=60) |
EJBコンポーネントについての読者コメントを見ると、上記データを裏付ける声がある。“大きなコンポーネントは業務の変更を受けやすく、EJBの流通はローカルルールの適用と汎用性との兼ね合いで成立しづらいだろう。流通は単なる汎用Classと汎用フレームワークで十分” のほかに、開発に役立つ情報の不足(どれくらい工数が削減されるかなど)や、製品使用への抵抗感(自分たちで開発することが自部門の存在意義だという発想)など、流通コンポーネントの利用を妨げるさまざまなハードルが存在することが分かった。ソフトウェアの部品化/再利用を実現するためには、これらのハードルを1つずつ越えていくプロセスが必要なようだ。
調査概要 | |
調査方法
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Java SolutionサイトからリンクしたWebアンケート |
調査期間
|
2001年6月25日〜7月17日 |
有効回答数
|
242件 |
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