宮原徹的Linux生活
其の八 Linus氏登場に会場大爆笑?
宮原 徹
2001/2/10
皆さん、こんにちは。み。です。
2回ほどお休みいただいてました。ちょっと身辺がバタバタしていたりしたもので、毎回楽しみに読んでいてくれた全国3人の皆さん、すみませんでした。
さて、そんなバタバタの理由の1つがニューヨークで行われたLinuxWorldに参加してきたことなんですが、そのときに感じたことなどをつらつらと書いてみたいと思います。
コミュニティ人種というもの
今回はニューヨークということでシリコンバレーから遠く離れてたとはいえ、Linuxのオリジナル作者であるLinus Torvalds氏をはじめとして、たくさんのLinuxオープンソースコミュニティの人々が参加していた。米国でのイベントに参加するといつも思うのが、コミュニティ人種というものの質の差である。
例えば、こんな一幕。コミュニティで有名な人たちを集めてのクイズ大会では、会場からも参加者を募った。司会者が「この中でLinuxにコードで貢献してる人!?」と問いかけると、会場内からちらほらと手が挙がり、司会者が指名した人が壇上に上がると、実はLinus氏本人で、会場は大爆笑。まあ、Linus氏は最初から1番前の席に座っていたし、あらかじめ仕込んであった「ネタ」ではあるが、これがオープンソースコミュニティの「ノリ」でもある。
会場に目を転じてみると、会場内の一角に「.Orgパビリオン」というエリアがある。文字どおり、.orgドメインを取って活動しているコミュニティが出展しているエリアなのだが、例えばFree Standard GroupやOpen Source Development Laboのようにまじめに活動しているところの出展もあれば、なぜかプレステ2を大画面テレビにつないで『真・三國無双』をやりまくっているブース(Linuxマシンは1台もなし!)もあったりと、これまた訳の分からないエリアとなっている。
このように、コミュニティ的な人種のノリというのは、明らかに一般人やそれこそビジネスマンのそれとはかなり違うものがある。確かにまったく相いれないというか、ほとんど関係なく活動をしている人々もいるが、けれどもそういったものも許容しつつ、コミュニティとビジネスがうまく融合しつつある雰囲気がある。これが、米国のマーケットの力強さにつながっているのではないかと思う。日本ではどうか。もっと考えるべきところもあるのではないだろうか。
エンタープライズでのLinux
今回のイベントのキーワードはずばり「エンタープライズでのLinux」であった。実際、どの基調講演を聞いても内容は「Linuxはエンタープライズに使える」「2001年はLinuxでエンタープライズの年だ」の繰り返しばかり。正直どれも似たり寄ったり、あまり代わり映えのしない内容が多かったように思う。まあ、これも市場の方向性、あるいはそうであってほしいという期待も含まれているのであろう。
では、実際問題としてLinuxはエンタープライズで使えるのか。
リリースされたばかりのカーネル2.4も、安定性や高速性など、企業システム向けをかなり意識したバージョンアップであるといえる。今回のLinuxWorldで紹介されている製品技術を見てもエンタープライズ向けの技術、例えばクラスタリング技術は花盛りという感じである。これも、安定性(複数台構成により冗長度を高める)と高速性(分散処理による単位時間当たりの処理速度向上)を目指したものである。CPUにしても、IntelのIA-64やAMDのx86-64といった64bits CPUも一般化しつつあり、高速かつ大容量のシステム構築が可能になりそうだ。
IBMの基調講演では、シェル石油の事例として石油採掘のための分析システムをLinuxで構築した例がビデオで紹介された。また、OracleなどのERPがLinuxで本格的に稼働し始めているなど、選択肢として十分に入りつつある。あとは、ユーザーあるいはシステム提供者がLinuxを採用するかだ。
そんな流れの中で今回着目したのは、オープンソースソフトウェアをコアにした製品およびサポートを提供する会社である。例えばPostgreSQLのGreatBridge、ApacheのCovalent、GNOMEのXimianなどである。これらの会社は、コアのオープンソース開発者が何人か社員として開発に従事しており、付加価値のあるパッケージを開発していたり、場合によってはパッチなどの提供を行う、従来型の商用ソフトウェアの開発・販売形態に限りなく近いものになっている。強いていえば、ソフトウェアを独占的かつ排他的に所有するというよりも、人やそのノウハウをビジネスに生かしているところが新しいといえる。これは、従来型の資本主義経済におけるビジネスモデルでは説明のつかない形態である。
果たしてこのようなモデルが成功するのか? ここにLinuxによるエンタープライズシステム構築成功のカギがあるのではないだろうか。
そういう意味で、今回のイベントはエンタープライズ・ビジネスへの大きなシフトを感じさせる内容であった。その成果が出るのは、半年後のサンフランシスコか、あるいは1年後に再度巡ってくるニューヨークであろうか。
「宮原徹的Linux生活」 |
筆者紹介 |
宮原徹 Project BLUE/日本Samba ユーザ会会員。データベースの活用を中心としたLinuxによるビジネスソリューション構築のため、公私にわたり日々活動している。Linux Squareフォーラムのガイドとして、記事の執筆などを行う |
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