書評
次世代バックボーン技術を学ぶ
〜MPLS+10GbE
アットマーク・アイティ 編集局
鈴木淳也
2002/5/16
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ADSLやFTTHに代表されるブロードバンド・アクセスが一般に浸透しつつあり、バックボーンに対するさらなる高速化の要求が高まりつつある。企業向けサービスとしてはIP-VPNや広域イーサネット接続サービスがブームになるなど、特にキャリアにとっては、従来まで構築していたバックボーンを改良し、新しいサービスの提供に柔軟に対応できる体制が必要になっている。
今回は、その中心となる技術であり、2002年のネットワーク業界の最大のトピックである「MPLS(Multi Protocol Label Switching)」「10ギガビット・イーサネット(10GbE)」について学べる書籍を紹介していこう。MPLSは、発案当初の高速なルーティング機能の提供という目的から、ATMベースのネットワークの統合によるIPサービスの提供や、レイヤ2ベースのパケットをそのままMPLS上で転送する「EoMPLS(Ethernet over MPLS)」への発展など、その役割を徐々に広げつつある(参考記事「特集:MPLS技術とその最新動向を知る」)。10GbEにおいては、従来のイーサネット技術の信頼性を高め、長距離伝送を可能にすることで、安価なWAN向けの技術としての利用が期待されている。
今回紹介する書籍で、ぜひネットワークの最新トレンドと技術を学んでほしい。
■MPLS入門はこの1冊から
MPLS入門 Bruce Davie/Yakov Rekhter 著、トップスタジオ訳/池尻雄一 監修 |
以前掲載した記事「書評:VPNを実現する技術を学ぶ!」において、MPLSを取り扱った国内初の解説書として「MPLS&VPNアーキテクチャ」を紹介したが、こちらは想定する読者対象がかなり高めに設定されており、解説のベースがCisco製品になっているなど、どちらかといえば一般向けの本ではなかった。今回紹介する「MPLS入門」は、タグ・スイッチングなどのMPLSの歴史から始まり、動作原理や用語の解説、応用例までまんべんなく解説しており、まさに入門書の王道ともいえる体裁となっている。
冒頭でまずMPLSの歴史について簡単に触れ、次にLSR(Label Switching Router)の役割やラベル交換の仕組み、ヘッダの動作などについて解説している。MPLSの基本アーキテクチャについての解説を一通り行ったうえで、後半でBGP/MPLS-VPNなどの最近のトレンドであるIP-VPNサービス関連の話題も扱っている。本書自体は翻訳モノであり、書かれている内容と(国による事情や翻訳タイミングのラグによる)ギャップが気になるところだが、国内IP-VPNサービスの第1人者でもある池尻氏のコメントという形で、きちんとフォローが加えられているのも嬉しいポイントだ。
図版よりも文章を中心に構成しているため、一瞬重めの印象を受けるかもしれないが、ストーリー仕立てで無理なく読めるようになっており、MPLS入門者にも安心してお勧めできる。「MPLSとは何か知りたい」と考えている人は、まず本書からスタートするといいだろう。
■MPLS学習の資料として活用しよう
マスタリングTCP/IP MPLS編 Eric W.Gray 著/苅田幸雄 監訳 |
TCP/IPの学習書として定評のある「マスタリングTCP/IP」シリーズの最新版として登場したのが、この「MPLS編」だ。これまでのシリーズは、国内の技術者が1から書き起こしたものが中心だったが、本書は「MPLS the Implementing Technology」の邦訳版をマスタリングTCP/IPのMPLS編として発刊したものである。そのため、分かりにくいポイントや事情が異なるところなどは、「MPLS入門」と同様に、監訳者のコメントという形でフォローが加えられている。
構成については、「MPLS入門」とほぼ同様に、MPLSの歴史〜仕組み〜実装の段階を踏んで解説を行っている。本書もMPLSの入門書という位置付けだが、読んだ印象では「MPLS入門」よりも、ややレベルが高めだと思われる。解説のボリュームも、全体をまんべんなくというよりは、MPLSの規格(歴史も絡んでくる)や仕組みの部分により踏み込んでおり、「MPLS入門」が(比較的)一般向けとするならば、本書はより技術者寄りといったところだろう。図表がきっちりと用意されているため、学習書+資料としての使い方ができるのではないのだろうか。
MPLSは、まだまだ進化を続けるテクノロジだ。「マスタリングTCP/IP 入門編」のように、本書もその時々の事情に合わせて、今後の定期的な内容のアップデートを期待したいところだ。
■話題の10GbEを体系立てて学ぼう!
10ギガビットEthernet教科書 石田 修/瀬戸康一郎 監修 |
ネットワーク技術者の学習書の定番ともいえる「〜教科書」シリーズの最新版が、この「10ギガビットEthernet教科書」だ。イーサネットの仕組みから、インターフェイスの仕様、その関連技術まで幅広く扱っており、10GbEだけでなくイーサネット全般について体系立てて学ぶのに最適な構成となっている。
本書はおおまかに、前半がイーサネットの歴史や10〜10Gbpsの各イーサネット規格全般の話について、後半がRPR(Residential Packet Ring)の技術解説や広域イーサネットなどの最新トレンドを意識した10GbE中心の解説となっている。特に、広域イーサネットやWAN/MANに代表される長距離伝送に関する技術解説や最新動向の解説が充実しているのが特徴である。現状で、このあたりの話題をしっかりとまとめた書籍はほとんどないため、ここだけでも読む価値は十分にあるだろう。
イーサネットは、10〜100Mbpsがエンド・ユーザー端末の接続向け、ギガビット・イーサネットがバック・エンド向け、10GbEが中・長距離バックボーン向けと、新しい規格が登場するごとにその役割を変えつつある。本書で個々の規格をいちど整理することで、10GbEの持つ意味や役割が理解できることだろう。
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