PC Insider 編集後記 2001年8月 |
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COMPAQへのレクイエム 本来ならば9月末の編集後記の話題なのだろうが、今回はHPによるCompaq Computerの買収について語りたい。 2001年9月4日、「HP、Compaqを買収」のニュースが流れた。寝耳に水だったのは、どうも報道関係者ばかりではく、日本HPとコンパックコンピュータの社員達も一緒だったようだ。業界内に激震が走ったのはもちろんのこと、社内も大きく動揺したようだ。この買収劇について述べるのは、別記事(元麻布春男の視点:HPとCompaqの決断に明日はあるのか?」)に譲るとして、ここでは買収完了後、なくなってしまうCompaqに関する思い出を少し語ろう。 米テキサス州ヒューストン郊外にあるCompaq本社に取材したのは、1992年のちょうどこの時期のこと。もう9年も前のことになる。森の中にたたずむ*(アスタリスク)型の3階か4階建ての建物がいくつか並び、それが長い廊下でつながるという構造であった。SF映画で出てくる研究所のような雰囲気を持っていた。建物は、事務や研究開発の各部署と、工場が一体となっており、工場の横にクオリティ・テスト用のラボがあったのを覚えている。「キーボードのキータッチや耐久性を調べるような機器を独自開発し、品質向上に努めている」という説明も受けた。確かに、その頃のCompaqのキーボードは、お金がかかっており、打ちやすいものであった(自宅では、未だにその頃のCompaqのキーボードを愛用しているほどだ)。 1992年といえば、米国は不景気の最中、ちょうどいまの日本の状況に似ていた。その中でCompaqは、生産効率を上げ、PCの低価格化を実現することで飛躍的にシェアを伸ばしていた。とはいえ、いまとなっては考えられないことだが、研究開発に投資し、独自のPCアーキテクチャを設計する余裕が十分にあったのだ(その後、Compaq独自のチップセットを採用したPentium搭載PC「DESKPRO 5/60M」を販売したが、それが独自チップセットの最後の機種となってしまった)。「New Era(新時代)」というノボリを掲げ、不景気でありながらも、元気な企業という印象を受けた。そのCompaqが、いま歴史の幕を閉じようとしている。1982年に、事実上初のPC互換機を開発し、「IBM PC」を単なる「PC」に変え、世界中に広めたのは、まさにCompaqの功績でもある。 個人的には、「HPのCompaqの買収はシナジー効果がまったくない、失策である」と思っているが、その結論を出すのは早計かもしれない。1年後、2年後の新生HPの姿を見てから、論評すべきだろう。こうしたPC業界の歴史を記録するというのも、我々の大事な仕事かもしれないと感じた今日この頃である。数年後、気が付いたらHPも業界から消えていたということにならないことを願いたい。 (PC Insiderガイド 小林章彦) |
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編集後記 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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