IT Market Trend第1回 PCサーバ/UNIXサーバ市場の現状日本ガートナー・グループ株式会社 |
このところPCサーバ/UNIXサーバ市場が好調である。従来型のクライアント・サーバ型システムに加え、新たにe-Business、iDC(インターネット・データセンター)などの需要も活発化している。ガートナー/データクエストでは、国内外のIT市場について調査分析を行っているが、ここでは最新の国内サーバ市場データをもとに、PCサーバ/UNIXサーバ市場の現状を解説する。 |
急成長中のPCサーバ市場
PCサーバ市場は確実に成長している。1997年の年間販売台数は17万1276台であったPCサーバ市場は、1999年には23万9572台になった。この3年間、平均24.8%で増加した結果、市場規模はおよそ1.4倍になっている。
国内PCサーバ市場の推移 |
出典:ガートナー/データクエスト(2000年11月) |
PCサーバ市場は、今年に入っても順調に拡大を続けている。2000年上半期(1〜6月)の出荷は、台数で前年比30.2%増の14万3545台、金額で11.5%増の934億円であった。このことから、2000年のPCサーバ市場規模は、ほぼ確実に30万台を突破するものと予測している。
このように成長を続けているPCサーバ市場であるが、はたしてシェアはどうなっているのだろうか。
台数ベースでは日本電気(NEC)がトップである。以下、富士通、コンパックコンピュータ、日本アイ・ビー・エム(日本IBM)の順となっている。これら上位4社は1999年同期と入れ替わりはない。続いて1999年で6位だったデルコンピュータが5位に浮上。逆に日本ヒューレット・パッカード(日本HP)はデルコンピュータと僅差ながら5位から6位に順位を落としている。
金額シェアでは、上位4社は1999年同期と同様、日本電気、富士通、コンパック、日本IBMの順である。5位には日本HPが入っている。
1999年および2000年上半期(1〜6月)国内PCサーバ市場における各ベンダのシェア(出荷台数) |
出典:ガートナー/データクエスト(2000年11月) |
PCサーバについては、これまでと同様、低価格化競争が繰り広げられており、ローエンドでは10万円台のモデルも数多く出荷されている。一方、2000年に入り、これまでと違った傾向も見え始めている。目新しいのは、新たに登場した薄型ケース採用モデルの需要が増していることだ。当初、ISPやデータセンター用途向けが中心と考えられていたが、設置面積の観点から一般の企業内で使用されるケースも多くなってきている。注目されるLinuxについても、各ベンダからバンドル・モデルが出荷されるにつれ、ベンダが動作保証していることをユーザーが好感し、次第にサーバ用途での使用も増えつつある。
PCサーバ出荷好調の背景
PCサーバが好調な出荷を続けている主な要因には、以下の事柄が挙げられる。
- 製品の低価格化、高性能化
- インターネット関連システム需要
- ITを導入する機運の高まり
- ラック・マウント・タイプ・サーバの需要
これら要因の中で、出荷増に最も貢献しているのは、「製品の低価格化」であると考えられる。特にデルやコンパックなどの外資系を中心に、熾烈な価格競争が継続的に繰り広げられているのは周知のとおりである。実際、データを見ても徹底的に低価格化戦略を打ち出している外資系の伸びが大きくなっており、国内ベンダと外資系ベンダの出荷台数の差は確実に縮まりつつある。
ちなみに、1999年の国産ベンダの伸び率は25.6%増、外資系ベンダは17.4%増であったが、2000年上半期には、それぞれ16.0%増、50.8%増となっており、外資系ベンダの方が圧倒的に伸び率が高い。
国産、外資系ベンダのPCサーバ出荷台数推移 |
出典:ガートナー/データクエスト(2000年11月) |
外資系ベンダは、世界規模で製品展開を行っているため、規模の経済により製品単価を下げてもある程度の売り上げ・収益を確保することができる。もちろん、これにはデル・モデルで知られるような先進的なサプライ・チェーンを駆使した徹底的コスト削減が前提となっている。
販売店やSI業者、VAR業者を中心とするチャネル販売が中心の国産ベンダが、このような外資系ベンダといかに競争していくかについては、これまで決め手となる解が見つかっていなかった。しかし2000年に入り、この状況も変わりつつある。例えば日本電気は、PCサーバの部品や製品をインテルに供給することで合意した。また富士通は、ヨーロッパで展開している富士通シーメンスとのグループ販売にこれまで以上に積極的になってきており、GRANPOWER 5000から世界共通ブランドのPRIMERGYへブランドを統一したことにも表れている。
このように国産ベンダも、製品あるいは部品のレベルで世界展開を推進し始めている。こうした戦略が功を奏するかどうか、今後の動向に注目したい。
大きく動き始めたUNIXサーバ市場
日本国内におけるUNIXサーバ市場の推移を以下のグラフに示す。
国内UNIXサーバ市場の推移 |
出典:ガートナー/データクエスト(2000年11月) |
UNIXサーバ市場は、1997年と1998年でほぼ横ばいであった。しかし1999年に入り拡大傾向となり、2000年の1〜3月から成長率がさらに高まってきている。ちなみに、2000年上半期の国内UNIXサーバ市場における出荷は、台数で前年比43.5%増の2万5628台、金額で30.3%増の1456億円となっており、巷でいわれているUNIXサーバ・ブームを裏付けるものとなっている。このような状況は年内いっぱい続くとみられ、1999年に3万6415台であった国内UNIXサーバ市場は、2000年には5万台に達するものと考えられる。
UNIXサーバについては、1999年に独自の.COM(ドット・コム)戦略でサン・マイクロシステムズが市場をリードした。今年、ほかのベンダがどれだけ巻き返しを図ることができるかが注目されている。
2000年上半期までの集計では、台数ベースで、サンがシェア52.1%でトップ。以下、日本HP、富士通、日本IBMの順となっている。1999年3位の日本電気は5位までシェアを落としている。
売上金額の上位3社は1999年と同様、サン、日本HP、日本IBMの順。4位は1999年に5位であった富士通。5位は1999年7位の日本SGIである。
1999年および2000年上半期(1〜6月)国内UNIXサーバ市場における各ベンダのシェア(出荷台数) |
出典:ガートナー/データクエスト(2000年11月) |
ここで、シェアの推移だけを見ると、サンと富士通のみが好調であったかのような印象を受ける。しかしながら、市場全体が43.5%増であることから、決して他社が伸び悩んでいたわけではない。
これを示すのが、以下のグラフである。このグラフは1999年上半期および2000年上半期におけるベンダ別UNIXサーバ出荷台数の成長率を表している。
確かに2000年上半期におけるサンと富士通の伸びは、他社に比べて大きい。しかし、1999年はサンのみが成長していたのに対し、2000年では日本HPや日本IBMの成長率も高くなっており、これは1999年と大きく異なる点である。このことは、1999年のUNIXサーバ市場はほぼサンのみで牽引していたのに対し、2000年に入りUNIXサーバ市場全体が活気づいていることを示している。
1999年および2000年上半期(1〜6月)国内UNIXサーバのベンダ別出荷台数対前年比増減 |
出典:ガートナー/データクエスト(2000年11月) |
このような活性化はUNIXサーバ市場全体にとってプラスの影響をもたらすだろう。ユーザーにとっては、各ベンダが競争することで、よりコストパフォーマンスの高いサーバを選択することが可能になる。実際、1999年末から2000年にかけて、各ベンダ、特に日本HPや日本IBMなどがサンに対抗すべくローエンド薄型サーバからハイエンド製品までのすべてにわたってラインアップを拡充した結果、ユーザーの選択肢は大幅に広がっている。競争が激化するサーバ市場であるが、必ずしもこのことは、ベンダにとってマイナスとも言えない。例えば、サンにしてみれば、数年前のオープン・サーバがPC(Windows NT)サーバ一色になりかねなかった状況を考えれば、競合が激化するとはいえ、現在の状況はむしろ歓迎すべきことであるとも推察される。
UNIXサーバ市場が目指す新たな市場は、e-Business市場およびメインフレーム市場である。従来メインフレームの独壇場であった基幹系システムは、e-BusinessやERPなどの新たなコンセプトの登場により変化せざるを得ない状況にあるが、この市場で優位にあるのはやはりUNIXサーバである。当然、UNIXサーバはまだ信頼性の点でメインフレームに及ばないため、現在の社会的インフラの中核をなすようなシステムがすべてUNIXサーバに置き換わるということには当面ならないだろう。しかし、UNIXサーバは着実にこの領域に浸透しつつある。今後数年にかけて、メインフレーム市場は特に中小型市場からUNIXサーバに市場を奪われることになるだろう。
今後、ミッドレンジ・サーバ市場には、高性能化が進むPCサーバも参入してくる。特にIA-64(Itanium)搭載サーバの登場は現在のUNIXサーバ市場のポジショニングも変える可能性を持っており、数年後にはサーバ市場の構造も大きく様変わりするものと考えている。
今後の市場予測や具体的なベンダ動向などについては、別の機会にあらためて考察したい。
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