連載Mobile Insider第2回 PC EXPO 2000モバイル機器レポート 塩田紳二 |
ここでは、6月27日から29日まで、米国ニューヨークで開催されたPC EXPOの出展内容から、モバイル関係のものをレポートする。
今回のPC EXPOは、「PDA&ワイヤレス」とか「モバイル」といったキーワードでくくることができるイベントであった。大きな話題としては、
- ソニーのPalm OS機
- TransmetaのCrusoe搭載ノートPC
の2つである。TransmetaのCrusoe搭載ノートPCについては、別途レポートするのでそちらを参照していただきたい(近日公開予定)。
ソニーのPalm OS搭載PDA「PEG-S500C」 |
2000年7月13日に日本で発表となったソニーのPalm OS搭載のPDA。写真のカラー モデル以外にモノクロ モデルの「PEG-S300」がラインアップされている。メモリースティック対応とジョグダイヤルの装備が特徴。 |
ソニーのPalm機の詳細は、日本国内で発表されたニュースリリースを参照していただくことにし、ここではPC EXPOの展示内容を簡単にレポートしておこう。PC EXPOで展示されたのは、PEG-S500Cという機種だ。カラー液晶で、USBにてPCと接続を行う。最大の特徴は、ジョグダイヤルとメモリースティック スロットを装備していること。どちらもオリジナルのPalmやほかのライセンシのマシン(VisorやTRGPro)には装備されていないものだ。特にユーザー インターフェイス用のジョグダイヤルのために、内蔵アプリケーションはカスタマイズされたものが組み込まれている。Palm OSは、デフォルトではジョグダイヤルなどの入力インターフェイスに対応していないため、ジョグダイヤルの「決定」動作を行わせるためには、アプリケーション側が対応している必要がある。
メモリースティックも、PCP(Palm Computing Platform)では初めての採用だが、すでにVisorがSpringBoardを、TRGProがコンパクト フラッシュ(CF)を外部拡張/記憶メディアとして採用している。Palm OSには、こうしたメモリカードを扱う仕組みはあるのだが、いままでPalm自身がメモリ カードを扱う機種を出していないため、メモリ カードの使い方(特に、データは本体側のメモリに置くべきか、メモリ カード側に置くべきかといったこと)に関する指針が明らかになっていない。このため、メモリースティックとメイン メモリ間でデータやプログラムのコピーといった操作を行うことはできるが、データをメモリースティック側に置いた場合に、アプリケーションからアクセスするための統一的なAPIがないといった問題がある。そのため、当面は、メモリースティックとのデータのやりとりを行うAPIなどをソニーが独自に定義して、これにアプリケーションが対応する必要がある。
ソニーでは、こうしたジョグシャトルやメモリースティックの扱いについて、SDKなどを提供し、開発者をサポートしていく予定だという。開発者向けの専用のホームページも開設したということだ。
■サードパーティが充実したPalm陣営
Visorの発売元であるHandSpring社のブースには、多数のSpringBoardメーカーが集まり、さまざまなSpringBoardが展示されていた。GPSモジュールや、モデム、無線モデム、バーコードリーダー、デジタル カメラ モジュール、MP3プレーヤーなどである。
Handspringのホームページには、今までいろいろとサードパーティのSpringBoardのアナウンスが行われてはいたのだが、実際には開発のアナウンスのみで、簡単に手に入るのは、Handspring製のメモリ カードやバックアップ カードなどであり、SpringBoardが充実しているとは言い難い印象があった。しかし、実際に多くのメーカーが実物を展示しており、今後はかなり期待ができそうだ。中には無線モデムなど、日本国内では利用できそうもないものも含まれてはいるが、デジタル カメラやバーコード リーダーなどはすぐにでも導入が可能だろう。
これに対して、Palm社は、ソフトウェア ベンダも含めたさまざまなサードパーティを出展させていた。細かいアクセサリなどを含めれば、まだまだ、Palmシリーズのほうがサードパーティが多いように感じる。
■若干差をつけられたPocket PC陣営
このPalmに対抗する勢力の1つが、旧Windows CEのPalm-size PC、つまり現在のPocket PCである。米国では、CASIO、Compaq、Hewlett-Packardの3社が発表を行っている。Microsoftも自社ブース内に最新のPocketPCを展示し、実機に触れながら講習を行うセミナー ブースなども設置していた。また、会場で無料で配る袋(スポンサーはMicrosoft)には、この3社のPocket PCがカラー写真で刷り込まれており、力を入れていることが伺えた。
Microsoftの意気込みは分かるが、全体的にはPalm系のほうが展示が多く、特にサードパーティの数で差をつけられている感じがした。CASIOは、5色のカラー バリエーションを持ち、SDカードスロットを持つスリム デザインのEM500や、業務用でリチウム ポリマー電池を採用し、防沫、対ショック仕様のEG-800などを自社ブースで展示しており、CE機の中では目立った存在だった。
ワイヤレス サービス
米国では、携帯電話のデジタル化が進んでおらず、また、まだページャー(日本でいうポケット ベル)がかなり利用されている。1つには、このページャーが双方向で、データ転送速度が19200bits/s程度あるため、メールやテキストベースのWebアクセス程度であれば十分利用できるからでもある。
こうしたサービスは、BellSouthのBSWD(Mobitex)やMotinetのARDIS、NovtelのCDPD(Minstrel)などのキャリアがインフラを整備してネットワーク サービスを行っているが、この上で、インターネット接続サービスを行うGo AmericaやOmniSkyなどのプロバイダなども存在する。たとえば、Palm VIIのワイヤレス サービスも、BellSouthのインフラが利用されている。
双方向ページャーは、小さなキーを持ち、簡単なメッセージが送れるものが主流で、Research In Motion社のRIM850/950などが主流だ。最近では、大きな液晶を持ち、PDA機能を持つRIM957も登場している。
このほか、Palm用のアダプタやVisor用のSpringBoard、PCカード型などの無線モデムがあり、これらを使ったワイヤレス インターネット サービスが普及しつつあるという。たとえば、Go Americaでは、59.95ドルで1カ月の無制限のアクセスが可能であり、またMinstrelでは同様に月額49.95ドルと価格的に個人でも手が届く範囲になっている。全米をくまなくカバーとはいわないが、主要都市の近辺では利用可能である。
Bluetooth
今回、Bluetoothはもう少し出展があるかと思ったが、あまり出展が見られなかった。展示としては、東芝のデモやIBMとEPSONのデモなどがあった程度だ。もっとも、各社とも将来的にBluetoothに対応することは明言しているので、デバイス開発の遅れが解消すれば、もう少し状況は明るくなるのではないだろうか。
ソニーのPalm Computing Platformマシン「PEG-S500C」。下の銀色の部分はクレイドル(PCとの接続アダプタ)。 | PEG-S500Cのメモリースティック スロット付近。本体上部にスロットがある。手前の黒い部分は、赤外線ポート。本体側面にジョグダイヤルが見える。 | ||
ソニーは、メモリースティックにI/Oを搭載する「Memory Stick Media Applications」のモックアップを展示した。デジタル カメラやGPS、Bluetooth(Infostick)などのアダプタが見える。 | GeoDiscovery社のGPSモジュール「Geode」。今年の夏発売予定。 | ||
Remote Solution社の無線モデムモジュール「InfoMitt Access」。 | Innogear社のMP3モジュール「MinJam」。内蔵メモリは32Mbytesと64Mbytesの2種類。MMCカードで拡張が可能。 | ||
Franklin社の電子ブック モジュール。辞書や聖書などが収録されている。 | Blocks Productsのデジタル カメラ モジュール「eyemodule」。カラーで最大320X240ドットの撮影が可能。 | ||
Card Access社の薄型モデム「Thincom」。ブラウザとメール ソフトが組み込まれているらしい。 | Nexian社のGPSモジュール「HandyGPS」。 | ||
PSC社のバーコード リーダー。バーコード リーダー モジュールは、Symbol社からも出展されていた。 | Singapore Shinei Sangyo社の最大8分の録音が可能なボイス レコーダー モジュール「my-Vox HS-1」。 | ||
衛星ラジオ受信モジュール。CUE社の「CUE Redio」。FMステレオ放送の受信のほか、交通やニュース、天気などのデータ放送や電子メールの着信通知などのサービスがある。 | Palm社のブースには、多くのサードパーティ ブースが参加。これはPalm用の周辺装置。中央に見える黄色いものは、De LormeのGPS「Earthmate」。 | ||
Palmブース。こちらはRand McNally社のGPSアタプタ。Palm V用もある。 | Palm III用のワイヤレス モデム。Novatel社の「Minstrel III」。 | ||
指紋を照合するPalm用アダプタ。Mytec社の「MPAD」。 | Hewlett-Packard社のPocket PC(Windows CEマシン)である「Jornada 545」。 | ||
CASIOの業務向けPocket PC「EG-800」。リチウム ポリマー バッテリを採用しており、最大13時間の動作が可能。 | MMCスロットを持つCASIOのPocket PC「EM-500」。カラーバリエーションで全部で5色ある。MMC採用のためコンパクトになっている。 | ||
Compaqの「AERO 1550」。モノクロ スクリーンを採用したため薄型。 | Compaqの「ipaq H3600」。カラー液晶を採用する、かなり金属的なデザインのPocket PC。 | ||
電子ブック再生ソフトウェアであるMicrosoft Readerを装備したFlanklinの「e-Bookman」。200X240ドットの液晶を持ち、USBでパソコンから電子ブック データを転送する。 | 東芝のブースで行われていたBluetoothのデモ。PC左側のカード スロットに装着されているのがBluetoothカードで、写真左のモデムと無線で接続している。 | ||
BluetoothによるEPSONのプリンタとの接続デモ。プリンタは、Bluetoothインターフェイスを内蔵している。プリンタは試作機のようで、背面からはアンテナ回路が飛び出していた。 | Reserch In Motion社の「RIM957」。BlackBerryという愛称を持つ。PDA機能を内蔵しているのが特徴だ。 | ||
Reserch In Motion社の「RIM950」。アイコンベースの操作が本体右側のダイヤル可能。 | 128kbits/sで接続が可能なMetricom社の「ricochet無線モデム」。 | ||
Novatel Wireless社の無線モデムとVisorの接続例。Novatel社は、前出のPalm用だけでなく、SpringBoardも開発中。 | |||
PC EXPO 2000で展示されたPDA関連製品 |
関連リンク | |||
ソニー | Palm OS採用でメモリースティック対応のカラー液晶携帯端末を発表 | ||
ハンドスプリング | Visorの製品情報ページ | ||
MDS | TRG Proの製品情報ページ | ||
アスク | TRG Proの製品情報ページ | ||
BellSouth | Mobitexに関する情報ページ | ||
Motinet | Motinetのホームページ | ||
Novatel Wireless | Novtelのホームページ | ||
GoAmerica Communications | Go Americaのホームページ | ||
OmniSky | OmniSkyのホームページ | ||
Research In Motion社 | RIM850/950の製品情報ページ |
「連載:Mobile Insider」 |
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