連載Mobile Insider第4回 Palm系PDA周辺機器 最新事情−−ルイ・ビトンからデジカメまで続々と登場 塩田紳二 |
Palm系PDA(Palm Computing Device)の魅力の1つは、数多くのサードパーティから販売されているアクセサリや周辺機器である。ことに米国のPDA市場の7〜8割を占めるといわれているPalm系では、ソフトウェアなども含め、サードパーティがグループを形成しつつある。ここでは、その概要を紹介することにしよう。
どのような周辺機器があるか?
「第3回:Palm系PDAはこう見分ける」で解説したように、Palm系PDAと周辺機器の接続手段としては、シリアル・ポートや拡張スロットなどがある。機種により、装備しているインターフェイスやコネクタ形状に違いがあるため、実際には利用できない組み合わせがある(変換コネクタなどを自作することで原理的には接続できるかもしれないが)。特に、最近登場したソニーのCLIE(クリエ)は、シリアル・ポートと拡張スロット(メモリースティック)が、ほかのPalm系PDAの周辺機器とは互換性がないため、現状ではソニー純正のオプションしか利用できない状態である。
なお周辺装置の中には、IrDAポートを経由して接続するものもあり、それらについては、ほぼどの機種でも利用できる。またIrDAで接続するデバイスの場合は、Palm側のドライバを用意できれば、汎用のIrDA対応プリンタなどでも利用可能だ。
主な周辺装置としては、表のようなものがある。
種類 | ベンダ | 製品名 |
通信系(モデムや携帯電話接続インターフェイスなど) | アイ・オー・データ機器 | SnapConnect |
入力系(キーボードなど) | Palm | ポータブル・キーボード |
GPS | RAND McNALLY | Street Finder GPS for Palm |
サウンド関連 | Landware | goVox |
画像関連 | Kodak | PalmPix |
主なPalm対応周辺機器 |
また、拡張スロットを持つ機種では、フラッシュメモリなどを使うストレージ・デバイスが用意される。
このほかアクセサリとしては、ケースやスタイラス・ペンなどが多く、首からぶら下げるための金具とか、自動車に固定するための台などもある。特にケースは、Louis VuittonやCoachなどのいわゆるブランドものもあり、従来に比べるとPDA自体が広く社会に認知されてきたことを伺わせる(ただし、ブランドものはやはり高価だ)。
Louis VuittonのPalm V/WorkPad C3用ケース | CoachのPalm用ケース |
ケースの革には、Louis Vittonの証であるLVマークが印刷されている。ケースは、一見手帳のように見える。 | Coachは、横開きのチャック式とボタン留め式、縦開きのチャック式、メモ・パッドも収納できるミニ・ポータブル式の合計4種類のPalm用ケースをラインアップする。 |
日本でも販売が開始され始めた通信系周辺装置
米国では、双方向ページャ(ポケット・ベルの一種)のインフラを使った、Palm VIIという通信機能付きPDAが販売されているが、それ以外にも、同じようなインフラを使って、通信サービスを提供しているところがいくつかある。これらは、やはりPalm用のワイヤレス・モデムをサービス込みで販売している。米国では、デジタル携帯電話が日本ほど普及していないこともあって、携帯電話で通信することは少なく、ページャが双方向サービスとなっている。通信速度は9600bits/s程度と日本のデジタル携帯電話(PDC)並で、比較的低価格(通信量無制限で60ドル/月程度)でサービスが提供されている。
アイ・オー・データ機器のSnapConnect |
Palmとデジタル携帯電話やPHSを接続するための通信アダプタ。SnapConnectと携帯電話とは付属のケーブルで接続する。 |
日本国内での通信系周辺装置としては、アナログ・モデムと携帯電話アダプタが主流だ。後者は、パソコンの周辺装置で有名なアイ・オー・データ機器がSnapConnectシリーズを販売しており、デジタル携帯電話(PDC)やPHSによる通信が行える。またソニーは、同様のアダプタを純正オプションとして製品(CLIE)にバンドルして販売している。
このほか、日本のパーム コンピューティングは、2001年4月ごろから、NTTドコモのパケット網を使って、日本でも米国と同様の無線通信サービスを開始する予定だ。この時点で、従来機種向けになんらかのアダプタが提供されるのではないかと予想される。
また日本IBMは、業務用にPHSモジュールを内蔵したWorkPadを販売している。これについては、2000年11月21日に個人向けにも販売することが発表された(日本IBMのニュースリリース)。ただこのモデルは、現状のWorkPad 30JにPHSモジュールを追加しただけのうえ、PHSモジュールはハンドオーバー(移動中の基地局の変更)が行えないなど、若干仕様が古い点が気になる。
各種登場したキーボード
Palm系PDAでは、独自の入力方式により、文字入力は従来のPDAと比べれば楽になっているのだが、それでも少し長い文章を入力するとなると、やはり大変な作業である。このため、Palm系PDAにはいくつかのキーボードが販売されている。
Palm Computingからは、折り畳み可能な「Palm Computingポータブル・キーボード」が販売されている。同様のキーボードは、PC用のカバンで有名なターガスからも、Visor向けとして販売されている。このあたりについては、表にまとめてある。
発売元/名称 | 対応機種 | 備考 | URL |
Palm/ポータブル・キーボード | Palm V/III/m100 | 折り畳み式 | http://www.palm-japan.com/ |
LandWare/Gotype!、GoType! Pro | Palm V/III/Visor | コンパクト | http://www.landware.com/gotype/ index.html |
テックパーツ/PDAキーボード | Palmシリーズ全般 | クレードルを利用して接続 | http://www.tecparts.ab.psiweb.com/ |
ターガス/ストアウェイキーボード | Visor | 折り畳み式 | http://www.targus.co.jp/ |
PFU/Happy Hacking Cradle | Palm III | PS/2キーボード用アダプタ | http://www.pfu.co.jp/hhcradle/ |
富士通高見澤コンポーネント/SH-Keys | Palm III/V | 片手入力キーボード | http://edevice.fujitsu.com/ft/ whats_new/sh-keys_c3_j.html |
オカヤ・システムウェア/Thumb Type | Palm III/V | タッチパネルに貼り付ける | http://www.osw.co.jp/products/mobile /thumb.htm (2001年5月時点でサイト消失) |
主なPalm系PDA用キーボード |
Palmの純正ポータブル・キーボード | LandWareのGoType | PFUのHappy Hacking Cradle |
折り畳み式で、Palmとほぼ同サイズになるのが特徴。 | コンパクト・タイプのキーボードで、ファンクション・キーも装備するのが特徴。 | クレードルにPS/2コネクタが装備されており、PC用のキーボードがそのまま利用できる。 |
GPSやMP3プレイヤー、デジタル・カメラも周辺機器に登場
そのほかで目立つ周辺装置としては、GPSやデジタル・カメラ・ユニットなどがある。GPSは、米国の地図会社でもあるDe LormeとRandMcNALLYがともにGPSアダプタを販売している。De Lormeの製品は「Street Atlas USA Road Warrior Editon」、RAND McNALLYの製品は「Street Finder GPS for the Palm」である。どちらも、PC上で動作する地図ソフトウェアと、Palm用のアプリケーションが同梱となっており、PC側でルートなどを設定し、必要な範囲を指定したのちPalmへ地図を転送、実際のナビゲーションなどはPalm側で行うといった使い方をする。地図が米国のものであり、日本国内では使えないが、米国でレンタカーを借りたときなどに結構重宝する。今後、日本向けのGPS製品が登場することを期待したい。
サウンド系は、Visor用などではGood TechnologyのSoundGoodやInnoGeaのMinJamなどのMP3プレヤーがアナウンスされているほか,ボイス・メモ用には、LandwareのgoVox(Palm III/V用)などがある。
De LormeのStreet Atlas USA Road Warrior Editon | LandwareのgoVox |
Palmとほぼ同じサイズのGPSレシーバが付属しており、簡易ナビケーション・システムにすることができる。 | Palmのカバーと交換することで、Palmをボイス・レコーダにすることができる。 |
Palm系PDA対応デジタル・カメラ2種を比較
さて、概要ばっかりではつまらないので、ここでは具体的にPalm用のカメラ・モジュールであるPalm III/V系用の「PalmPix(Kodak)」とVisor用の「eyemodule(Blocks Products)」の2機種を紹介する。■Palm用デジタル・カメラ「PalmPix」
KodakのPalmPix |
Palm下部のシリアル・ポートに接続するデジタル・カメラ。プレビューはPalmの画面で行える。 |
PalmPixは、Palm III系/WorkPadなどとシリアル・ポート経由で接続するデジタル・カメラ・モジュールだ。オプションのアダプタを使うことで、Palm VやWorkPad c3などでも利用可能となる。
解像度は、カラーで320×240ドットおよび640×480ドットの2種類が選択可能だ。なお、撮影自体はカラーで行われるが、撮影時のプレビューはモノクロとなる。カラー液晶を持つPalm IIIcでも、撮影後の画像のみカラー表示が可能である。
PalmPixは、専用のConduits(コンジット:同期ソフトウェア)を用いて撮影データをPCに転送し、その時点でJPEGまたはBMPファイルに変換する。そのため当然ながら、このPalmPixを使うためには、専用ソフトウェアをPalmにインストールする必要がある(このソフトウェアがWindows版のみで提供されているため、PalmPixはMacintoshとでは利用できない)。
レンズは固定焦点タイプであるため、撮影は単にシャッターボタン(予定表ボタン)を押すだけで行える。これは、PalmPixソフトウェア起動時に1回、予定表ボタンを押すと、画面にプレビューが表示され、撮影が可能な状態になり、再度予定表ボタンを押すことで撮影が行われる。撮影した画像は、PalmPixからPalm本体メモリへシリアル・ポート経由で転送される。そのため、撮影後にデータ転送の時間(高解像度で15秒程度、低解像度で8秒程度)が必要となるので、連続撮影はできない。セルフタイマー機能も装備しているが、Palm側で何か工夫しない限り、PalmPixを取り付けたPalmを固定することはできないので、セルフタイマー機能自体にはあまり意味があるとは思えない。また、固定焦点であるうえに、最小撮影距離も91cmと長く、机の上にある物をメモ的に撮影するといった用途にはあまり向かない。人物や風景などの記録用としては十分だろう。
PalmPixソフトウェアには、画像の管理機能があり、PC側へのアップロードや画像の削除、画像名、カテゴリ名などの編集が行える。
■Visor用デジタル・カメラ「eyemodule」
Blocks Productsのeyemodule |
VisorのSpringboardに対応したデジタル・カメラ。レンズは写真のように上側の方に向いている。 |
eyemoduleは、Visorの拡張ポートであるSpringboard用のモジュールである。 Springboardは、動作に必要なアプリケーションを内蔵しており、プラグ&プレイで利用できる。そのため、eyemoduleを装着するとすぐ撮影可能な状態になる点は便利だ(なお、このソフトウェアはeyemoduleからVisorのメモリにコピーされて動作するため、eyemoduleを抜いてもソフトウェアはそのままVisor側に残る)。
また、Visorの電源がオフであっても、eyemoduleにあるシャッターボタンを押すことで、自動的にeyemodule用ソフトウェアが起動し、すぐに撮影に入ることができる。また、シリアル・ポート経由の転送と違い、eyemoduleからPalm本体メモリへの撮影画像の転送は瞬時に行われる。
このeyemoduleの解像度は、カラー320×240ドット、モノクロ320×240ドット、モノクロ160×120ドットの3種類となっている。プレビューや撮影後の画像表示は、モノクロ階調表示となる(なお、Handspringのカラー機種であるVisor Prismでは、カラー表示が可能になっているようだ)。
タイマーによる撮影は、撮影枚数や撮影間隔を設定できるもので、これを使うと簡単な連続撮影が行える。最低撮影間隔は2秒なので、動画撮影とまではいかないが、ゆっくり動くものなら紙芝居的な撮影が可能だろう。また、このeyemoduleは、Visorの上部に小さなレンズがあるため、隠し撮り的にPDAを使っているようにみせて、相手にカメラを意識させずに撮影することもできる。もちろん悪用するのは犯罪行為となるが、展示会などの自然な様子を撮影するときなどには便利かもしれない。
撮影後の画像表示では、実寸表示が行え、画像をスクロールさせて、実際の画面を見ることができる。ただ、PalmにしてもVisorにしても、LCDの階調表示は最大16階調しかないので、最終的な確認作業はPCに転送してからのほうがよいだろう。
■Palm系PDA対応デジタル・カメラの使い勝手
実際に使ってみた限りでは、640×480ドット程度の解像度はないと、メモ用途にもつらいと思われる。eyemoduleの使い道は、電子メールに添付するようなちょっとした画像の取り込みといったところだろう。記念写真のようなものを撮るには、少々解像度が不足気味であると感じた。
eyemoduleで撮影した記者発表会の風景 | eyemoduleで撮影した携帯電話 |
電子メールなどに添付して、雰囲気を伝えるような用途には使えるが、解像度が低いため、メモ用途ではつらい。拡大写真は、撮影データそのまま。 | 全体の雰囲気を伝えることはできるが、解像度が低いため、製品ロゴなどの細かい点は判別できない。拡大写真は、撮影データそのまま。 |
PalmPixのほうは、解像度的には何とか使い物になるのだが、周辺部分の画像のボケが激しい。記念写真のようなスナップを撮るには問題は少ないが、このボケがかなり気になる。
PalmPixで撮影した風景 | |
画像の中心部ははっきりしているのだが、周辺部分になるとボケてしまう点が気になる。解像度的には何とか使い物になるレベルなのだが、画像のボケのため、やはりメモ用とには少々つらい。拡大写真は、撮影データそのまま。 |
どちらにもいえるのだが、PDAで使う場合、メモ的に使おうとするとマクロ撮影がどうしてもほしくなる。PDAとして持ち歩くと、机の上のものを撮影するといった使い方は、結構頻度が高い。何とかしてほしいところである。どちらもデジカメに比べればはるかに小さく、かさばらずに持ち歩けるため、利便性が高いだけに残念である。
今回は、Palm系PDA用の周辺機器について見てきた。まだ日本国内で販売されていないものも多いが、徐々にではあるが増えつつあるのは確かだ。サードパーティ製周辺機器の充実は、Palm系PDAの強みのひとつでもある。国内周辺機器ベンダのPalm系PDAの参入を望みたい。
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