連載 Mobile Insider

第5回 カラーPalmと拡張モジュールで広がるソリューション

充実しつつあるSpringboardのラインアップ

塩田紳二
2001/04/05

 Visorの特徴の1つは、Springboardによる拡張機能である。Visor登場直後は、発売元のHandspring社の純正Springboardのみだったが、最近ではサードパーティからもいろいろなものが登場してきた。Springboardは、モジュールを操作するためのドライバやアプリケーションをモジュール内部に置き、プラグ&プレイを可能にしている点が特徴である(Springboardはホットプラグが可能)。例えば、Visor内部のメモリをバックアップするモジュールであれば、モジュールを装着すれば、自動的にアプリケーションがメモリにロードされ起動するようになる。

 さて、今回は、最近登場したSpringboardとして、

  • Magellan社のGPS Companion for Visor
  • Blocks Products社のeyemodule2

の2つを紹介しよう。

ナビゲーション機能を持った「GPS Companion for Visor」

 GPS Companion for Visor(以下GPS Companion)は、Magellan製のGPSモジュールを採用したSpringboardで、Rand McNally社より販売されているPalm V用のStreetFinder GPSなどと同様の製品だ(こちらもMagellan社製のGPSモジュールを採用している)。

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GPS Companionのモジュール Visorに装着したところ GPS Companionの背面部分
飛び出している部分にGPSアンテナ部分が格納されている。Magellan社製のGPSモジュールを採用している。 本体に対してかなり上に飛び出すため、このままではケースなどに入れにくいのが難点だ。 電池ボックスが裏側にあるため、この部分も飛び出している。Springboardは、このように背面が空いたスロットになっているため、こうした電池ボックスなどを持つ拡張モジュールも接続可能になっている。

 この製品は、ベクトル化された米国の地図データを表示し、GPSによる現在位置の表示やナビゲーションを行う「Map Companion」と、軌跡の表示や速度、方向といった表示を行う「Nav Companion」という2種類のソフトウェアが同梱されている。日本国内ではGPSとして経度や緯度を表示させることはできるが、日本の地図は付属していないためナビゲーションを行うことはできない。

Map Companionの画面 少し拡大した画面 最も拡大した画面
拡大率の低いときには、ハイウェイなど主要な道路のみが地図に表示される。 少し拡大するとハイウェイなどより細かい通りが表示される。 最も拡大された状態では、通りの名前なども表示される。

 モジュール自体に組み込まれているソフトウェアは、デバイス・ドライバと状態表示機能からなり、GPS衛星の受信状態や測位状況などを表示できる。

Nav Companionの画面 Nav Companionのアプリケーション画面
GPS衛星の受信状態を表示する画面。内蔵電池の状態も表示されている。 GPS Companionモジュール内に組み込まれた、GPS Companionアプリケーション。このアプリケーションは、経度、緯度などのGPSの簡単な状態表示などが行える。

 Magellan社のGPSモジュールは、NMEA(National Marine Electronics Association)で決められたフォーマットでGPSの情報を出力する。デバイスとしてはシリアル接続のデバイスとなるため、アプリケーションは、単にシリアル・ポートからNMEAフォーマットのデータを受信して動作すればよく、Palm OS用に作られたGPSアプリケーションのいくつかがそのまま利用できる。

 地図データは、道路と主要な場所(空港など)を登録したものがCD-ROM上に収録されており、必要な場所のデータをPalm側に転送して利用する。Palm側はメモリの許す限り複数の地図データを置くことが可能で、表示はGPSの現在位置に応じて自動的に地図を切り替えて表示できる。米国に出張するような場合、周辺の地図を含めてPalm側に転送しておくと、移動や買い物などで便利だ。

 なお、Rand McNally社のStreet Finder for Palm IIIやDeLormeのStreet Atlas USA Road Warrior Editionなどは、PC上の地図ソフトウェアとPalm上のソフトウェアがセットになっていて、PC側の地図ソフトウェアで範囲を指定して、Palm側に転送するようになっているが、このGPS Companionは、純粋にPalm側のソフトのみで、PC側で地図を表示するなどの機能はない。また、地図データを選ぶのに、米国の地域名に通じていないと該当地域のファイルを選ぶことができない。このあたりは、PC上の地図ソフトウェアと組み合わせて使いたいところだ。

 このGPS Companionだが、Springboard内に電池を内蔵しているうえ、アンテナ部分が飛び出しているため、Springboardモジュールとしてはかなり大きなものになっている。このため、持ち運びにはちょっと不便な点が残念なところ。ただし、筆者の手持ちの携帯用GPS(Garmin社のeTrex)よりは、感度などがいいようで、都内のビルが立て込んだところでも位置測定が可能で、測位開始までの時間も短いようだ。

撮影解像度が向上した「eyemodule2」

 eyemodule2は、以前紹介したeyemoduleの後継で、最大640×480ドットでの撮影が可能になったのが特長だ。また、レンズの向きが以前のものと異なり、Visorの液晶面からみて、少し下側に角度がつけてあり、自分の真正面のものを撮影する場合にVisorの液晶が見やすくなった。また、レンズ・キャップが付けられ、普段の持ち運びでレンズの汚れやホコリを気にしないでいいようになった。そのほか、動画の撮影も可能だが、Visorのメモリ容量(8Mbytes)では数秒程度の撮影しか行えない。

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Springboard用カメラ・モジュールである「eyemodule2」 Visorに装着したeyemodule2
左側に飛び出しているのは、レンズ・キャップ。このモジュールをSpringboardに差すだけで、Visorをデジタル・カメラに変えることができる。 Visorに装着すると、本体とレンズにわずかな角度が付くため、正面を撮影するときに液晶ディスプレイが見やすくなる。従来のeyemoduleは、正面を撮影するためにはVisorを水平にしなけれはならず、液晶が見づらかった。

 アプリケーションは、カラーに対応しており、撮影のプレビューも含めてPrismでは、カラー表示が行える。以前のeyemoduleでは、バージョンアップ・モジュールをダウンロードすることで、撮影画像をカラーで見ることはできたが、プレビューはモノクロのままであった。

撮影前のプレビュー画面
デジカメのように撮影される映像が液晶ディスプレイにリアルタイムで表示される。ただし、追従性はそれほど高くなく、初期のデジタル・カメラのような感じだ。

 この手の小さなレンズのデジタル・カメラは、レンズが暗く、室内撮影などに弱いという欠点がある。室内でもある程度明るく、動きがないものであればいいが、人間が少し暗いと感じるようなところでは、光量が不足するのでスロー・シャッターとなり、ぶれた画像になりやすい。屋外では、だいたい問題なく撮影できる。また解像度が640×480ドットあるため、ちょっとしたスナップ写真程度には利用できる。欲をいえば、マクロ撮影などが可能だといいのだが、このサイズでは難しいのだろう。

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室内の撮影画面 暗いところの撮影画面
動きのない明るい室内を撮影したところ。この程度であれば、ちょっとした画像メモなどにも利用できる。(拡大写真は撮影データのまま) 暗いところでは、ちょっと動きのあるものはすぐにブレてしまう。ストロボなどがないので、この点はあきらめるしかない。(拡大写真は撮影データのまま)
 
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屋外の撮影画面 屋外の撮影画面(その2)
前回のeyemoduleのときと同じような景色を撮影してみた。解像度が高くなっているので、より鮮明な画像が得られる。(拡大写真は撮影データのまま) 屋外の風景ならば、安価なデジタル・カメラ並の写真を撮ることができる。Prismならば、カラーで写真を確認できるのも便利だ。(拡大写真は撮影データのまま)

 eyemodule2のソフトウェアは、撮影機能と画像の管理機能を持つ。撮影は、静止画、動画で行え、静止画の場合、解像度としてVGA(640×480ドット)、PalmSize(160×120ドット)の選択および明るさ3段階の切り替えが可能である。また、タイマー撮影では、指定した時間経過後の撮影や、枚数などを指定してインターバル撮影が行える。

 画像の管理は、画像のリスト表示やサムネイル表示、PalmSize表示の3種類の形式での表示と、画像名の変更やメモの添付、カテゴリの指定といった画像情報に関するもの、画像の赤外線による送信や削除といった機能からなる。簡単にいえば、簡易画像ビューア、ブラウザを兼ねており、ここでPC側からダウンロードした画像を見ることもできる。

サムネイル画面 PalmSizeで表示した画面
撮影した画面はサムネイル形式で表示されるため、以前よりも画像の管理がしやすくなった。 画面を160×120ドットで表示することも可能。この程度になると、画面の細部をある程度見ることができる。

 撮影した画像は、付属のコンジット(Palm内部のデータベースにアクセスするためのPC側のソフトウェア)を介して、JPEGデータとしてPC側にセーブされる。また、同時にインストールされるソフトウェアを使うことで、PC側にあるJPEGファイルをeyemodule2ソフトウェアの管理する画像ファイルに変換することができる。また、付属のCD-ROMには、PC上の画像管理/簡易レタッチ・ツールなども含まれており、レベル調整や画像のシャープ化といった修正やセピア・カラーやエンボス化といった処理も行える。

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レタッチ・ツール「ACDSee」の画面
eyemodule2に付属のWindows用レタッチ・ツール「ACDSee」。画像のブラウズとフォトレタッチが可能になっている。

 今回は、Visor Prismと2種類のSpringboardを紹介した。紹介したようにPrismは、カラー化によって、地図などが格段に見やすくなっている。また、eyemodule2などを利用することで、簡単な写真メモなどにも利用できるようになった。GPS Companionは、日本の地図がないため、すぐに国内で活用することができない点は残念だが、将来のソリューションを感じさせてくれる。GPS Companionの日本版が登場すれば、簡易ナビゲーション・システムとしてビジネスでも十分に利用できそうだ。特に外出が多い営業担当の人にとっては便利なツールになるに違いない。

 Palm系PDAも、こうした周辺機器やアプリケーションの登場によって、単なるアドレス帳やスケジュール帳の代わりから、ビジネス・ツールとして変貌しつつある。すでに携帯電話との連係によって、見積もりや在庫の確認を行うようなソリューションも登場してきている。PDAをビジネス・ソリューションの1つとして、検討する段階に入ってきたのかもしれない。記事の終わり

関連リンク
ビジネス利用のケース・スタディ
GPS Companion for Visorの製品情報ページ
Street Finder for Palm IIIの製品情報ページ
Street Atlas USA Road Warrior Editionの製品情報ページ
eyemodule2の製品情報ページ
 
 

 INDEX

  [連載]Mobile Insider 第5回 カラーPalmと拡張モジュールで広がるソリューション
    1.カラーPalmと拡張モジュールで広がるソリューション
  2.充実しつつあるSpringboardのラインアップ

「連載:Mobile Insider」


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