第7回 やっぱり気になるスイッチ・オン! での性能変化
面 和毅
サイオステクノロジー株式会社
OSSテクノロジーセンター
開発支援グループ
グループマネージャー
2008/2/29
今回は、CentOS 5でSELinuxを有効にした場合、どの程度のパフォーマンス低下が起きるかを見てみましょう。
「SELinux有効」がパフォーマンスに与えるインパクトとは
システムの実運用を想定した場合、セキュリティももちろん大事ですが、そのほかにもパフォーマンスや高可用性といった点がシステムの設計/運用において大事になってきます。
特にパフォーマンスに関しては、ハードウェアレイヤからOSやデータベース、アプリケーションにわたってチューニングを重ねて、(もちろんそのほかのバランスも考えて)極力性能が出るようにするものですから、実際にSELinuxを有効にすることによって、
- どの程度
- 何がボトルネックとなって
システムパフォーマンスに差異が生じてくるのかは、重大な関心事となっていると思われます。
そこで、今回は処理スピードと高負荷時のパフォーマンスについて、Linuxシステムが広く使われているWebサーバ/PHPの組み合わせで測定を行いたいと思います。
測定環境をチェック
今回は下記の環境で測定を行いました。
ハードウェア | IBM ThinkPad X31 |
OS | CentOS 5.1 |
Webサーバ | Apache(httpd-2.2.3-11) |
PHP | php-5.1.6-15 |
ネットワーク | クロスケーブルによる直結 (正確なパフォーマンスを測るため) |
表1 今回使用した測定環境 |
今回は、なるべく汎用的な結果となるように、Apache/PHPに関しては、CentOS 5.1に付属のものをそのまま使用し、SELinuxのポリシーファイルに関しても特に修正などを加えていないバージョンのものを使用し、素の状態のCentOS 5.1でテストを行いました。
測定のためのサンプルのPHPとしては、2つのテストケースを用意してテストを行っています。また、SELinuxが有効では「Enforcing」を、無効では「Disabled」を選択するという形で行っています。これは「Permissive」の場合には最終的にアクセス制御判定とログ出力が行われ、完全にSELinuxを無効にした場合とパフォーマンスの結果が異なるためです。
パフォーマンス測定には、一般的なオープンソースのツールとして以下を使用しました。
- Apacheのパッケージに標準で同梱されているApache Bench(ab)
- JMeter
なお、Apache BenchおよびJMerterの詳しい説明は、「実用 Apache 2.0運用・管理術 第2回 JMeterによるWebサーバ性能評価の勘所」を参考にしてください。
【関連記事】 実用 Apache 2.0運用・管理術 第2回 JMeterによるWebサーバ性能評価の勘所 http://www.atmarkit.co.jp/flinux/rensai/apache2_02/apache02a.html |
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やっぱり気になるスイッチ・オン! での性能変化 | |
Page1 「SELinux有効」がパフォーマンスに与えるインパクトとは 測定環境をチェック |
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Page2 テストケース1:ショッピングサイト運用の場合 テストケース2:ディスクI/Oを発生させた場合 |
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Page3 このテストから分かること パフォーマンス劣化が発生する場所を知れば導入は怖くない |
スイッチ・オン! SELinux 連載インデックス |
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