企業データセンター変革技術の現在


三木 泉
@IT編集部
2009/5/7


 データセンターネットワーキングという新市場

 ブロケードコミュニケーションズシステムズも、データセンターの将来に同社の今後を重ね合わせる企業の1社だ。ストレージネットワーキング・スイッチを中心としたビジネスで成長してきた同社だが、2008年にはネットワーク製品ベンダとして知られるファウンドリ・ネットワークスを買収。今回のINTEROPは事実上、合併後の新生ブロケードを国内で披露する場となる。

 ストレージネットワーキング分野の主要ベンダによるIPネットワークベンダの買収は、データセンター・ネットワーキングという新たな市場が生まれつつあることを反映している。

 企業や業者のデータセンターでは、現在イーサネットとファイバチャネルという別個の技術でばらばらに構築されているIPネットワークとストレージネットワークが、今後統合に向かうと予想されている。イーサネットとファイバチャネルの統合は、サーバにおける配線の数を減少するとともに、論理的な接続の割り当てを可能にすることでサーバ仮想化における運用の柔軟性を高めることができる。また、2つのネットワークの統合は、ネットワーク機器がデータセンターにおいてインテリジェンスを発揮する新たな機会を生む。

 統合のかぎを握る技術といわれているのが次世代イーサネットのCEE(Converged Enhanced Ethernet)、そしてその上でストレージとの接続を実現するFCoE(Fibre Channel over Ethernet)だ。

Brocade 8000

 米ブロケードは4月、10Gbpsポートを24個備えたボックス型スイッチ「Brocade 8000」と、サーバなどに装着するアダプタ(CNA:Converged Network Adapter)を発表した。Brocade 8000はCEEに対応したスイッチ。フローコントロール機能を備え、この上でFCoEを安定的に伝送できるという。ただし、ブロケードでは、FCoEが成熟するにはまだ時間が掛かるととして、ミッションクリティカルなストレージ接続については引き続きファイバチャネルを利用することを推奨している。

 ブロックストレージはNASに交代する?

 ストレージでは、2009年に入ってカバー分野を大きくひろげたNASベンダのアイシロン・システムズがINTEROPに登場する。

 アイシロンは、積み木のようにストレージユニットを組み合わせていくことで、容量と処理能力を拡張できる「クラスタストレージ」製品で成長してきた。3月には従来のXシリーズに加え、データベースなどのミッションクリティカル・アプリケーションに利用できる能力を備えた「Sシリーズ」、そしてバックアップ/アーカイブに適した「NLシリーズ」を発表。企業やサービスプロバイダにおけるあらゆる用途に対応するフルラインのNAS製品ベンダに変身した。

 ファイバチャネル経由で利用するブロックストレージに代わり、今後次第にNASの利用を増やしていくことをアイシロンでは狙っている。

 IPv4アドレス枯渇とネットワーク仮想化

 IPネットワーキングでは、2011〜12年とされるIPv4アドレスの枯渇が、特に通信事業者やデータセンターにおいて、今後の大きな課題として認識されつつある。INTEROPにはIPv4アドレス枯渇対応タスクフォースが出展し、アドレス枯渇への対応策を提示する。

 同タスクフォースは総務省、IPv6普及・高度化推進協議会など17組織・団体で構成されている。アクションプランの提示や教育プログラムの作成などを進めている。

 IPv4アドレスが枯渇すると、関連業者は従来の顧客に対するサービスは継続できるものの、新規サービスの展開が困難になる。一貫したサービス管理を実現するとともに、この問題の永続的な解決を図るために、IPv6への移行が推奨されているが、具体的にはどのようにIPv4とIPv6の並存と移行を進めていけるかが現在における焦点となっている。

 アラクサラネットワークスはINTEROPで、IPv4アドレス枯渇に対する同社の解決策を提示する予定だ。

 また、同社のスイッチに搭載した「ネットワーク・パーティション」機能を紹介する。ネットワーク・パーティションはネットワークの仮想化ともいえる機能。部門や業務ごとに構築されているネットワークを、論理的な独立性を保ったまま1つの物理ネットワークに統合することで、コストを削減できる。逆に複数の部門が相乗りしているネットワークを、論理的に分割することで、セキュリティを向上することも可能だ。ネットワーク・パーティションでは、互いに重複するIPアドレスレンジを持つネットワークを、アドレスレンジの変更なしに共存させることができる。この技術は、IPv6への移行にも活用できるはずだ。

 アンリツは国産ベンダである強みを生かし、顧客ニーズに細かく対応する製品を開発・提供してきた。今回のINTTEROPでは、帯域制御製品「PureFlowシリーズ」の新製品を展示する。また、屋外への設置にも耐えるレイヤ2スイッチを紹介する。

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Index
企業データセンター変革技術の現在
  Page1
シトリックスはあらゆるシンクライアントを統合
キャッシュやSSL処理でコスト削減
Page2
データセンターネットワーキングという新市場
ブロックストレージはNASに交代する?
IPv4アドレス枯渇とネットワーク仮想化


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