
PCサーバはどう進化してきたか
宇野 俊夫
ハラパン・メディアテック
2008/9/12
実質的にはデスクトップPCと変わらないようなコンピュータがサーバ機として売られるようになって久しい。改めてサーバ機とは何なのかを、昔を振り返ることで確認したい |
サーバとデスクトップPC、どこが違うのか、この問いにどれだけ正確に答えられるだろうか? 仮想化やクラスタリング、単位面積当たりのサーバ集積率の劇的な向上、いずれも現在のサーバを語る重要なキーワードだ。しかしもちろん、最初から現在のような機能や形を備えたサーバがあったわけではない。これらの機能が、いつ、どのような背景でPCサーバに実装されるようになったのか、その歴史を簡単に振り返ってみよう。
ファイル&プリンタ共有とPCサーバの登場
1980年代半ば、米ノベルがNetWareと呼ばれるPC向けファイル共有サーバOSの出荷を開始した。ファイルやプリンタの共有向けのサーバOSで、ノベルによれば、1980年代中期のPCサーバOS市場の90%のシェアを有していたという。もちろん、当初はサーバ機などなかったので、文字通り普通のパソコンにサーバOSをインストールして利用していた。そこへ、企業ユーザーの信頼性に対する要求に応え、米コンパック(現在はヒューレット・パッカードに吸収合併)の「SystemPro 386」が1989年末に出荷された。PCサーバの元祖ともいえる製品で、マルチプロセッサ、RAID(0/1/4:後にRAID5も)、32ビット拡張バス(EISA)、そして独自チップセットによってCPUとメモリ、そしてバスを非同期動作させるなど、画期的なPCサーバであった。この時期から「サーバ」がコンピュータの役割を示す単語から、サーバと呼ばれる新たなクラスのハードウェアを示す単語へと変わっていく。
アプリケーションサーバの時代へ
次の大きな変化はWindows NTとともにやってきた。現在のWindows Serverは、初期にはWindows NTと呼ばれ、1994年に出荷が始まった。
Windows NTはSMPによるマルチプロセッサ対応、マルチプロトコル対応(TCP/IP以外にもNetBEUIやNetWareのIPX/SPXにも対応)、そしてGUIを搭載して登場した。Windows NTでは、データベースサーバやメールサーバなど、さまざまなサーバアプリケーションが動作し、CPUパワーが必要になった。こうしてPCサーバはSMPへの対応を急激に加速化したのである。
さらにDNSやWeb、メール、Webのバックエンドデータベースといったサーバアプリケーションを駆使するインターネットサーバの普及に伴い、Windows NTがPCサーバOSの主役になった。
信頼性から可用性へ
さて、サーバアプリケーションの時代になると、企業の部門規模のデータベースやメール、グループウェアなどへとPCサーバに対する業務の依存度も高まる。1990年代の後半には、サーバに求められるものが「信頼性」から「可用性」という言葉へ変わってきた。また、「TCO:トータルコスト・オブ・オーナシップ」(所有にかかる総費用)というキーワードがさかんに聞かれるようになった。
こうした背景からPCサーバは、障害によるシステムダウンを回避するための仕組みを持つようになった。サーバ内の回路の障害によるシステムダウンを回避する冗長性と、稼動状態のまま故障したモジュールを交換して障害を除去するホットスワップ/ホットリプレースへの対応である。電源、CPUの縮退運転(注1)、メモリ、NIC(Network Interface Card)、ハードディスク、冷却ファンなど、考えられる限りのパーツの冗長構成と稼働中の交換が可能になった。
注1:
CPUの縮退運転とは、2個以上のCPUを用い、SMP動作しつつ、障害時には障害が発生したCPUを切り離し、残りのCPUだけで処理を継続すること。
さらに、2000年前後には、障害発生時に自動的にOSを再起動したり、予備機を起動するといった機能、そして、ソフトウェアとの組み合わせで可用性を高めるクラスタリングやDNSを使ったロードバランシング機能が導入されるようになった。そこで、代替サーバや負荷分散のために、別のサーバからストレージへのアクセスが可能なように、サーバ間およびサーバとストレージ間のインターコネクト技術がPCサーバにも導入されはじめる。具体的には、特定のサーバが障害でダウンしたり負荷が高くなったりしたときに、ほかのサーバに処理を引き継ぐことができる「ネットワーク」状のストレージ接続だ。
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PCサーバはどう進化してきたか | |
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Page1 ファイル&プリンタ共有とPCサーバの登場 アプリケーションサーバの時代へ 可用性から信頼性へ |
Page2 クラスタリング、分散処理とSAN PCサーバの変遷の意味 |
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