Oracle VM上でRACを利用する（1）

　RAC on VMを利用するメリット

　今回から、いよいよOracle VMがほかの仮想化ソフトウェアと比較して異彩を放つ面についてご紹介したいと思います。テーマはRAC on VM 、つまりOracle VM上でReal Application Clusters（以下RAC）を運用するというシステムです。

　OracleのRACとは、複数のデータベースサーバを同調して稼働させ、抽象的に1つのデータベースシステムを形成することができるアクティブ／アクティブ型のクラスタです。RACは高可用性、高拡張性という特徴を持っています。1つのデータベースに対してアクセスを提供するサーバインスタンスは複数のサーバで実行されるため、あるRACノードで障害が発生しても素早くフェイルオーバが実行されます。また、データベースサーバの処理能力が不足したときには、RACノードを追加することで性能をスケールアウトすることができます。

　RACはこの高可用性と高拡張性という2つのユニークな特徴によって、さまざまな要件に対応します。ダウンタイムを可能な限り抑えなければならないシステムや、サーバ1台では処理できない量のトランザクションを抱えるシステムはその代表例でしょう。

　また、RACは「サーバ統合／集約」というキーワードでも登場します。RACは、いままで独立して存在していたデータベースを1つにまとめるという目的でも、魅力的な技術です。いままでプロジェクトごと、事業部ごとに構築されてきた複数のデータベースを、RACというプラットフォーム上に「サービス」という形で集約します。

　これまで独立して存在してきたデータベースを「サービス」として集約することで、ハードウェアや設置スペースをセーブしながら、運用管理をそのプラットフォームに集中することができます。

　このように、RACはサーバ統合／集約という目的でも引き合いに出されます。そしてオラクルは、このRACを仮想マシンソフトウェアのOracle VM上で稼働させる「RAC on VM」という構成をサポートしています。おそらく、一般的にいま「サーバ統合」というキーワードで連想されるのは仮想化技術であり、それはサーバを仮想マシン化して1台のサーバハードウェア上に集約することを意味しています。オラクルでは、この技術をOracle VMというソフトウェアで提供しています。

　先ほど、RACもこのサーバ統合に適した技術であると述べました。それではこのRACとVMを組み合わせたRAC on VMという構成にどのような意義があるのでしょうか。RAC on VMはどのような環境に最適で、RACとRAC on VMはどのように棲み分けるべきなのでしょうか。今回はこの位置付けを明確にし、RAC on VMのメリットと、適用が考えられる要件を明らかにしたいと思います。

1/3

Index
Oracle VM上でRACを利用する（1）
	Page1 RAC on VMを利用するメリット
	Page2 RAC on VMへの2つの入り口 　　RACを仮想化する
	Page3 　　仮想化したDBのRAC化