連載:ストレージ・アーキテクトになろう(5)
統合ストレージ調達のRFPをどう作るか
EMCジャパン株式会社
グローバル・サービス統括本部
マネージド・サービス部 部長
森山 輝彦
2009/2/13
ITインフラの統合と最適化は、多くの企業にとって重要な課題となってきている。ストレージ統合に関しては、特に米国では「ストレージ・アーキテクト」と呼ばれる人々が、スペシャリストとしての立場から社内プロジェクトに深く関与するケースが増えている。日本でも「SNIA認定アーキテクト」などの資格が整備されつつあるストレージ・アーキテクトの職務内容を通じ、統合ストレージの導入プロセスを解説する |
統合ストレージの調達
- - PR -
さて、ようやく統合ストレージの調達を開始する段階になりました。ここまでの間に、自社におけるストレージ戦略、利用計画の概要、サービス方式、アーキテクチャ/機能概要、サービスカタログ概要、および、運用計画の概略と体制に関する検討をしてきたと思います。また、これらの検討段階において、通常であれば、複数のベンダの情報を入手していることと思います。場合によっては、アーキテクチャの検討や、サービスカタログ検討において、コンサルティング・サービスを利用しているかもしれません。
実際の調達に関して、利用者側が最も良い条件で機器を調達するためには、複数のベンダに提案を要求し(RFP: Request for Proposal)、公平に評価していくことが必要です。
いままで検討したことを、RFPという形式にまとめていきましょう。
このRFP作成の段階ですが、さまざまな要因により、ある程度調達先が事前に絞られている場合も少なくないと思います。そのような場合であっても、複数のベンダからの提案を公平に評価し、決定していくことは、重要なプロセスです。これまでのさまざまな論理要件を検討していく過程で、限られたベンダの支援を得ることで、そのベンダは、より利用者側の目的に適合した提案ができると思います。結果的に、そのベンダの提案が採用される可能性が高くなります。しかし、このベンダの提案より優れた提案が、他ベンダからなされた場合は、真摯に検討して、最終決断をすべきです。
提案の選択に関しては、次回詳細に説明します。
統合ストレージ基盤調達におけるRFPのコンテンツですが、ぜひ以下の項目は含めてください。なお、提案の背景など、一般的な項目は割愛しています。
1. 機能要件
- ストレージ・サービス・カタログに記載される機能要件
- 初期導入容量
- 初期利用システム数、サーバ数、種類、必要容量など
- 初期利用システムが利用する、バックアップ技術や、要件など
2. 運用要件
- 稼働監視、障害監視、性能監視
- ジョブ管理
- 障害対応時のエスカレーション、サービスレベルなど
- 案件対応時の構成変更の役割分担
- 必要となる文書の定義
- 想定される内部工数、外注費用
3. 管理要件
- 構成管理方法
- キャパシティ管理方法
- 拡張計画の検討
- 性能管理方法
- 変更管理要件
- セキュリティ要件
- リリース時のUAT要件、達成基準
- 必要となる文書の定義
- 想定される内部工数、外注費用
4. 保守要件
- 定期保守の有無の確認
- ベンダ保守ポリシーの確認
- 自社の基盤ライフサイクルとベンダ・サービス提供の保証期間の確認
- 機器保守時の影響度合いの確認
- 保守情報の提供内容および頻度
- 無償保守、有償保守の区別
5. プロジェクト要件
- 構築プロジェクト体制の確認
- プロジェクト推進方法の確認
- プロジェクト・フェーズの確認
- 必要となる内部工数の確認
- プロジェクト完了条件の確認
6. 運用管理支援要件
- 基盤構築完了後の支援サービスの確認
- 必要となるトレーニング、自社調達すべき運用管理要員の確認
1. 機能要件
この要件は、ここまで検討を重ねてきた、ストレージ・サービス・カタログに含まれる内容に代表されるものです。
採用するストレージのアーキテクチャや、ストレージを利用するサーバ側の種類やアーキテクチャが、ある程度決定されていることが望ましいです。
また、統合ストレージ基盤導入当初に必要となる初期容量、すぐに利用の開始を予定しているシステムやサーバに関する情報、利用したいバックアップ・サービスレベルなどは、明記すべき内容です。
ストレージ・サービス・カタログに記載される機能要件 (詳細は、連載の第2回、第3回を参照して下さい)
- 初期導入容量
- 初期利用システム数、サーバ数、種類、必要容量など
- 初期利用システムが利用する、バックアップ技術や、要件など
初期要件とは別に、今後どのように統合ストレージの利用を考えているかという計画も、可能な範囲で明記してください。
機能要件は、統合ストレージ基盤を構築、利用していくために最低限必要な要件になりますので、ほとんどのRFPに含まれています。
以下の項目に関しては、RFP上には明記されていない場合もありますが、統合ストレージ基盤の調達、構築、運用を実施する際には、どこかの時点で必ず検討される項目ですので、可能な限り、調達段階で情報提供を受けておくこと、ベンダから提案を受けることをお勧めいたします。
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Index | |
統合ストレージ調達のRFPをどう作るか | |
Page1 統合ストレージの調達 1. 機能要件 |
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Page2 2. 運用要件 |
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Page3 3. 管理要件 |
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Page4 4. 保守要件 5. プロジェクト要件 6. 運用管理支援要件 |
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