サーバ仮想化バトルロイヤル(1)
ハイパーバイザの価値とは
三木 泉
@IT編集部
2008/8/8
ヴイエムウェア:ハイパーバイザは同じではない
以下は米ヴイエムウェア アジア太平洋地域 競合マーケティングスペシャリスト スティーブン・グロス(Steven Gross)氏へのインタビューからお届けする。インタビュー時期は2008年7月初めだ。
ヴイエムウェアの場合、仮想化そのものを実現しているハイパーバイザは「VMware ESX」だ。しかし、同社は現在VMware ESXを単体で販売していない。VMware ESXをベースとしてシステムインフラの可用性や管理性を向上する各種の機能を提供する「VMware Virtual Infrastructure 3」を販売し、さらにデスクトップ仮想化やアプリケーション開発環境改善のためのソリューションを構築している。同社の製品は高価だと批判されてきたが、軽量ハイパーバイザ「VMware ESXi」を2007年12月に数万円で提供開始し、2008年7月にはさらにESXiのダウンロード版を無償化することで、その批判に一部答えた。
米ヴイエムウェア アジア太平洋地域 競合マーケティングスペシャリスト スティーブン・グロス氏 |
ヴイエムウェアが提供しているのはポイントソリューションではなく、あらゆるアプリケーションにとってベストなソリューションだ。10年にわたって仮想化にかかわってきた経験から、強固な基盤を基に、「真にダイナミックなIT」を実現すべく機能を拡張して、業務部門が必要とするものをIT部門が提供するプロセスや機能を支援している。
そのうえで、包括的な仮想化の管理を実現している。単なるサーバの仮想化だけでなく、システムインフラの管理から自動化までを提供し、例えば動的な負荷分散をシンプルに実現するとともに、最近発表した「Lifecycle Manager」では、仮想サーバの作成、リクエスト、バックアップ、廃棄までをカバーしている。事業継続やディザスタ・リカバリをシンプルにする機能も提供している。
しかし、顧客の第1のニーズは信頼性だ。本当にサーバを統合していくためには、その基盤となるプラットフォームが堅固でなければならない。ある米国の製薬会社では、最近ハードウェアのメンテナンスやサポートの問題からほかのマシンに切り替えるまで、4年間にわたって当社の仮想化プラットフォームを稼働し続けた。お客様がプラットフォームを信頼してくれることは非常に重要だ。
■ VMware ESXは汎用OSと切り離された唯一のハイパーバイザ
最近競合他社は、ハイパーバイザのコモディティ化を目指し、「ハイパーバイザ間に差別化できる部分はない」といっている。これは重要な問題で、ヴイエムウェアはずっと、仮想化レイヤだけの機能に特化した非常にユニークなアーキテクチャを提供してきた。これは現在のところ、汎用OSと結び付いていない唯一のハイパーバイザだ。
競合他社は、もともとさまざまな機能を果たすために設計された汎用OSを基にし、これにハイパーバイザのレイヤを付けているため、肥大化したぎこちないソリューションになっている。Windows(Hyper-V)の場合の「Parent Partition」、Linux(Xen)の場合の「Domain 0」は仮想マシンのすべてのI/Oをつかさどる。
当社のVMware ESXiのサイズが32Mbytesであるのに対し、マイクロソフトは自社のハイパーバイザが600Kbytesしかないという。しかし、この仮想化レイヤはParent Partitionがなければ用をなさない。つまり実際は数Gbytesになるわけだ。実際にRTM版のHyper-Vは(Parent Partitionとして使うWindows Server 2008を含めると)2.6Gbytesになっている。ESXiを日本の面積に例えれば、Hyper-Vは北米と全欧州を合わせた面積になる。マイクロソフトは(Parent PartitionとしてWindows Server 2008の代わりに)より小さなServer Coreを使えるというが、それでもGbytesレベルのサイズだ。
Parent PartitionはI/Oボトルネックにもなる。Parent Partitionで使われるのは非常に汎用的なドライバで、必ずしも仮想化のために最適化されているわけではない。これにすべての仮想マシンのI/Oを通そうとするわけだ。従って、仮想マシンを1つだけ動かしているような場合のパフォーマンスは良好でも、企業データセンターのニーズを満たすような使い方をすると、パフォーマンスはどんどん低下する。
パッチについても問題が生じる。マイクロソフトから(Windows Server 2008の)パッチが提供されるたびに、Parent Partitionをオフラインにしてパッチ当てをしなければならない。
さらに当社のハイパーバイザでは、(サーバ1台当たりの)仮想マシンの密度を高められる技術を組み込んでいる。同じハードウェアを使ったとしても、よりたくさんのサーバを統合することができるわけだ。
こうした技術の1つはメモリにある。多くの仮想マシンは稼働中にも活用しきれていないメモリ領域を残している。そこでわれわれは、使われていないメモリの一部を回収し、ほかの仮想マシンに割り当てし直す「メモリ・オーバーコミット」という技術を組み込んでいる。これはヴイエムウェアのみが実現している技術だ。
ゲストOSのサポートについても、われわれはWindows NT 4をはじめとして、18のゲストOSをサポートしている。しかしマイクロソフトの場合、(Hyper-Vで)直接サポートしているのはWindows Server 2003以降で、Windows Server 2000については正式なサポートを提供しているとはいえない。
マイクロソフトの場合、対象がWindows環境に偏っており、「Windowsを走らせるにはHyper-Vが最適だ」というだろう。LinuxについてはXenを使うべきだというのかもしれない。そうしていくと結局、さまざまな仮想化ソリューションが入り乱れることになり、別々のスキルや別々のサポート契約、別々の購入契約を必要とするなどで、大きなコストが掛かってしまう。しかしVMware Virtual Infrastructure 3プラットフォーム上ですべてを走らせれば、これらすべての製品以上のことができるし、単一のスキル、単一の契約ですべてのニーズを満たすことができる。
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Index | |
ハイパーバイザの価値とは | |
Page1 マイクロソフト:Hyper-VはWindows Server 2008と一体のもの |
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Page2 シトリックス:Xenは互換性のある普遍的なハイパーバイザ |
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Page3 ヴイエムウェア:ハイパーバイザは同じではない |
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