System Insider 編集後記 2002年4月
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 4月23日にこれまでのPC Insiderから、System Insiderへとリニューアルさせていただきました。これまでPC Insiderの記事は、そのままのURLで継続してお読みいただけますが、新規の記事はSystem Insiderでの公開となります。これまで以上に役立つ情報を提供していきますので、引き続きご愛読のほどよろしくお願いいたします。

なぜIT業界の合併は成功しないのか

Leica M2+Summicron 50mm F2.0
1950年代末から1960年代に製造されたM型Leicaの普及モデル。ファインダーなどの機構は、現在のLeica M6 TTLやM7のベースとなっている。Summicron 50mm F2.0は、Leicaにおける定番の標準レンズ。開放から安定した描写を行ってくれる。外見さえ気にしなければ比較的安価で入手できるのも魅力だ。

 Hewlett-PackardとCompaq Computerの8カ月にわたる合併劇がやっと幕を閉じた。その間、両社の関係者のみならず、業界全体を巻き込んで合併のぜひについて論争が行われた。私の周りでも、両社で何か新しい動きがあるたびに話題になったものだ。そこで、多くの人がいうのが「IT業界の同じクラスの会社が合併した場合、成功した例がない」というもの。確かに、これまでも多くの企業が合併・買収を繰り返しているが、企業規模が等しければ等しいほど、その合併はうまくいっていない。

 例えば、今回の合併劇で一方の主役を担ったCompaqは、以前のDECとの合併では、結局うまくいかなかった。両社の合併で、Compaqは一時的にシェアを上げ、サービス部門やハイエンド・サーバ部門の取得によってPCベンダから総合コンピュータ・ベンダへの脱皮を果たした。しかしその結果、組織は肥大化し、収益率が大きく下がってしまった。クライアントPCばかりでなく、サーバにおいてもDell Computerに追い上げられ、その結果HPとの合併を選択することになったわけだ。

 ほかにも現代電子とLG半導体の合併で誕生したHynix Semiconductorも合併の失敗例といえるかもしれない。現在同社も、メモリ部門の売却を検討するなど、事業の再構築が必須の状況下にある。Hynix Semiconductorの場合、財閥の再編といった国策的な側面があったため、企業合併の失敗例とはいえないのかもしれないが、単純に合併しても事業はうまくいかないという点では、CompaqとDECと同じだ。

 まったく成功例はないのかというと、そうでもない。少々古い話になるが、1987年にThomson SemiconducteursとSGS Microelettronicaが合併して誕生したSGS-THOMSON Microelectronics(現、STMicroelectronics)などは成功例といえるだろう。

 では、こうした成功例と失敗例の差はどこにあるのだろうか。単純に同じような企業が合併した場合、一時的にシェアが高まるため合併した効果があったように見えるが、その効果は2年ほどでなくなることが多い。2〜3年も経つと、合併前の1社が持っていたシェア程度に落ちてしまう。これは、IT業界の競争が激しいことに加え、顧客が固定しないことが挙げられるだろう。良い製品が出れば、簡単に他社に乗り換えてしまう。それも製品サイクルが短いため、短期間で製品が入れ替わってしまうのだ。顧客が固定しているような業界では、シェアを引き上げることが製造コストの逓減を生み、その結果競争力が向上する、という流れになるが、残念ながらIT業界はそのような構造にはなっていない。ある程度以上の企業規模ならば、多品種をいかに効率よく製造できるかどうかが重要になってくる。

 つまり、合併で相乗効果があるかどうかが重要なのだ。Thomson SemiconducteursとSGS Microelettronicaの場合、Thomson Semiconducteursはフランス、SGS Microelettronicaはイタリアと珍しく国籍が異なる企業の合併であった。これにより、商圏がヨーロッパ全体に広がったばかりでなく、国際企業に脱皮し、全世界に対して同社の強みであるロジック系半導体が販売できる体制になったことが大きい。もちろん、合併によって開発部門や製造設備が強化されたことも成功のポイントであっただろう。このように異なる部分がある方が、お互いに補完し合えてうまくいくケースが多いように感じる。

 もう1つ重要なのは、企業文化だ。企業も生き物なので、長く営業していると、有形無形のいろいろな文化を生み出す。社員も、その企業の中にいるときはそれほど意識しないのだが、会議の進め方から人事までいろいろなところに独自の企業文化が存在する。企業合併とは、2つの異なる文化を合わせて、新しい企業文化を生む作業でもある。これに失敗してしまうと、いつまでも実質的な合併が行えず、効率の悪い組織のままとなる。こうした企業では、往々にしてタスキがけ人事が行われ、組織間の横の連絡がない、といった症状を引き起こす。CompaqとDECは、まさに企業文化が交わらなかったケースかもしれない。

 未だに新生HPの合併を危惧する声も聞かれるが、ぜひとも合併の成功例になっていただきたい。個人的には、「Compaq」のブランドが消えていくのが寂しいが、こうした時代の流れを記録するのもわれわれの役目かもしれないと思う、今日このごろである。

(System Insider 小林章彦)
 

  編集後記
■参考書籍がない……
 まだ始めたばかりだが、System Insiderではシステム管理者に役立ちそうな新刊書を選んで掲載している。主にサーバ/PCのハードウェアやネットワーク系の解説書および用語辞典から選んでいるが、最近、ハードウェア系の書籍が非常に少なくなってきているのが悩みの種だ。(一時期より減ったが)コンシューマ向け書籍は刊行されているものの、当然こうした書籍は「システム管理」という視点がなく、勧めにくいものがある。私自身、記事執筆のために参考書籍を良く探すが、最新ではなく数年前の書籍や雑誌を頼りにすることが増えている。
 こうした事態の原因としては、PCにしろIAサーバにしろプラグ・アンド・プレイの普及やハードウェアの共通化とコモディティ化、およびブラックボックス指向により、総じてハードウェアの取り扱い方法も容易になってことが挙げられるだろう。しかし、それでもサーバ/PC向けの新技術や新規格は登場し続けており、それらを解説した書籍が不要とはどうしても思えない。ハードウェアの中身やその動作原理はトラブルシューティング時に有用であり、管理者には重要な情報だからだ。
 System Insiderは、こうしたハードウェア系解説書の不足を補う存在でもありたいと、私は考えている。(島田)
■今月試したこと〜次の駅まで歩いてみる〜
 最近運動不足を自覚するようになったので、あまり効果はないであろうと思いながらも、試しに仕事場からの帰り道で、最寄駅の1つである上北沢駅から次の桜上水駅までの1駅間を歩いてみることにした。
何回か歩いて気付いたのだが、上北沢駅で通過中の特急新宿行き電車を見るくらいのタイミングだと、上北沢駅でそのまま次の普通列車を待っていても、次の桜上水駅まで歩いていっても結局乗る電車は同じである。そんな訳なので、最近は運動不足解消の無駄な抵抗(?)として、時間があるときは桜上水駅まで歩いている。
そこで気になったのが、新宿から仕事場に行く場合はどうであろうか? ということだ。通常、新宿から仕事場に行く場合は、快速電車に乗って八幡山駅で下車するか、普通に乗って上北沢駅(または八幡山駅)で下車するのだが、各駅停車の電車の場合は桜上水駅で特急電車の通過待ちがあるので案外時間がかかる。そこで、急行で桜上水まで行ってそこから歩いてみたところ、次の各駅停車の電車とほぼ同じタイミングで上北沢駅に到着することが確認できた。どちらも時間は変わらないのであまり意味はないが、たまには歩いてみようかと思っている。(平野)
■今月の悩み:紙との付き合い方
 部屋を掃除していると、やたらに紙が多いことに気付く。そのほとんどがアイデアを図入りで書き留めた物だ。何か思い付いたときに適当な紙にそれを書いて、興味がなくなるとその辺に放置される。部屋が狭いだけに、今までいろいろな物をデータ化してきた:ビデオ・テープ、CDメディア、雑誌の資料集など。
しかし、紙が邪魔だからといって、PCでアイデアを図入りでまとめるのはとても面倒だし、アイデアをまとめた紙を丸ごとスキャンしてしまうと、追加の書き込みができない。ノートを用意してアイデアを書き込むと、アイデアを検索するのが面倒だし、その前にたいていノートがどっかに行ってしまう。
紙とデータ両方の利点を兼ね備えた自由度の高いデータ形式はできないものだろうか。それが可能になるまでは、蒲団の横やら机のうえやら、本のスキマまで紙っぺらが散乱し続けるに違いない。(清水)
 
  System Insider STAFF
 
編集人 小川 誉久 Art Director 谷原 正則
編集長 小林 章彦 制作 河本 茂美
副編集長 島田 広道    
構成エディタ 元麻布 春男    
編集 平野 謙    
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