解説

64bit時代を先取りするItanium 2搭載サーバ「hp server rx2600」

2. rx2600に見るItanium2搭載サーバのハードウェア

元麻布春男
2002/11/27

解説タイトル


rx2600の内部構成を見てみよう

 下の写真は、rx2600のケースを開いたところだが、Itanium 2は青色の樹脂製のエアフロー・カバーの下だ。135WともいわれるItanium 2の冷却には、大型のヒートシンクが装着されており、手前にはプロセッサ部に冷却風を通すためのホットスワップ対応の冷却ファンが2基搭載されている。さらにその左側には、メモリと拡張スロットのそれぞれにも冷却ファンが用意されており、十分な冷却能力を誇っている。ただ、これらのファンは回転数固定で、かなりの騒音を発する。データセンターなどでラックマントで利用するには問題ないと思われるが、開発用途などでスタンドを付けて机の脇に置くとなるとかなりつらい。2Uサイズで十分な冷却能力を実現するには、径の小さな冷却ファンを高速で回転させる必要がある点は理解できるが、もう少し稼働音についても配慮がほしいところだ。なお、同じケースを用いたワークステーションのzx6000では、冷却ファンの回転数が可変になっており、多少なりとも騒音レベルが引き下げられているようだ。

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rx2600の内部 rx2600に搭載されているItanium 2
青色の樹脂製カバーの下にItanium 2が2個搭載されている。カバーの写真右側には2個の冷却ファンが取り付けられている。この冷却ファンからの風が、Itanium 2のヒートシンクに対して効率よく当たるように樹脂製のカバーが形状は工夫されている。 Itanium 2には写真のような円筒形のヒートシンクと冷却ファンが取り付けられている。写真手前側のパワーポッド(電源回路)を含めてプロセッサ・ユニットとなる。デュアルプロセッサ構成とはいえ、プロセッサが占める領域はかなり大きい。

 冷却ファンの手前、シャシーの最前部には、電源ユニットとドライブ・ベイが用意されている。本体正面の左端がホットスワップ可能なハードディスク・ベイで、1インチ厚のUltra160 SCSIドライブが合計3台収納できる。標準構成でRAIDコントローラは付属しないが、オプションでPCI-X対応のものが用意されている。ハードディスクが3台内蔵可能であるため、3台でRAID 5にしたり、1台をOSにして残り2台をデータ用にRAID 1にしたりといった構成が可能だ。ハードディスクの右側が電源ユニットで、これも標準では1基のみだが、オプションで2基目の電源ユニットを装着し、冗長性を確保することが可能だ。この2基目の電源ユニットを装着可能にするため、内蔵のDVD-ROMドライブはノートPCなどでよく見かける薄型のものが採用されている。

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rx2600の正面 rx2600の拡張スロット・モジュール
正面カバーを外したrx2600。写真左側がホットスワップ可能なハードディスク・ベイ、その右下側が電源ユニットとなっている。 4本のPCI-Xスロットが用意されている。「Agilent」のロゴが付いた少し大きめのチップがIOAチップである。
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rx2600の電源ユニット rx2600のハードディスク・ベイ
電源ユニットは、本体前面下部に2基搭載可能で、ホットスワップによる交換が行える。前面パネルを外すと、レバーによって簡単に交換ができるようになっている。 ハードディスクは、36Gbytesまたは73Gbytesのものが最大3台まで収納可能である。コネクタには、SCAタイプが採用されておりホットスワップが可能である。
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rx2600に標準搭載されているマネジメント・プロセッサ・カード hp zx1チップセットのノースブリッジに相当するMIOチップ
ARM7ベースのプロセッサとATI RADEON VE、10/100BASE-TXコントローラなどが搭載されている。本体の状況は、このマネジメント・プロセッサ・カードを通してモニタリングしたり、制御したりできる。 Itanium 2とDDR DIMMソケットの間に実装されている。MIOは、2チャネルのメモリ・バス(各4.3Gbytes/sの帯域)とチャネル当たり500Mbytes/sのropeと呼ぶ独自チャネルを8本持つ。

 一方、プロセッサの後方には、プロセッサのパワー・ポッド(電源回路)をはさんで、マネジメント・プロセッサ・ボードが搭載されている。主にサーバの管理を行うためのコンソール機能を提供するもので、グラフィックス・チップや管理コンソール専用のイーサネット・コントローラなどが、このボード上に実装されている。このマネジメント・プロセッサ・カードはサーバ(rx2600)では標準だが、ワークステーション(zx6000)ではオプションとなっている。

 Itanium 2の左側、大きなヒートシンクが取り付けられているのがMIOチップだ。MIOチップを中心に、合計12本のDDR DIMMソケットが用意されている。rx2600では、ここに4枚1組でECC対応のDDR DIMMを実装していく。現時点で提供されているDIMMは1枚当たりの最大容量が1Gbytesのため、合計12Gbytesが最大メモリ容量になるが、近い将来2GbytesのDDR DIMMを提供する計画があるようだ。rx2600では、「メモリ・スクラビング(Memory Scrubbing)」と「メモリ・チップ・スペア(Memory Chip Spare)」と呼ぶメモリの耐障害機能をサポートしており、マルチビットのエラー検出/訂正にも対応している。

 メモリのさらに左側にあるのが、取り外し可能な拡張スロット・モジュールだ。上述のとおり、4本のPCI-Xスロットが用意されているが、標準構成ではすべてが空きスロットとなっている。オプションのRAIDコントローラをインストールする場合、モジュール前面側の隙間からケーブルを通す必要がある。隙間が狭いため、冷却ファンを回避しつつ、冷却を損なわないようにするのに少々苦労するかもしれない。

競争力のある価格を実現したrx2600

 気になる性能と価格についても触れておこう。残念ながらrx2600の性能を計測可能なベンチマーク・テストなどが用意できなかったため、ここでは日本HPが公表しているテスト結果を見ることにする(日本HPの「rx2600のパフォーマンス」)。

ベンチマーク 結果 プロセッサ・タイプ プロセッサ数
TPC-C 4万621 tpmC Itanium 2-1.0GHz 2
SPECint2000 810 Itanium 2-1.0GHz 1
SPECfp2000 1301(ピーク値) Itanium 2-1.0GHz 1
SPECint_rate2000 18.7 Itanium 2-1.0GHz 2
SPECfp_rate2000 26.5(ピーク値) Itanium 2-1.0GHz 2
SPECweb99_SSL 778 Itanium 2-1.0GHz 2

 rx2600におけるTPC-Cの4万621tpmCという値は、Pentium III Xeon-900MHzの4ウェイ・サーバである「ProLiant DL580 6/900」の3万9158tpmCとほぼ同等である(TPCの「ベンダ別TPC-Cの結果」)。参考までにIntel Xeon MP-1.6GHzの4ウェイ・サーバだと、4万5000〜4万9000tpmCとなる。

 価格は3次キャッシュ1.5MbytesのItanium 2-900MHzの1プロセッサ・モデルで181万6000円からとなっている。Intel Xeon MP-1.6GHz(3次キャッシュ1Mbytes)搭載のサーバと同等の価格レンジである。Itanium 2とIntel Xeon MPでアプリケーション環境などが異なるため、単純なコストパフォーマンスでは比較できないが、rx2600はItanium 2搭載サーバとしてはエントリ・クラスでありながら、IAサーバのミッドレンジからハイエンドに相当する4ウェイのIntel Xeon MP搭載サーバと競合する価格・性能を実現していることが分かる。

 rx2600は、ケースがワークステーションであるzx6000と共用であり、一見共通の設計と思えることから、「サーバとしてはどうなのか?」といぶかる向きもあるかもしれない。しかし、実際にはマザーボードやI/Oモジュールなど、いずれもrx2600専用に用意されたものであり、サーバとして妥協したものではない。薄型のケースに収まるように、物理的には妥協した部分はあるかもしれないが、ハードディスクやメモリはこのクラスとして十分な容量が確保されている。また、データセンターなどの利用を考えれば、2Uサイズに収まってほしいというユーザー側の要求もあるだろう。もちろん、2ウェイ・サーバとしては高価だから、すべての用途に用いることは難しいかもしれないが、例えばItanium 2の高い浮動小数点演算能力を利用した構造解析や科学計算用のサーバ、また近々サポートを表明しているオラクルなどの大規模データベース・サーバとしての利用には最適だろう。記事の終わり

  関連リンク 
rx2600のパフォーマンス
ベンダ別TPC-Cの結果
 
 

 INDEX
  64bit時代を先取りするItanium 2搭載サーバ「hp server rx2600」
    1.Itanium 2搭載サーバの現状と将来
  2.rx2600に見るItanium2搭載サーバのハードウェア
 
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