解説 Windowsからのイメージ・バックアップが可能となった「V2i Protector 2.0」 1. Windows対応アプリケーションになったDrive Imageの後継製品元麻布春男2003/09/19 |
バックアップ・ソフトウェアといえば、以前はテープやフロッピーディスクといったリムーバブル・メディアにデータを保存するものであった。高価なハードディスクのデータを安価で安全な場所での保存が可能なリムーバブル・メディアにバックアップすることは、企業はもちろんのこと、個人やSOHOユーザーの間でも一般的であった。しかし、その後に訪れたハードディスクの急激な大容量化と低価格化は、小容量のフロッピーディスクを時代遅れにしたばかりか、テープ・バックアップ装置でさえハードディスクの容量増大にキャッチアップすることを不可能にしてしまった。市場規模の違いから低価格化が難しいテープ・バックアップ装置は、テープを自動的に交換するオートローダとの組み合わせにおいてエンタープライズ分野ではバックアップ用デバイスとしての有効性を保っているものの、それ以外の市場では事実上、駆逐されつつある。
そのためバックアップは必要と思いつつ、高価なオートローダ対応のテープ・バックアップ装置にまでは手が出ない、という管理者も多いと聞く。また、セキュリティ・ホールを修正するための修正プログラムやサービスパックを適用する前に、不具合が発生しても元に戻せるようにハードディスクの内容を保存しておきたいというエンド・ユーザーも多いに違いない。こうした管理者やエンド・ユーザーにとって、手軽にバックアップを可能とするのが、イメージ・バックアップ・ソフトウェアと呼ばれる製品だ。イメージ・バックアップ・ソフトウェアとは、ハードディスクのイメージを丸ごとファイルとして、ハードディスクや記録型DVDに保存可能とする。バックアップした内容がファイルとなるため、保存先の自由度が高いのが特徴である。イメージ・バックアップ・ソフトウェアは、すでに「解説:バックアップ・ツール『Norton Ghost』のお手軽度」でSymantecの「Norton Ghost」を取り上げているが、今回はそのライバルともいえるPowerQuestの「Drive Image」の後継に当たる「V2i Protector 2.0 Desktop Edition(以下、V2i Protector 2.0)」を取り上げる。
イメージ・バックアップ・ソフトウェアの問題点
フロッピーディスクやテープ・メディアに代わってバックアップの主流となりつつあるのが、ハードディスクそのもの、あるいは記録型DVDといったデバイスだ。バックアップ装置の移り変わりは、当然ながらバックアップ・ソフトウェアにも変化をもたらすことになる。基本的にファイル・システムを持たないテープ・バックアップ装置と異なり、ハードディスクなどではファイル・システムが利用できるため、バックアップ対象のハードディスクのイメージを丸ごとファイルとして残すバックアップ・ソフトウェアが人気を博すようになった。これらのソフトウェアは、バックアップを取りたいシステムのOSではなく、DOSから起動することで、OSのシステム・ファイルをバックアップ可能にしたものが多い。また、システムが破壊された場合でも、DOSベースのプログラムであればフロッピーディスクやCD-ROMから簡単に起動できるため、システムの復旧が容易であるというメリットがあった。現在、最もポピュラーなDrive ImageとNorton Ghostは、いずれもこうした特徴を備えた、このジャンルの代表格とでもいうべきソフトウェアだ。
だが、ハードウェアの進歩は、DOSベースのソフトウェアに限界ももたらしつつある。USBやIEEE 1394といったシリアル・バス・インターフェイス規格、あるいは記録型DVDに代表される新しいメディアは、DOSの時代には存在しなかったものだ。これらのメディアはWindows以降の新しいOSでの利用を前提に作られているため、通常はDOSから利用する方法が提供されていない。つまり、既存のイメージング・バックアップ・ソフトウェアでは、こうしたハードウェアをサポートすることが難しいのだ。
一足先にアップデートを行ったNorton Ghostは、2003年版において、シリアル・バス・インターフェイスをDOS上のSCSI APIのデファクトスタンダードであるASPIにマッピングするデバイス・ドライバなどを提供することで、新しいデバイスに対応する道を選んだ。これによりNorton Ghost 2002は、DOS上のアプリケーションであり続けながら、新しいハードウェアのサポートを実現している。
一方、V2i Protector 2.0は、新しいハードウェアに対応したイメージング・バックアップ・ソフトウェアをどうするか、という問題に対するPowerQuestおよび日本国内での販売元であるネットジャパンによる、また別の回答となっている。米国では、V2i Protector 2.0とDrive Imageは、異なる製品として販売されているが、日本国内においてはDrive Image後継製品としてV2i Protector 2.0が販売される。V2i Protector 2.0は、個人向けの「V2i Protector 2.0 Desktop Edition」と企業向けの「V2i Protector 2.0 Server Edition」「V2i Protector 2.0 Enterprise Desktop Edition」の合計3製品がラインアップされている。V2i Protector 2.0 Server Editionは、Windows NT Server/Windows 2000 Server/Windows Server 2003にも対応しているのが特徴だ。V2i Protector 2.0 Desktop EditionとV2i Protector 2.0 Enterprise Desktop Editionは、機能は同一でライセンス形態が異なっている。今回は、個人向けの「V2i Protector 2.0 Desktop Edition」を取り上げるが、基本的な機能は3製品とも同じなので、企業向けのV2i Protector 2.0 Server EditionやV2i Protector 2.0 Enterprise Desktop Editionを購入する場合にも参考になるだろう。なお、V2i Protector 2.0 Desktop Editionの価格は、1万5800円である。
最大の特徴はWindowsアプリケーションになったこと
V2i Protector 2.0の最大の特徴は、メイン・プログラムがWindows 2000 SP2以降のWindows上で動作するWin32アプリケーションとなったことだ(.NET Frameworkランタイムが必要)。これにより、OS自身を書き換えるシステム・ドライブのレストアなどの操作を除き、すべてWindows上から行えるようになった。また、操作終了後も再起動は不要で、Windowsに戻り、作業を継続できる。Drive Imageも、DOS上のアプリケーションといいながら、日本語化されたWindowsライクなユーザー・インターフェイスにより、決して使い勝手の悪いアプリケーションではなかったが、V2i Protector 2.0はWindowsアプリケーションになることで一層使い勝手が向上している。
.NET Framework対応となったV2i Protector 2.0 |
V2i Protector 2.0では、.NET Frameworkランタイムが必要となる。.NET Frameworkがインストールされていないと、画面のような警告が表示される。 |
アプリケーションがWindows対応となることで、以下のようなメリットが挙げられる。
- Windowsがサポートする広範なハードウェア・デバイスがそのまま利用できる
- Windows標準のサービスを利用できる
- 利用可能なメモリに事実上制約がないため(少なくともDOSのような制限はないため)アプリケーションの機能拡張を容易に行える
上述したようにDOS上のイメージング・バックアップ・ソフトウェアでは、高速なシリアル・バス・インターフェイスや記録型DVDなど、DOSが廃れた後に登場した新しいハードウェアへの対応が常に問題となった。またネットワークへの対応は、DOSでも不可能ではなかったものの、ドライバの起動ディスクへの組み込みなど、わずらわしさが常に付きまとう。Windows上のアプリケーションであれば、こうしたハードウェアへの対応はプラグ・アンド・プレイ機能を用いてOSレベルで対応していることから、ユーザーの手をわずらわせることはない。
またWindowsで実行可能ということは、Windows上に用意されているスケジューラ機能などのサービスが利用できるということでもある。バックアップは定期的に行わなければ有効性が低くなるが、そのたびにDOSを起動するというのでは効率が悪い。Windows上のバックアップ・ソフトウェアであれば、スケジューラ機能を用いて、夜間などに定期的にシステムのバックアップが実行可能だ。
この定期的なバックアップを効率的に処理する方法の1つがインクリメンタル・バックアップ(増分バックアップ)だ。時間のかかるシステム全体のバックアップを初回に行い、後は前回のバックアップからの増分だけを記録していくという方式だ(増分バックアップの詳細についてはWindows Server Insdier「Windows TIPS:差分バックアップと増分バックアップの違い」を参照)。これなら2回目以降のバックアップに要する時間を大幅に短縮できる。V2i Protector 2.0は、この増分バックアップ機能を備えているが、こうした機能の追加、追加された機能の有効活用という点で、Windowsアプリケーションになった意義は大きい。
加えてV2i Protector 2.0では、作成されたイメージ・ファイルの内容をブラウズし、特定のファイルやフォルダだけをレストアすることも可能である。これは、Drive Imageで「Drive Image File Editor」に実装されていたものと同様の機能だ。ファイルやフォルダ単位のバックアップに未対応であるものの、増分バックアップ機能とともに、V2i Protector 2.0は汎用のバックアップ・ソフトウェアに近い使い勝手を実現していることが分かる。
Windowsアプリケーション化のメリット/デメリット
ソフトウェアがWindowsアプリケーションになったことで、システム・ドライブのレストアの問題以外にデメリットはないのだろうか。最も懸念されるのはWindowsのオーバーヘッドによるバックアップ速度の低下だ。ここでは表1に示した2種類のシステムを用いて、Windows上で動作するV2i Protector 2.0とDOS上で動作するDrive Image 5.0でバックアップ速度を比較してみた。
マシン1 | マシン2 | |
マザーボード | Shuttle MN31N | Intel D865GBF |
チップセット | nForce2 IGP | Intel 865G |
CPU | AMD Athlon XP-2600+ | Pentium 4-3.0GHz |
メモリ | 512Mbytes DDR 333 *1 | 512Mbytes DDR400 |
グラフィックス | チップセット内蔵 | RADEON 9700 Pro |
ハードディスク | Seagate ST360021A *2 | Seagate ST360021A *2 |
LAN | チップセット内蔵 | チップセット内蔵 |
Sound | チップセット内蔵 | チップセット内蔵 |
表1 バックアップ速度の比較テストを行ったシステム構成 | ||
*1 64Mbytesをグラフィックス・メモリに割り当て | ||
*2 16.6GbytesのC:ドライブと残りのD:ドライブに分割 |
その結果が表2だが、マシン1とマシン2で極端に異なる結果となっている。マシン1におけるDrive Imageのバックアップ速度が極端に遅いのは、nForce2チップセットのIDEインターフェイスがWindows対応のデバイス・ドライバと組み合わせることを前提に作られているからかもしれない。一方、IntelのIntel 865を用いたマシン2では、DOSのDrive Imageの方が若干高速という結果になったが、その差はそれほど大きなものではない。むしろWindows上で動作するV2i Protector 2.0のみが増分バックアップをサポートしていることを考えると、運用上は増分バックアップが利用可能なV2i Protector 2.0の方が、バックアップ時間は短くて済むといえる。
マシン1 | マシン2 | ||||
圧縮率 高 | 圧縮なし | 圧縮率 高 | 圧縮なし | ||
V2i Protector 2.0 | 所要時間 | 9分10秒 | 6分56秒 | 7分41秒 | 6分00秒 |
バックアップ・ファイル・サイズ | 2.17Gbytes | 3.32Gbytes | 1.74Gbytes | 3.54Gbytes | |
Drive Image 5.0 | 所要時間 | 20分15秒 | 22分26秒 | 5分54秒 | 5分15秒 |
バックアップ・ファイル・サイズ | 2.28Gbytes | 3.31Gbytes | 1.90Gbytes | 3.54Gbytes | |
C:ドライブの使用量4.5Gbytes | C:ドライブの使用量4.3Gbytes | ||||
表2 V2i Protector 2.0とDrive Imageのバックアップ時間テストの結果 |
次ページでは、レストアについて見てみることにしよう。
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バックアップ・ツール「Norton Ghost」のお手軽度 | |
Windows TIPS:差分バックアップと増分バックアップの違い |
関連リンク | |
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Windowsからのイメージ・バックアップが可能となった「V2i Protector 2.0」 | ||
1.Windows対応アプリケーションになったNorton Ghostの後継製品 | ||
2.専用のレストアCD-ROMでシステムをレストア | ||
「System Insiderの解説」 |
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