キーワード電力危機を乗り切るためのキーワードデジタルアドバンテージ |
東京電力の原子力発電所(17基中16基)が運転を停止しているため、6月下旬から9月にかけて、最悪の場合、首都圏の停電もあり得るという電力危機を迎えようとしている。電力危機というと、2001年の米国カリフォルニア州において、電力販売の自由化により電力会社が破綻し、断続的な停電が続いたことが記憶に新しい。関東地方では、停電にならないまでも、電圧降下や瞬停(瞬間停電)の可能性が懸念されている。
電力トラブルに対する代表的な対策は、UPS(→ キーワード)を導入することだ。しかしひと口にUPSといっても、実現方式にはいくつかの種類があり、システムに求められる可用性や用途などに応じてそれらを選択することになる。ここでは、UPS関連のキーワードを中心にまとめてみよう。
UPSには停電に対する備えという面のほかに、機種によっては安定した電圧・電流を供給できるというメリットもある。特に古めのオフィス・ビルなどでは、コンピュータ機器の増加によって、建物内の電力供給能力に対して需要が過大になっており、電圧・電流が不安定になっているところも多い。例えば、エアコンが稼働した途端、室内の蛍光灯が一瞬暗くなるというのは、電力供給能力が足りず、「瞬停(→ キーワード)」が発生した証拠だ。こうした環境では、コンピュータがリブートしたり、ハードディスクのデータ書き込みに失敗したりする危険性がある。そこまでひどくなくても、日本の定格電圧の100V以下となる電圧降下(→ キーワード)が発生し、コンピュータの誤動作が起きたり、ルータの動作が不安定になったりすることもある。出力を安定させる機能を備えるUPSを利用することで、こうした障害から守ることができるわけだ。
最近では、クライアントPC向けのUPSも比較的低価格で販売されている。サーバはもちろんのこと、この夏はクライアントPCにおいてもUPSの導入を検討する、いい機会かもしれない。
UPSの給電方式の違いによるメリット/デメリット
UPSには、その給電方式によりいくつかの種類がある。それぞれの方式の違いによりメリット/デメリットがあるので、選択時にはカタログなどでバッテリ容量とともに確認しておきたい。
■常時商用給電方式 | ||||
平常時は入力(商用電源)の交流電力をそのまま出力し、停電時にはバッテリからの駆動電力に切り替える方式。停電時の対策としては有効だが、平常時は商用電源をそのまま出力するため、周波数の乱れや電圧の変化に対する補正(安定化)は行われない。クライアントPC向けのUPSの多くは、この常時商用給電方式を採用している。 | ||||
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■ライン・インタラクティブ方式 | ||||
常時商用給電方式に対して、バッテリとインバータ回路を常に接続しておいてバッテリの充電/放電を行う方式。入力電力の電圧異常やノイズ、サージの対策としてオートトランスやフィルタを内蔵しており、常時商用給電方式に比べて安定した電力供給が可能となっている。停電ならびに電圧異常に対して有効である。 | ||||
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■常時インバータ給電方式 | ||||
入力電力を常にコンバータ回路によって直流に整流してバッテリに充電しつつ、それをインバータ回路によって交流電力に変換して出力する方式。入力交流電流の状況にかかわらず常に周波数や出力電圧を一定に保つことができる。UPSとしては、高価な大容量製品が中心で、主にサーバ向けとして販売されている。 | ||||
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■パワーマルチプロセッシング方式 | ||||
入力電力を交流の状態で昇圧/降圧することで、適正な電力を出力する方式。常時インバータ方式では、交流電力を直流に変換したのち、再度交流に変換し直して出力したが、パワーマルチプロセッシング方式では、入力電圧が低い場合には昇圧回路による昇圧、高い場合には降圧回路による降圧を行うことで、入力交流電流の状況にかかわらず常に周波数や出力電圧を一定に保っている。また、電力変換器などに異常が発生した場合は、瞬時にバイパス回路を作動させる仕組みも装備している。常時インバータ給電方式に代わる方式として、主にサーバ向けとして販売されている。 | ||||
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これらからどの方式を選択するかは、用途や目的と予算によって異なってくる。パワーマルチプロセッシング方式が電力効率や安定性の面で優れているものの、製品の種類が少なく、用途によっては適当な製品が見付からない可能性もある。またクライアントPC向けとしては、安価で小型の製品が多い常時商用給電方式が向いている。最近では、サーバ向けとしてラックマウントに対応した製品や、UPS自体が冗長性を持つ製品(UPSの一部に機能障害が発生しても、冗長部分でそれをカバーするなど)などもラインアップされている。給電方式と合わせて、検討する必要があるだろう。
また、UPSの選択時には、バッテリ容量も非常に重要である。接続するサーバなどの消費電力が高いと、同じバッテリ容量のUPSに接続していても、停電時の給電時間は短くなる。事前にUPSに接続予定の機器の合計消費電力を求め、その消費電力におけるUPSの給電時間をカタログで調べておきたい。もし、給電時間がサーバのシャットダウン時間にも満たないような場合は、そのUPSでは容量不足ということになる。
さらに、UPSに内蔵されているバッテリには寿命がある。導入済みのUPSに内蔵されているバッテリの状況は、小まめに確認しておいた方がよい(ほとんどのUPSはバッテリを交換できる)。いざ停電、というときにバッテリの寿命が切れていて、充電できていなかったのでは導入している意味がないからだ。
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サーバの可用性を向上させるために、RAIDを構築したり、システムを冗長化したりすることは考えるが、日ごろの電力事情が悪くないために、UPSの整備は後回しになりがちだ。今回の電力危機をきっかけに、UPSの導入や、すでに導入済みのUPSの保守を検討してはいかがだろうか。
「System Insiderのキーワード」 |
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