特集1000BASE-Tへの移行で気になるコストと性能(前編)
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2002年9月14日に公開した「解説:ギガビット・イーサネットへの移行を準備しよう」では、1000BASE-Tへの移行で問題になるのは1000BASE-T対応のスイッチング・ハブの価格である、と述べた。記事執筆当時(2002年9月)、1000BASE-T対応スイッチンブ・ハブの価格は、一部の製品を除いて、4ポートで10万円程度、8ポートで15万円程度、16ポート以上となると機種も少なく40万円もしていた。100BASE-TX対応の16ポート・スイッチング・ハブに、1000BASE-T対応ポートを1〜2ポート持つものでも10万円前後であった。一方で、1000BASE-T対応のイーサネット・カードは1万円を切り始め、100BASE-TX対応カードとの相対的な価格差は大きいものの、絶対的な価格として十分に導入可能な範囲に入ってきていた。そこで、まずネットワークのボトルネックになりやすい、サーバとスイッチング・ハブ間およびサーバとサーバ間を1000BASE-T化し、順次1000BASE-Tへの移行を行うことを推奨した。
あれから約5カ月経ち、スイッチング・ハブの価格が大幅に安くなった。いまや4ポートや8ポートならば、3万円以下の製品がいくつものベンダから販売されている。そこで、今回はこのシナリオを再検討し、より具体的に100BASE-TXから1000BASE-Tへの移行にかかるコストと、それによって得られる性能を検証していくことにする。まず、1000BASE-T化の移行手順を再検討する。次に、100BASE-Tと1000BASE-Tの性能をさまざまなケースで比較し、1000BASE-T化のメリットと導入コストを考えていくことにしよう。
1000BASE-Tの導入に性能的なメリットはあるのか?
1000BASE-Tの必要性を考える上で、簡単なテストの結果を示しておく。評価を行ったPCの主な仕様は以下の表のとおりで、メモリ容量が多少大きめなのを除けば、現在販売されているエントリ・クラスのクライアントPCに相当する。
プロセッサ | Celeron-1.7GHz |
メモリ | 256Mbytes×2(PC2100) |
チップセット | Intel 845G |
ハードディスク | Western Digital製Protege WD200EB(容量20Gbytes) |
グラフィックス機能 | Intel 845G内蔵オンボード |
ネットワーク機能 | Intel PRO/100(100BASE-TX)Intel PRO/1000MT(1000BASE-T) |
OS | Windows 2000 Professional Service Pack 3 |
テストに用いたクライアントPCの主な仕様 |
テストでは、この仕様のPCを2台用意し、カテゴリ5のクロス・ケーブルで接続したワークグループ・ネットワークを構築した。転送に用いたファイルは、Windows 2000 Professional Service Pack 3のシステム・ディレクトリ(%SystemRoot%)の下をTMPフォルダにコピーしたもので、フォルダ数は157、ファイル数は6578ファイル、総容量は約680Mbytesとなっている。これらを共有フォルダ(TMP)から別PCのフォルダ(TMP)に対して、エクスプローラでのドラック&ドロップによってコピーし、コピー完了までの時間を計測した。そのため計測結果には、Windowsのコピー処理といった多少のオーバーヘッドも含まれている点に注意していただきたい。オンボードの100BASE-TXとPCIスロットで拡張した1000BASE-Tのそれぞれのインターフェイスでファイルの転送を試みた。また、参考のために同一ハードディスク内(TMPフォルダからTMP1フォルダ)でコピーした場合も計測している。
クライアントPC間における1000BASE-Tの性能 |
この結果を見ると分かるように、100BASE-TXと1000BASE-Tの差は、理論値の100Mbits/sと1000Mbits/sの差に比べるとかなり小さい(約22%)。実際のコピー時間で比較すると、100BASE-TXが3分、1000BASE-Tが2分22秒、ハードディスク内が2分24秒と若干差があるものの、大きなものではない。なお、1000BASE-Tに対して、ハードディスク内のコピーが遅いのは、ハードディスクならびにIDEインターフェイスが読み出しと書き込みの両方で使われることで、この部分の負荷が高くなっているためだ。今回テストに使ったハードディスクはそれほど高速ではないので、ディスクがボトルネックとなっている可能性がある。ハードディスクをより高速なものに置き換えて同じテストを実施すれば、1000BASE-Tと100BASE-TXとの差はさらに開くものと推測される。とはいえ、現状のクライアントPCの性能では、1000BASE-Tの性能が十分に発揮されず、100BASE-TXと1000BASE-Tの差は理論値に比べるとかなり小さいのは間違いない。
ただしテスト中にパフォーマンス・モニタで確認すると、100BASE-TXではネットワーク帯域をほぼ使い切っているのに対し、1000BASE-Tでは帯域に余裕があった。今回は単純なファイル転送速度だけを比較しているが、ネットワークの負荷が大きい処理を同時に実行するような用途では、1000BASE-Tのほうが有利なのは間違いない。
さらに詳細な性能評価については後編に譲るとして、次ページからは1000BASE-Tへの移行シナリオとコストについて考えてみよう。
INDEX | ||
[特集]1000BASE-Tへの移行で気になるコストと性能 | ||
1.100BASE-TXから1000BASE-Tへの移行を考える | ||
2.1000BASE-Tの実力を計測する | ||
3.1000BASE-Tへの移行のメリット | ||
「System Insiderの特集」 |
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